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小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『午後からはワニ日和』似鳥鶏

2013年08月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
楓ヶ丘動物園に現れた「怪盗ソロモン」が盗んだのは、金銭的な価値の薄いイリエワニ。
なぜ怪盗は危険を犯して無価値なワニを盗んだのか? その後も謎の動物盗難事件が相次ぎ……。

~感想~
個人的に大プッシュしている伊神さんシリーズ(仮)でおなじみ作者の、初のシリーズ外作品。
某家の殺人なトリックは置いといて、葉山君β、アイドル、変人、無双獣医と取り揃えた個性的な面々の会話や、動物園の日常という特異な舞台設定がとにかく面白い。
捨てトリックの弱さが難点の作者だが、いっそメイントリックも捨てて物語の展開と会話の楽しさだけに特化した、末期の森博嗣みたいなファイトスタイルが成功したか。こういう開き直り方も悪くないし、作品の幅を広げるためにもいいことだろう。
またトリックは置いといて(2回目)動機の方は、動物園という舞台の特性を十二分に活かしたものであることは特筆しておく。
なにはともあれ創元推理文庫という一般層にはなじみの薄いレーベルを離れたことで、一般層に似鳥鶏の名が周知されれば言うこと無しなのだが。


12.
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『幽女の如き怨むもの』三津田信三

2013年08月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
戦前、戦中、戦後にわたる3軒の遊郭で起きた3人の花魁が絡む不可解な連続身投げ事件。
緋桜という名を持つ花魁がいるとき必ず、3階から3人が転落する。
誰もいないはずの階段から聞こえる足音。窓から逆さまに部屋をのぞき込むのは「幽女」?

~感想~
恐るべきクオリティで怪異とミステリの融合に成功し続けている刀城言耶シリーズの長編第6弾。
前作「水魑の如き沈むもの」では「結界」なるものが平然と登場したり、大半の怪異が怪異のまま放置されたりと方向性に不安な転換が見られたが、今回もシリーズ中でも屈指のとうてい現実的な説明のつかないような怪異が起こる。
しかし終わってみれば本作は……と結末に触れるわけにも行かない。まあひと安心はした。

だが惜しむらくは中盤で、あまりにあからさまな伏線を置いてしまい、そこからするすると謎が解け真相までたどり着けてしまうのが非常に残念。一歩間違えばネタバレにつながる綱渡りもミステリの醍醐味の一つではあるが、あれは大半の読者が気づいてしまうのではなかろうか。
「陰摩羅鬼の瑕」のようなネタバレ前提の真相でもなく、優れたミステリの結末を途中で見抜いてしまうのは不幸でしかない。もったいないことをしてしまった。


12.
評価:★★★★ 8
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先週のNXT #179

2013年08月09日 | 今週のNXT
NXT女子王座決定トーナメント決勝
ペイジ ○-× エマ
(ペイジ・ターナー)

決勝は意外にもベビー同士の一戦となった。
タミーナ・スヌーカ、アリシア・フォックスとごつい相手を破ってきたペイジと、アクサナ、サマー・レイと対戦相手には恵まれた感のあるエマ。これも英国人とオーストラリア人の組み合わせで、NXTは国際色が豊かだ。
これまでの戦歴からするとペイジのほうが有利だが、試合前の不思議な踊りでMPを吸い取られたせいでペイジの動きは今ひとつ。魔女っぽいからなペイジ。
長尺の試合ながら人気のある両者だけあって観客からも「これぞ名勝負」とチャントが飛んだが、そこまでの試合ではない。抱えていた方の脚でロープブレイクされちゃうし。
決着はあいかわらず唐突感のあるペイジ・ターナーであっさり決まった。頭突きや多少の反則も取り入れた「アンチ・ディーバ」を名乗るペイジのファイトスタイルは面白いが、先週デビューしたシャーロットが育つまでのつなぎだろうか。
あと上層部もこんなに盛り上がると思ってなかったのかもしれないがメイン戦でやるべきだった。


タイラー・ブリーズ ○-× アンジェロ・ドーキンス
(フライングニールキック)

以前はジョバー扱いだったマイク・ダルトンがナルシストモデルに転身し再デビュー。WWEではこの場合ダルトンという人間はいなかったことになります。
試合そっちのけでスマホで自分を撮影するブリーズだが、足首のヒラヒラがそれモップじゃね?と思うほど多すぎてつまずかないか心配だ。
フライングニールキック一発で勝ったので試合に関して特に言うことはないが、イタリア・ミラノ在住なら次回は透明犬でも連れてきてほしいところだ。


