小金沢ライブラリー

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2018~2020年のミステリ遍歴

2021年09月20日 | 雑文
2018年
図書館のおかげで依井貴裕を全巻読めた。粗い点も多々あるが、半ば伝説になるのも納得の、他にない個性の光る作品ばかりだった。
月村了衛「機龍警察 暗黒市場」に打ちのめされ大ファンになった。都市伝説のように言われる「あまりの面白さで校正もついつい読んでしまった」のか誤植が山ほどあったのも印象的。
昨年の「NN」に続くメフィスト賞負の遺産の秋保水菓「コンビニなしでは生きられない」、名倉編「異セカイ系」は実に酷かった。酷かったがホームランか三振かの、あの頃のメフィスト賞が戻ってきたようでうれしかった。
旧作では長年、本棚で熟成させておいた浦賀和宏「松浦純菜シリーズ」を読み始めた。ちょうど読み終わった時に作者が急逝してしまい、一層思い出深いものとなった。
あの清涼院流水がミステリを離れ、英語講師やルイス・フロイス「日本史」の全訳をしていると知った。残念ながら続刊は出ていないようだが。
宇佐美まことに本格的にはまったのがこの年。「愚者の毒」で日本推理作家協会賞は取ったものの、ランキングには見向きもされていないが、とにかくエロくてとにかくすごいミステリを次々と放っている。


2019年
「私が殺した少女」ですっかり原尞のファンになってしまった。ハードボイルドとミステリの完璧な融合で、それに加えて驚異的な文章力でただ読むだけでも面白くて仕方ない。
周木律は「大聖堂の殺人」で堂シリーズを完結させた。ツッコミどころの山で非常に楽しく読めたが、本来の楽しみ方ではないだろう。森博嗣になれなかった理由はよくわかった。
数ヶ月前からあらすじと書影を予告され、たった一作で漫画化・映画化と必要以上に持ち上げられた今村昌弘だが、第2作「魔眼の匣の殺人」できっちり前作を超えてきた。周囲は騒がしいものの第3作はさらに2年半後と、作者は落ち着いている様子で安心して見守っていられる。
この年最大のトピックは相沢沙呼「medium」に尽きる。帯を埋め尽くす書店員サマの賛辞に、今やなぜか狙ったようにダメミスを推薦することでおなじみとなってしまった有栖川有栖の名が輝き、読む前から地雷臭がすさまじく、これだけで読む気を失ったという意見もいくつか見たほどだったが、読んでびっくり2019年を代表する傑作だった。
国民的作家への道を着実に歩んでいる米澤穂信は11年ぶりの小市民シリーズ「巴里マカロンの謎」を刊行。ミステリとしては簡単すぎるのにあの小鳩くんや小山内さんが一切真相に気づかないという不自然さで今ひとつだったが、シリーズ再開自体がうれしい。


2020年
浦賀和宏が急逝した。年齢が近いこともありひいきしていたが、ちょうど松浦純菜リーズを読み終えたタイミングで亡くなってしまうとは。本名がシリーズ主人公と同じだったり、「究極の純愛小説を、君に」が作者死去で完成するような内容だったりと驚かされた。近年も若い頃と同じ尖った作品を出し続け、色々な構想もあったそうで残念でならない。
昨年刊行の澤村伊智「予言の島」が個人的にスマッシュヒット。ホラー作家ならではの発想で心底驚かされた。
綾辻行人は「Another2001」をようやく上梓。ここ十年で一番推理が冴えて、真相を完璧に見抜いてしまい十全に楽しめなかった。
旧作では若竹七海「葉村晶シリーズ」を一気に読破。今さら読んでおいて恐縮だが全ミステリファン必読のシリーズである。
またコロナ禍により(?)前年11月~本年10月だったこのミス期間が1ヶ月前倒しとなった。突然の変更で話が違うと思った出版社も多いだろう。この影響は早くも翌2021年に現れ、例年より1ヶ月早い7~8月に話題作が集中することとなる。
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