そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

小麦はもっと高くなるべき

2008-04-21 | 農業と食

小麦の価格が30%値上がりして、消費者たちは大騒ぎである。おかげで、国産小麦が見直されている。それでも、なお内外価格差は大きい。小麦は、長年輸入にかけた関税を生産者に還元する(不足払い制)方法を行ってきたが、今は見直され価格差は国内の農家には還元されない。

小麦は、90%近くを海外に依存している。今回の若干の小麦価格の上昇で、国内の小麦生産のほぼ全量を賄っている北海道の、小麦農家が活気ずくことになるだろう。早い話が、もっと高くなれば国内生産量は、さらに増えることになるであろう。

Ai465e01 これまでは国内の労働価格が高いので、海外に依存していた一面がある。日本は今や、一人あたりのGDP生産量は、世界18位に落ち込んでしまっている。海外に食糧を依存する力が急速に衰えているともいえる。

小麦の価格はどうして上がったのであろう? 短期的には、いろんな要素が考えられる。バイオへの転用もその一つであろう。しかし最も大きな問題は、投機の対象になってしまったことにある。

21世紀を迎えた頃には、石油の原油価格はバレル27ドルであったが、現在は100ドルを超えるまでになった。投機マネーが穀物の買い付けにと走ったことも大きな要因である。

世界的な穀物価格の上昇は、かつては需給関係で決められていた価格体系を大きく壊すことになった。

しかし、最も重要なことはこうした短期的な要因ではなく、食料に対する不安感と現実である。人口増加に伴う、生産量の不足と供給の不均衡である。食糧を自給する理念を、この国が放棄したことが日本の自給率を下げた。

以前のように、余剰穀物を家畜に給与するのではなく、先進国が大量に牛、豚、鶏に給与したからである。さらに、生活水準を上げた新興国が類似の食体系を踏襲したから、穀物価格は高騰したのである。

穀物は昨年豊作であった。21億トン少々を生産した。世界の61億人で割ると、概ね一人当たり年間350キロ当たることになる。これは飢餓とは縁遠い数字である。

現実には8億人の人が飢餓線上にあり、穀物価格が高騰したこの1年でさらに1億人増えた。

この国がお米の生産をやめるとお金を出す政策などで、海外に依存する方針を選択したツケが今頃回ってきたのである。日本の小麦価格はもっと高くなって当然である。

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