コナー・オブライエン&リック・ビクター ○-× エイダン・イングリッシュ&ミッキー・キーガン
(オブライエンの水面蹴り+ビクターのドライビングエルボー)

薬物問題で相方を解雇されたオブライエンが、ビクターとともに「アセンション」を再結成。
ビクターはずっとジョバー役だったがある日突然、当時のNXT王者だったセス・ロリンズに挑戦し、これからプッシュが始まるのかと思いきやその一戦きりで姿を消した謎の男。そういう意味では怪奇ユニットのアセンションにぴったりか。
試合はジョバーでおなじみのイングリッシュをWパワーボムで叩きつけ、オブライエンの水面蹴りとビクターのドライビングエルボーで挟み撃ちにするツープラトンで秒殺。
どっちがフォールしてもいいのにビクターに華を持たせるオブライエンはああ見えてマジ良い奴。


シェイマス ○-× ルーク・ハーパー
(ホワイトノイズ→ブローグキック)

シェイマスはWWEの頂点を3度極め、ケルティック・ウォリアーの異名をとるアイルランド人。
一軍昇格からわずか半年、「すごく白い」以外に特徴のなかった頃にWWE王座を奪取し「上層部はシェイマスに何か弱みを握られているのか」と衆目を驚かせたが、かつてのエッジのように地位が人を作り、今では押しも押されもせぬ強キャラとして君臨している。
試合はハーパー程度では普通ならシェイマスの相手にならないところだが、ローワンが犠牲になった隙に一撃を喰らわせ、その後も要所要所でローワンが手を出して互角以上に。
というかハーパーが普通にうまい。シングル戦でも十分やれることを証明した。
最後はハーパーがフィニッシャーのローリングクローズラインを命中させ、間髪入れずカバーするもなぜかあっさり返され、ホワイトノイズ(シュバイン)からのブローグキック(ケンカキック)でシェイマスが逆転勝利。確かにハーパーとシェイマスの間には、わざと必殺技を受けてやっても問題ないくらいのレベル差はあるが。
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先々週のNXT #178

2013年08月08日 | 今週のNXT
NXT王座挑戦権争奪3WAY戦
○ レオ・クルーガー アントニオ・セザーロ × サミ・ゼイン
(セザーロのニュートラライザー→横取り)

シリア生まれのカナダ育ちでメキシコ人として長年活動していたゼインは、どちらかというと逆イケメンなのに歓声が飛ぶのだからもうファンの心をつかんでいる。
クルーガーは南アフリカ人、セザーロはスイス人と、一軍でも珍しいほど国際色豊かな一戦である。
それにしてもセザーロの怪力にはブロック・レスナー以来のインパクトを個人的には受けている。確かにサガットばりの優れた体格だが、その怪力の見せ方が上手い。
試合はセザーロがタイガーアッパーカットからのニュートラライザーでゼインを仕留めた直後に、クルーガーがセザーロを場外へ追い出しごっちゃん勝利。ここ数週間の流れからの予想通り、挑戦権を手にした。


ボー・ダラス ○-× スコット・ドーソン
(ベリー・トゥ・ベリー)

打点が低いと毎週のように言っているダラスのドロップキックは今日はタイミングも悪く、ドーソンの受け身が間に合っていない。どうしてこんなになるまで放っておいたんだ。
フェイスの王者が圧倒的に攻めているのに全く盛り上がらない客席。ブーイングをしないだけ今日の観客はやさしい。
最後は先々週から丸め込み技だと思うようにしたベリー・トゥ・ベリーで決着。まるでゴールドバーグのような一方的な試合展開で、雑さを隠したような。
試合後にはもちろんクルーガーが乱入しダラスを撃墜。WWEでは嫌われ者のベビーがヒールに奇襲された時におなじみの「サンキュー」コールが飛んだ。


シャーロット ○-× ベイリー
(前転ネックブリーカー)

説明不要のレジェンド、リック・フレアーの娘であるシャーロットのデビュー戦。
セコンドにはフレアーがつき、入場前にはスピーチまでする特別待遇。先日に同じくレスラーだった弟を亡くしたばかりで、彼の分もがんばって欲しいものだ。
っていうかでかいぞこの女。器械体操歴があるそうで柔軟性と体のバネは特筆もの。偉大なパパの前ではベイリーもやりづらく、シャーロットの完勝。
試合後にパパと並んで披露したフレアーウォークはまだまだ未熟だったが、技にフレアームーブはほとんど取り入れていなかったし無理はないか。
体格は良く華もあり、短い試合時間だったが動きも申し分ない。これまでNXTに出てきたディーバの中では出色の感が。


