~あらすじ~
鼻の無い糞尿を食べる怪人に襲われた――肥溜めの底から救出された教師は、怪異譚を残し墜落死した。
塀の中に隔絶されたセカンドタウンで連続する失踪事件。
失踪した友人の残した奇妙な小説。外界から捜査に訪れた探偵の推理。そして明かされる世界の有り様とは?
~感想~
「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の優秀作を得た作者の第二作。
前作「キョウダイ」は韓流ドラマ・地獄篇といった鬼畜の所業だったが、今作は藤子・F・不二雄のSF・地獄篇といった鬼畜の所業。
「藤子不二雄の黒いほう」と聞いてAではなくFのほうを思いつく向きなら、今作を読んでF先生のいくつかのSF短編が浮かぶことだろう。これが漫画ならF先生の軽いタッチに救われるが、読者に想像を委ねられる小説となると、なんなら本編よりも熱の入っている作中作で描かれる、とある有名な都市伝説や、近未来の日本を舞台にした世界観、失踪事件の裏に潜む壮大かつ黒い真相と、かなりグロい描写が多いので苦手な方は取り扱い注意。
事件があり探偵が現れ謎が解かれトリックも仕掛けられるが、ミステリというよりも帯に書かれた通りの「R-18小説」と呼んだほうが据わりは良い。
最近のメフィスト賞よりもよほどメフィスト賞らしい、ぶっ飛んだ作品である。次回は何を書いてくれるのだろうか。
13.8.19
評価:★★☆ 5
鼻の無い糞尿を食べる怪人に襲われた――肥溜めの底から救出された教師は、怪異譚を残し墜落死した。
塀の中に隔絶されたセカンドタウンで連続する失踪事件。
失踪した友人の残した奇妙な小説。外界から捜査に訪れた探偵の推理。そして明かされる世界の有り様とは?
~感想~
「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の優秀作を得た作者の第二作。
前作「キョウダイ」は韓流ドラマ・地獄篇といった鬼畜の所業だったが、今作は藤子・F・不二雄のSF・地獄篇といった鬼畜の所業。
「藤子不二雄の黒いほう」と聞いてAではなくFのほうを思いつく向きなら、今作を読んでF先生のいくつかのSF短編が浮かぶことだろう。これが漫画ならF先生の軽いタッチに救われるが、読者に想像を委ねられる小説となると、なんなら本編よりも熱の入っている作中作で描かれる、とある有名な都市伝説や、近未来の日本を舞台にした世界観、失踪事件の裏に潜む壮大かつ黒い真相と、かなりグロい描写が多いので苦手な方は取り扱い注意。
事件があり探偵が現れ謎が解かれトリックも仕掛けられるが、ミステリというよりも帯に書かれた通りの「R-18小説」と呼んだほうが据わりは良い。
最近のメフィスト賞よりもよほどメフィスト賞らしい、ぶっ飛んだ作品である。次回は何を書いてくれるのだろうか。
13.8.19
評価:★★☆ 5
ミステリ感想
「セカンドタウン」嶋戸悠祐
「不可能楽園<蒼色館>」倉阪鬼一郎
「敗北への凱旋」連城三紀彦
「犯罪ホロスコープⅡ」法月綸太郎
「影踏み」横山秀夫
「謎解きはディナーのあとで2」東川篤哉
「あかんべえ」宮部みゆき
「自来也小町」泡坂妻夫
「凧を見る武士」〃
「朱房の鷹」〃
「びいどろの筆」〃
「からくり富」〃
「飛奴」〃
「鳥居の赤兵衛」〃
マンガ感想
「Q.E.D.証明終了」加藤元浩 25~45
「Q.E.D.証明終了」加藤元浩 1~24をジャックハマーから引っ越し
「C.M.B.森羅博物館の事件目録」加藤元浩 1~23
ゲーム感想・連載
「エ●●●●●●●2」
「龍●●●ダ●●●●」
「セカンドタウン」嶋戸悠祐
「不可能楽園<蒼色館>」倉阪鬼一郎
「敗北への凱旋」連城三紀彦
「犯罪ホロスコープⅡ」法月綸太郎
「影踏み」横山秀夫
「謎解きはディナーのあとで2」東川篤哉
「あかんべえ」宮部みゆき
「自来也小町」泡坂妻夫
「凧を見る武士」〃
「朱房の鷹」〃
「びいどろの筆」〃
「からくり富」〃
「飛奴」〃
「鳥居の赤兵衛」〃
マンガ感想
「Q.E.D.証明終了」加藤元浩 25~45
「Q.E.D.証明終了」加藤元浩 1~24をジャックハマーから引っ越し
「C.M.B.森羅博物館の事件目録」加藤元浩 1~23
ゲーム感想・連載
「エ●●●●●●●2」
「龍●●●ダ●●●●」
~あらすじ~
29年、看守を務め上げた男は定年退職を迎えてもなお、ある事件を追っていた。彼の「看守眼」が見据える真相とは?……看守眼
自伝のゴーストライターを手掛ける三人のもとに届いた大口の依頼。二人が失格し残る一人に依頼者は「私は恋人を殺した」と告白し……自伝
家庭裁判所の調停委員を務める私。離婚の調停に現れた女は、かつて娘をいじめていたと思われる少女とその母親だった……口癖
県警ホームページに午前五時に侵入したクラッカー。その正体と意図は?……午前五時の侵入者
