小金沢ライブラリー

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2006~2008年のミステリ遍歴

2021年09月15日 | 雑文
2006年
ほうぼうで大傑作という評判を聞いていた連城三紀彦「戻り川心中」に魅了され、連城作品を読み始めた。どこまでも恋愛小説でありながら本格ミステリでもあるという特異な作風に夢中になっていく。
また年間ランキングを意識したことで、新刊を中心に買い、独自のランキング予想を楽しみだした。
2004年に出版された乾くるみ「イニシエーション・ラブ」を読んだのもこの年。10年後にテレビで有田哲平に採り上げられ再ブレイクしたのも記憶に新しい。
その他、竹本健治に「所有者の1割しか読んでない(うろ覚え)」と言われた笠井潔「哲学者の密室」も読んだ。
この頃からネット人口が爆発的に増え始め、新刊の評判が手に入りやすくなったように思う。その一環で道尾秀介と米澤穂信を読んだはず。
綾辻行人は講談社ミステリーランドからまさかの館シリーズ最新作「びっくり館の殺人」をリリースしたが、ぶっちゃけると半分は黒歴史である。


2007年
正月早々にこのミス1位に輝いたがさっぱりミステリじゃない平山夢明「独白するユニバーサル横メルカトル」を読んでトラウマになった。
ネットの評判から柳広司の偉人物を買い、そのまんま東「ビートたけし殺人事件」をブックオフで調達。
スマッシュヒットは三津田信三の「厭魅の如き憑くもの」で、刀城言耶シリーズは全ミステリファン必読。
何よりも横山秀夫を読みだしたのが大きい。当時よく見ていた書評サイト(※現在は消滅)がさんざんにこき下ろしていたので出遅れたが、読んでびっくり最高の作家だった。評論家か誰かが「ここ十年で一番の発掘は横山秀夫」と京極夏彦もいるのに言っていたが、心から同意できる。
横山秀夫がこんだけ面白かったならと刑事小説にも手を出し始め、大沢在昌「新宿鮫」や佐々木譲「制服捜査」も読んだ。
この年、宝島社が「バカミスじゃない!?」を刊行し、一層バカミスが広く認知された。前からバカミスに分類されていた霞流一、鳥飼否宇も当然ながら寄稿し、実力をまざまざと見せつけた。
後押ししたのが倉阪鬼一郎で、ここから数年にわたり講談社ノベルスでバカミス新作を書き下ろす。いずれ劣らぬ狂気の沙汰なのでぜひ一読を。
また数年前から名前と高評価だけ聞いていた伝説的作品の中西智明「消失!」も講談社ノベルスから復刊された。これもすごかった。


2008年
辻真先がなぜか覆面作家の牧薩次名義で「完全恋愛」を刊行し話題に。はなから正体はバラされていて本当にあれはなんだったのか。当時は御年76歳にして最高傑作と驚かれたが、2020年にも88歳でこのミス・文春の二冠を制したのだから恐ろしい。
島田荘司御大の肝いりで「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」が発足。以降も毎年地味ながら優れた本格ミステリ作家を輩出している。
読者=犯人という変化球(というか禁じ手)のイロモノ「ウルチモ・トルッコ」でデビューした深水黎一郎が作風をガラッと変えた「芸術シリーズ」を刊行し始めた。あのデビュー作はなんだったのだろうとこちらも思わせたが、後年の作品では「ウルチモ・トルッコ」どころではない魔球をいくつも放っている。
ミステリ外では理由は忘れたがなぜか直木賞作品の桜庭一樹「私の男」を読んだのだが、これがもう(※個人的には)ゴミ中のゴミで改めて純文学は自分の人生に必要がないという思いを強くした。
いやもう本当に「直木賞という肩書を冠した、実父が幼女にク●ニするという小説」ってなんなの?
同様に筒井康隆「ロートレック荘事件」も筒井ファンの普段はミステリを読まない連中が「空前絶後」「これはミステリではない」裏表紙でも「推理小説史上初のトリック」「前人未到」「メタミステリ」と持ち上げていたが、読んでみたら「例のトリック」で引っくり返った。お前らはもっとミステリを読め。
他に泡坂妻夫「生者と死者」の未使用品をブックオフで発掘。これはページがあちこち糊で閉じられていて、そのまま読むと短編だが、切り開くと長編の一部として取り込まれてしまうという意欲作だった。今でも未使用品を持っている。
私的ベスト1の辻村深月「凍りのくじら」を読んだのもこの年か。ドラえもんファンは必読。
日本一エロいミステリの愛川晶「六月六日生まれの天使」もぜひ。
このミスはなんだかんだでミステリ史に残るだろう伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」、湊かなえ「告白」が上位に入った。
また初野晴が後の「ハルチカシリーズ」第一作「退出ゲーム」を刊行。この一冊だけでアニメ化やヒットを確信し、5年以内に絶対売れると言い続けたものである。今となってはLGBTやらなんやらで続けづらいんだろなあ…。
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