NXTタッグ王座戦
エリック・ローワン&ルーク・ハーパー ×-○ エイドリアン・ネヴィル&コリー・グレイヴス
(コークスクリュー・シューティングスタープレス)防衛失敗

試合前に元世界王者のシェイマスを襲撃し景気付けしたタッグ王者組だが、解説のリーガル卿からは殺意の、客席からは「一軍に上がったしそろそろベルト落とすんじゃね?」と期待のこもった視線を浴びせられる。
大男のハーパーの放つドロップキックとダラスのドロップキックが同じ打点と速度に見えるのはきっと気のせいじゃない。
最後は空中技の連発からフィニッシュを狙ったネヴィルをワイアットがコーナーから落とすも、シェイマスが報復に出てきてワイアットを排除。
グレイヴスが乱入しチョップブロックでローワンを倒し、ネヴィルが蹴りを付けた。ここまで乱入でベルトを守ってきた王者組が、逆に乱入でベルトを奪われる皮肉な結末。
シェイマスとの抗争は一軍で行うのだろう。貴重な動ける巨漢タッグで、連携も磨かれてきた王者組をもう少し二軍で見たかった気もする。
新王者となったネヴィルは早くも二度目のタッグ王座獲得。やっぱりPACはすごかった。グレイヴスはこれまでもNXT王座などに絡んできたがこれが初のベルト奪取。
今のところ全く連携のできていないタッグだが、この先連携技が生まれていったら面白くなるだろう。
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先々々週のNXT #177

2013年08月07日 | 今週のNXT
NXT女子王座決定トーナメント準決勝
エマ ○-× サマー・レイ
(ロールアップ)

入場時にエマは不思議な踊りでサマーのMPを奪うが、どちらかというと戦士系でMPを必要としないサマーには通じず、一方的に攻められる。
一軍ではマネージャー(というかダンサー)のサマーだが技の一つ一つはレスラーメインのエマより上手いような。
最後は丸め込みの応酬から気づいたら3カウントを奪い、エマが番狂わせの勝利。サマーはまだ二軍にいれば戴冠もありえたか。


・シャーロット、デビューへ
伝説的レスラーのリック・フレアーの娘、シャーロットが次週デビューへ。
笑うと怖いほどパパ似だが、どの程度パパのムーブを取り入れているか楽しみだ。


サミ・ゼイン ×-○ レオ・クルーガー
(GC3)

先週のメイン戦後に乱闘した両者が対決。空中技のゼインと関節技のクルーガーという対照的なスタイルの二人だが、ゼインの誰にでも合わせられる器用さが光る。日本で使っていた技はほとんど封印しているようだが、それでも多彩だ。
だがここではNXT王座挑戦者候補に名乗りを上げたクルーガーに分があり、鉄柱へゼインの左肩を叩きつけるとフジワラアームバー(脇固め。アメリカでは藤原喜明にちなみこう呼ばれている)、スーパープレックス(雪崩式ブレーンバスター)、腕極めDDTとつなぎGC3(アームロック)で決めた。


メイソン・ライアン ×-○ エンツォ・アモーレ&コリン・キャサディ
(アモーレの足払い)

先週に二人あわせて1分で仕留められたアモーレとキャサディがハンディ戦でライアンに挑む。
さすがのライアンも二人がかりは厳しく、キャサディを抱え上げたところでアモーレに背後から脚を払われ、そのまま抑えこまれた。
てっきりライアンが普通に勝つと思ったのだが、このデコボコタッグをもう少しプッシュする気があるのだろうか。


ウィリアム・リーガル&エイドリアン・ネヴィル&コリー・グレイヴス ×-○ ブレイ・ワイアット&エリック・ローワン&ルーク・ハーパー
(シスター・アビゲイル)

NXTでは解説も務めるリーガル卿はWWE在籍13年を誇る英国の誇り。コメディキャラから冷酷な悪党まで幅広くこなし、単純な打撃とねちっこいキャッチレスリングに小汚い反則をも融合させたリーガル・スタイルとでも呼ぶべき独特のファイトは目の肥えたファンもうならせる。
近年はセミリタイアし月に一度ほどしか試合はしないが、誰からも尊敬を集める偉大なレスラーである。もう何年も変わっていないヒール丸出しの入場曲はどうかと思うが。
晴れて一軍昇格を果たしたワイアット・ファミリーはさすがに息の合った連携を見せる。長時間つかまっていたネヴィルがリーガルにつなぎ、リーガルは猛攻で一気にハーパーを仕留めるもローワンがカット。ネヴィルがグレイヴスもろともローワンを空中技で葬ったせいで数的不利に。悠々と交代したワイアットがあっさりリーガルを倒してしまった。
ところでグレイヴスは1分も戦っていないような。
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先々々々週のNXT #176

