小金沢ライブラリー

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2016~2017年のミステリ遍歴

2021年09月19日 | 雑文
2016年
刊行前からアニメ化決定という異例のスタートを飾った青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス」が登場。マンガ化はしたもののいまだアニメ化はしていないが、続編も期待通りの面白さで続いて行く。
早坂吝は「誰も僕を裁けない」で社会派・エロ・ミステリの三身悪魔合体に成功。デビュー作の頃のエロさは据え置きでこちらもシリーズは順調に続いている。
旧作では宮部みゆき「ソロモンの偽証」のぶっちぎりの面白さに魅せられた。個人的には「模倣犯」に軍配を上げるが、歴史的傑作であることに違いはなく、通勤のお供に文庫版5冊を読んだ1ヶ月は至福の時間だった。
倉阪鬼一郎の小林幸子シリーズは昨年秋に刊行できず「桜と富士と星の迷宮」を今年刊行し閉幕となった。ミステリもその後書いていないような…。
昨年話題をさらった「その可能性はすでに考えた」の続編「聖女の毒杯」は、前作をはるかに上回る素晴らしい出来だった。やはり量産できる作風ではなく、第3作は5年経った今も出ていない。
個人的には一度手放した森博嗣「Gシリーズ」・「Xシリーズ」の読破を開始。質の低下は否めないが、なんだかんだで楽しく読めた。
最強ミステリ漫画「Q.E.D.証明終了」の加藤元浩が初のミステリ小説をリリース。正直、可もなく不可もない出来だったが、第2作は見違えるほど面白かった。まず漫画家が小説も普通に書けるのがすごいと思う。
鮎川賞に輝いた市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」がこのミス・文春・本ミスでベスト10入り。「現代の十角館の殺人」とまで呼ばれた。犯人はモロバレだったが。
また中古市場で数万円で取引されている飛鳥部勝則「堕天使拷問刑」をブックオフでゲット。噂に違わぬ怪作で家宝にした。


2017年
国内では今村昌弘「屍人荘の殺人」の年として記憶されるだろう。ミステリとアレを悪魔合体させたイロモノというだけではない、大型新人の華々しいデビューだった。
そして海外では陳浩基「13・67」の年である。海外ミステリへアンテナを張っていない自分にも超絶傑作の声が届き、比較的苦手ではない中国語圏の作品なので読んでみたら噂と寸分たがわぬ空恐ろしいほどの歴史的傑作だった。
この年に読んだ旧作では山田風太郎「妖異金瓶梅」に尽きる。噂に聞いていた以上の驚愕の作品で、いろいろ語りたくなるが何を言ってもネタバレになる。よくぞこれをネタバレを踏まずに読めたものだ。
通勤圏内の気軽に寄れる位置に図書館の出張所が出来たため、梶龍雄「龍神池の小さな死体」、飛鳥部勝則「誰のための綾織」、門前典之「屍の命題」も読めた。どれも最高だった。
井上真偽は「探偵が早すぎる」をリリース。「その可能性はすでに考えた」のような瞬殺ぶりは本家には及ばなかったが、これはこれで良かった。ただ上下巻なのに下巻の帯で「大好評シリーズの続巻」とうたった講談社は叩かれて欲しいし、これが中学生の読書感想で人気というニュースには笑った。感想文の参考にしようと思ってうちに来た中学生はざまあみろ。
綾辻行人「十角館の殺人」から30年を記念し、講談社は「7人の名探偵」を企画。新本格オリジナル・セブンというパワーワードとその人選や、オリジナル・セブンの一部の空気読めなさはアレだった。
マイナスの方のトピックでは柾木政宗「NO推理、NO探偵?」が出色。内容の壮絶さもさることながら読んだ人の多くが名前を呼ぶ気すら無くし「、?」や「NN」と様々な隠語で呼び始めたのも笑った。
マイナスといえば(マイナスといえば?)宿野かほる「ルビンの壺が割れた」も忘れてはいけない。「すごい小説ができたからキャッチコピーを書いて欲しい」という企画で、無料だから読んだがマジでもう駄目すぎてすごかった。2作目以降は話題にもなっていない炎上商法で、これを名刺代わりの10選に入れている人がいて震えた。もっとこう…あるだろう!
また蘇部健一はルビンのナントカを早々に丸パクリ……インスピレーションを得た「小説X」を企画。タイトルを付けて採用されれば5万円という生々しさに笑った。
余談だが自分は早ミスをもともと評価しておらず、記録にも含めていなかったが、「13・67」をランキングから消し去ったことで完全に見放した。
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