地方新聞の編集が見逃した2つのミス。小さな瑕疵だったはずのそれは一つの殺人事件へとつながる……静かな家
県知事から突然、冷たい態度を取られた秘書は戸惑う。知事の態度を変えたのは一月前のある男の自殺がきっかけなのか……秘書課の男
~感想~
事件とも呼べないような些細な出来事が、裏で大きな事件・事実へとつながっていく過程がまず見事。
それも隠された事実は、作品によっては並の本格ミステリも及ばないような、飛躍しすぎだろと思うくらいとんでもない方向に吹っ飛んでいくのが面白い。
またこれだけの短い分量に込められた物語の厚み、人物造形にはいつもながら感心するばかり。
一編上げるならやはり表題作の「看守眼」で、余裕で長編にも昇華できるような魅力的な人物・題材・トリック・真相がずらりと並ぶ様は圧巻。いっそのことこの元看守を主人公にシリーズ化してくれてもいいのにと思うくらいである。
13.8.15
評価:★★★☆ 7
29年、看守を務め上げた男は定年退職を迎えてもなお、ある事件を追っていた。彼の「看守眼」が見据える真相とは?……看守眼
自伝のゴーストライターを手掛ける三人のもとに届いた大口の依頼。二人が失格し残る一人に依頼者は「私は恋人を殺した」と告白し……自伝
家庭裁判所の調停委員を務める私。離婚の調停に現れた女は、かつて娘をいじめていたと思われる少女とその母親だった……口癖
県警ホームページに午前五時に侵入したクラッカー。その正体と意図は?……午前五時の侵入者
地方新聞の編集が見逃した2つのミス。小さな瑕疵だったはずのそれは一つの殺人事件へとつながる……静かな家
県知事から突然、冷たい態度を取られた秘書は戸惑う。知事の態度を変えたのは一月前のある男の自殺がきっかけなのか……秘書課の男
~感想~
事件とも呼べないような些細な出来事が、裏で大きな事件・事実へとつながっていく過程がまず見事。
それも隠された事実は、作品によっては並の本格ミステリも及ばないような、飛躍しすぎだろと思うくらいとんでもない方向に吹っ飛んでいくのが面白い。
またこれだけの短い分量に込められた物語の厚み、人物造形にはいつもながら感心するばかり。
一編上げるならやはり表題作の「看守眼」で、余裕で長編にも昇華できるような魅力的な人物・題材・トリック・真相がずらりと並ぶ様は圧巻。いっそのことこの元看守を主人公にシリーズ化してくれてもいいのにと思うくらいである。
13.8.15
評価:★★★☆ 7
~あらすじ~
湖畔に伝説の建築家が建てた、鍵形の館「双孔堂」。
館に放浪の数学者・十和田只人を訪ねた、警察庁キャリアの宮司司は、同時発生した二つの密室殺人事件に遭遇する。
事件の犯人として逮捕されたのは……十和田只人!?
~感想~
本格ミステリのありとあらゆるテンプレをぶち込んだデビュー作に続く第二弾。とにかく古い! だがそれがいい。
前作はトリック面で歌野晶午マジリスペクトだったが、今作はストーリー面で「笑わない数学者が君が決めるんだ(ニッコリした後に真賀田四季が不定!不定!不定!」と叫ぶ森博嗣マジリスペクト仕様。
そういえば森センセは前作に「懐かしく思い出した。本格ミステリィの潔さを」と推薦文を書いていたが、こうも潔くマジリスペクトされてどんな顔してるんだろか。
トリックに関しては古色蒼然たる大仕掛けであるものの「え?これだけ?」というあっさりした使い方。綾辻行人の館シリーズに例えるなら時計館のメイントリックを使わずに抜け道だけ使いましたみたいな。二階堂黎人なら同じトリックで四冊書けるに違いないのに。
また今作もテンプレというか、(以下ネタバレのため文字反転→)終わってみればみんな家族とか、珍しい難病を犯人ではないという理由付けのためだけに出したりとか、犯行の露見した犯人が毒を――と、とにかく展開が古く潔い。
だが前作でも見せていたようにトリックやストーリー展開をまとめる手腕は実にそつなく、難解すぎて読む気すら起こらない(また読み飛ばしてもなんら支障のない)十和田探偵の数学トークもきちんと読めば、密接に物語と関わっており、この作者の力量の高さを感じさせる。(一方で加藤元浩のマンガ「Q.E.D.証明終了」がいかにわかりやすく数学を物語に溶け込ませ、ミステリ要素と連関させているかもよくわかったのだが)
数学トーク以外にオリジナリティは乏しく、また「Q.E.D.証明終了」と比べては数学トークになんら魅力を感じないのだが、80年代の新本格を書ける現代作家として、またとない才能であるのは確か。次回は誰をマジリスペクトするのかにも注目し、今後も追いかけたい。
13.8.14
評価:★★★ 6
湖畔に伝説の建築家が建てた、鍵形の館「双孔堂」。
館に放浪の数学者・十和田只人を訪ねた、警察庁キャリアの宮司司は、同時発生した二つの密室殺人事件に遭遇する。
事件の犯人として逮捕されたのは……十和田只人!?