2013年08月06日 | 今週のNXT
NXT女子王座決定トーナメント準決勝
アリシア・フォックス ×-○ ペイジ
(ペイジ・ターナー)

未勝利のベイリーを順当に倒したアリシアと、タミーナ・スヌーカに一方的に攻められながら丸め込んだペイジによる準決勝。
ここでもWWEで黒人初の女子王者となったアリシアが新人のペイジを圧倒。しかしペイジがラフファイトで強引に流れを引き戻すと、必殺技であっさり決着。
タミーナ相手にはなにもできなかったが、アリシアには意外と普通に勝ってしまった。


コナー・オブライエン ○-× アンディ・ベイカー
(レッグドロップ)

新相棒のリック・ビクターを伴い登場したヒールのオブライエンに浴びせられる、ボー・ダラス以上の歓声に吹いた。ヒール以下のベビーっていったい。
英国出身のベイカーはこれがデビュー戦。もちろんスカッシュマッチで、フラップジャックからのレッグドロップで1分足らずの勝利。
オブライエンの首投げヘッドロックをローリングクレイドルのように連発する技もきつそうだった。


エグザビア・ウッズ ○-× スコット・ドーソン
(ロスト・イン・ウッズ)

インテリ陽気黒人というハリウッド映画なら天才ハッカー役でもやりそうなウッズと、ギャレット・ディランとのタッグ結成以来、初となるシングル戦に臨むドーソンの一戦。
ドーソンの反則技に苦戦しつつも、近日復帰するRVDを思わせる無駄な動き満載の技でウッズが逆転勝利。
だが試合後のワイアット・ファミリーのプロモで、エリック・ローワンがなんの脈絡もなくかぶっている羊マスクに全てを持っていかれた感が。


メイソン・ライアン ○-× エンツォ・アモーレ
(パンチ)

容姿その他を威勢よくファンダンゴからパクっているアモーレ(登場時に観客も一瞬勘違いしていたような)がコリン・キャサディを連れて参戦も、ゴングと同時にパンチ一発で沈んだ。


メイソン・ライアン ○-× コリン・キャサディ
(コブラクラッチ・スラム)

続けてキャサディとの連戦。アモーレに「ビッグ・キャス」と呼ばれる恵まれた体格も1分前後で沈められる。お笑いタッグとして今後も活動するのだろうか。


NXT王座戦
ボー・ダラス ○-× アントニオ・セザーロ
(ベリー・トゥ・ベリー)防衛成功

嫌われ者の地位を確立したダラスが相手では、自分勝手にアメリカ愛を叫ぶスイス人ヒールのセザーロにすら声援が飛んでしまう。
出てきただけで「引っ込めボー」。ベルトを掲げただけで大ブーイング。解説のリーガル卿に捧げるようなねちっこいキャッチレスリングで攻めるセザーロに、今日もダラスの打点の低さに定評のあるドロップキックが炸裂。今日は意外と高かったが、いつもの高さだと長身のセザーロならみぞおちに入るところだった。
セザーロはとにかく相手を離さず、渋い絞め技と荒い打撃で攻める。あれ絶対どっちも痛いぞ。
雪崩式サイドスープレックス、コーナーからのダイビングニードロップと決め技級の一撃を喰らいながらもフォールを許さないダラスは、シナから頑丈さも受け継いでるのか。
ダラスはとにかく技が雑で、カート・アングルばりに放った雪崩式ベリー・トゥ・ベリーはセザーロを左肩から落としていた。下手すれば腕が折れている。
決着はあいかわらず説得力ゼロのベリー・トゥ・ベリー崩れだったが、試合後に敗れたセザーロが元気にダラスを攻撃していたところから見て、実は威力のない丸め込み技なのかもしれない。
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第七回60分大喜利のお知らせ

2013年08月05日 | お笑い
久々に60分大喜利を開催いたします。

第七回60分大喜利会場

8月16日(金)23時開始です。
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非ミステリ感想-『キアズマ』近藤史恵

2013年08月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
奇妙な縁から一年限定で大学の自転車部に所属することになった正樹。
初心者ながら柔道経験者で体力のある彼はたちまち頭角を表す。
中学時代の出来事から生じた死ぬ覚悟も、誰かを傷つける恐怖も呑み込み、自分と向き合うために正樹は走る。

