NHKスペシャル「日本海軍400時間の証言」を見た。旧海軍の中枢にいた、元将校の“反省会”の録音記である。3回にわたって放送されたが、予想以上に赤裸々な内容であった。高齢になった元将校たちによる、昭和55年から100回以上の反省会が録音されていた。
とりわけ、第2回の放送の「特攻」”やましき沈黙”は、驚くべき内容であった。神風特攻隊に象徴されるように、敵艦に体当たりする特攻をだれが指示したかである。特攻を個人の勇気ある行動と称賛し、軍令部、国家の中枢はな全く関与していなかったというのである。国家の憂うべき状況を見て、個人が志願して勝手にやったのだと言うのである。
このことを批判する元将校がいたが、多くの元将校たちは否定した。国家が関与していなかったと言いながら、回天のように人間が中に収まって体当たりするために、設計して製造した事実がある。その他に爆弾を先端に積んだ桜花やマル四艇などの製造を、早くから手掛けていた。国家が明らかに関与していたのである。
特攻は作戦ではない。命令はしていない。彼らは志願したのである。神風特攻隊は、戦局の最終段階の出来事である。しかも通常の戦闘機での、体当たり作戦である。が、反省会ではずっと以前から、軍令部は計画していたと証言している。そのための人間魚雷回天や桜花の製造である。
神風特攻隊の大西瀧治郎中将は、海軍の軍令部に赴き戦局の悪化を受けて体当たり作戦しかないと発言していた。これをひたすら取り上げることによって、それ以降神風特攻隊は、大西が指示したことに巷間言われるようになった。
元将校の一部の人は、人間を自動機関士に仕立て上げ特攻作戦を組んだことを、反省するべきと発言している。しかし、特攻に関する資料はことごとく紛失しているのである。大本営にいた連中は、このことを”やましき”出来事思っている。そんな感情の下で沈黙をしている。
回天や神風などの特攻で死んで行った若者たちは、4000人を超えるそうである。軍の指示に従わず、志願して死んでいったことになっている。どこまで無責任な軍令部だと言いたくなる。国家のために身を捧げた純真な若者たちは、身勝手な上層部の保身のために報われることもないのである。
上層部に知らんと突き放された若者たちも、靖国神社に合祀されている。彼らを英霊と評価するなら、その前に国家が反省すべきではないのか。そうしたことも踏まえず、あるいは知らず英霊たちは参拝され、どう思うだろう。