~感想~
本格ミステリのありとあらゆるテンプレをぶち込んだデビュー作に続く第二弾。とにかく古い! だがそれがいい。
前作はトリック面で歌野晶午マジリスペクトだったが、今作はストーリー面で「笑わない数学者が君が決めるんだ(ニッコリした後に真賀田四季が不定!不定!不定!」と叫ぶ森博嗣マジリスペクト仕様。
そういえば森センセは前作に「懐かしく思い出した。本格ミステリィの潔さを」と推薦文を書いていたが、こうも潔くマジリスペクトされてどんな顔してるんだろか。
トリックに関しては古色蒼然たる大仕掛けであるものの「え?これだけ?」というあっさりした使い方。綾辻行人の館シリーズに例えるなら時計館のメイントリックを使わずに抜け道だけ使いましたみたいな。二階堂黎人なら同じトリックで四冊書けるに違いないのに。
また今作もテンプレというか、(以下ネタバレのため文字反転→)終わってみればみんな家族とか、珍しい難病を犯人ではないという理由付けのためだけに出したりとか、犯行の露見した犯人が毒を――と、とにかく展開が古く潔い。
だが前作でも見せていたようにトリックやストーリー展開をまとめる手腕は実にそつなく、難解すぎて読む気すら起こらない(また読み飛ばしてもなんら支障のない)十和田探偵の数学トークもきちんと読めば、密接に物語と関わっており、この作者の力量の高さを感じさせる。(一方で加藤元浩のマンガ「Q.E.D.証明終了」がいかにわかりやすく数学を物語に溶け込ませ、ミステリ要素と連関させているかもよくわかったのだが)
数学トーク以外にオリジナリティは乏しく、また「Q.E.D.証明終了」と比べては数学トークになんら魅力を感じないのだが、80年代の新本格を書ける現代作家として、またとない才能であるのは確か。次回は誰をマジリスペクトするのかにも注目し、今後も追いかけたい。
13.8.14
評価:★★★ 6
~あらすじ~
市民マラソン大会に闖入したダチョウを捕獲して以来、鴇先生の周囲にちらつく怪しい影。
心中未遂で事件は幕を閉じたかに見えたが、なおも園内には不穏な空気が立ち込める。
独自に捜査を進める飼育員の桃本らは、やがて想像を超えた大事件にたどり着く…?
~感想~
楓ヶ丘動物園シリーズにまさかの続編。トリックはとりあえず脇に置いといて、非日常的な動物園の日常と、驚異的にキャラ立ちした職員たちのやりとりが妙に楽しい。
ブレイク間近(?)の伊神さんシリーズ(仮)で鍛え上げたユーモアセンスが全開で、主人公(?)の桃本も葉山君に負けず劣らずのツッコミとモテモテぶりに忙しい。
トリックに目を戻してしまうと謎のこだわりを持つ密室トリックはあいかわらず小粒。事件の裏に潜む真相も、意外に巨悪ではあるがそれだけに終わったか。
しかしほのぼのした日常系ミステリな作風に思われがちだがこの作者、事件の様相や犯人像は結構エグく、かなりハイレベルな極悪人やサイコな人が登場するのだが、今回も御多分にもれずなかなかの物で、このあたりのギャップは面白い。
とにかくシリーズ化してくれたのはうれしい限り。今後も追いかけて行きたい。
13.8
評価:★★★ 6
市民マラソン大会に闖入したダチョウを捕獲して以来、鴇先生の周囲にちらつく怪しい影。
心中未遂で事件は幕を閉じたかに見えたが、なおも園内には不穏な空気が立ち込める。
独自に捜査を進める飼育員の桃本らは、やがて想像を超えた大事件にたどり着く…?
~感想~
楓ヶ丘動物園シリーズにまさかの続編。トリックはとりあえず脇に置いといて、非日常的な動物園の日常と、驚異的にキャラ立ちした職員たちのやりとりが妙に楽しい。
ブレイク間近(?)の伊神さんシリーズ(仮)で鍛え上げたユーモアセンスが全開で、主人公(?)の桃本も葉山君に負けず劣らずのツッコミとモテモテぶりに忙しい。
トリックに目を戻してしまうと謎のこだわりを持つ密室トリックはあいかわらず小粒。事件の裏に潜む真相も、意外に巨悪ではあるがそれだけに終わったか。
しかしほのぼのした日常系ミステリな作風に思われがちだがこの作者、事件の様相や犯人像は結構エグく、かなりハイレベルな極悪人やサイコな人が登場するのだが、今回も御多分にもれずなかなかの物で、このあたりのギャップは面白い。
とにかくシリーズ化してくれたのはうれしい限り。今後も追いかけて行きたい。
13.8
評価:★★★ 6