~感想~
作者の代表作「サクリファイス」から続く自転車ロードレースの世界を描いた物語。
今回はシリーズを離れ大学の自転車部が舞台。いちおうミステリの範疇にあった「サクリファイス」から巻を重ねるごとにミステリ味は薄まっていったが、本作は完全無欠の一般小説となった。
盛り上がるのは中盤までで以降は起伏の乏しい展開、ほとんど打ち切り漫画同然の投げっぱなしの結末、あまり奏功していないタイトルと欠点はいくつも目に付くが、やはり自転車ロードレースという題材自体が珍しくも面白く、読み通せるだけの魅力はある。
だが短編は無理としても、中編なら余裕で描ききれる程度の内容の薄さで、物足りなさを感じるのも確かなところ。
「俺達の戦いはまだ始まったばかり」で「僕はここにいてもいいんだ」な結末もあんまりで、せめて着地くらいは綺麗に決めて欲しかった。
まあ次回作も買うけども。


13.8.1
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『404 Not Found』法条遙

2013年08月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
死ぬべきだ。いや、死ぬしかない。放課後、俺はビルの屋上から身を躍らせた。眼前に迫る冷たいアスファルト。意識が遠のく。
だが、目が覚めると自室のベッドの上。時間は今朝。時間が巻き戻った!?
繰り返されるリセットの謎に苦悩し、ついに俺は知る。世界の向こう側にある、峻烈な真実を。

~感想~
コレジャナイロボ参号機。
破格のデビュー作「バイロケーション」以降、いわゆるSFミステリの系譜に連なる作品を出しているが、読後感は3作続けてコレジャナイ感が激しい。
ネタバレを避けるため明言できないのがもどかしいが、こういった仕掛けならばいっそのこと最初から仕掛けを明らかにしていたほうが面白い作品となっただろう。その場合ミステリからはかけ離れてしまうが。
しかし一言で表現できるような仕掛けでありながら、中二病気味というかオカリン気味(でも賢い)の主人公がのたまう科学用語さながらに話が入り組んでしまい、無駄に煩雑。
「バイロケーション」もややこしい設定ではあるが、その中でギリギリの綱渡りを続けていた妙味があった。しかし今作は単純な設定にややこしい説明を費やし、それでいて膝を打たせるような大仕掛けも綱渡りも無かったのが残念だ。
だが角川ホラー文庫、早川書房、講談社ノベルスと次々レーベルを変えながら、それぞれのイメージに合った特色を出す器用さは持ち合わせているので、一発屋に終わらず、第二の西澤保彦(前期)になれる力はあると信じたい。下品さは結構近づいてきたぞ。


13.7.9
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『千年ジュリエット』初野晴

2013年08月02日 | ミステリ感想
~あらすじと感想~
いまだに名称がしっくりこない「ハルチカシリーズ」第4弾。
普門館を目指す戦いを終え、しばしの日常に戻った面々。今回は吹奏楽部内のメンバーはあまり描かれないが、文化祭を軸にこれまで登場した他部の脇役や、さらに強烈な個性を持った新キャラたちが活躍する。
各編に簡単に触れると、

「エデンの谷」……まず新キャラの山辺真琴が個性的すぎる。要するにスナフキンだけど。見えていた構図を反転させる手管は、何の気なしにやってのけているものの卓抜した腕前である。

「失踪ヘビーロッカー」……トラブルに巻き込まれたタクシー運転手と、失踪(?)したロッカーを待つ人々の視点を交互に描き、何が起きているのかわからないまま興味を引き、最後に二つの視点が交叉するや鮮やかに謎が解ける。これももはや熟練の業。

「決闘戯曲」……小ネタというか小咄というか、短編すら支えきれないような真相だが、キャラ立ちしすぎるほどキャラの立った演劇部の面々が再登場し、期待通りの大暴れ。それだけで満足。

「千年ジュリエット」……掉尾を飾るにふさわしい、悲壮な物語と鋭いトリックの融合。いつの間にやら連作短編集としても完成されてきた感。

各短編の物語自体の水準の高さはもちろんとして、ミステリとしても連作短編集としての、というか一冊の中での起承転結を備え、ラスト一編には数々の仕掛けを贅沢に盛り込み、驚かされることは請け合い。
また今作でも新入部員が増えていくのだが、そのあたりの扱いはこれまでのシリーズと比べてかなり軽い。しかし前作で加わったあの人がいじりいじられ八面六臂の活躍をするので問題なしだろう。

辻村深月、米澤穂信の次にブレイクするのは間違いなく初野晴である。その時は3年以内には訪れると改めて断言しておきたい。
あとセブンネットでは信じ難いことに取り扱っていないので、担当者は猛省するように。


13.7.10
評価:★★☆ 7
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