長年、拉致被害者家族連絡会議(通称:家族会)の事務局長をしていた、蓮池徹さんの近著「拉致、左右の垣根を超えた闘いへ」(かもがわ出版)読んだ。あれほどメディアに登場ししていた、蓮池透さんが消えて4年ほど経つ。彼がひいた理由はこの本で明らかにされている。
集会に出るといつしか街宣車が登場し、北朝鮮を大声で非難し日章旗を掲げる団体に出くわすようになった。彼らの主張が、全く同じであることに失望したのだとしている。彼の主張には多いの賛同する面がある。
北朝鮮による拉致問題は、日本では左右からの政治的な利用による踏み場にされている感がある。特定のイデオロギーによっては解決できないと断じている。
その一方で、政府は家族会の顔色ばかりをうかがうようになった。家族会のご機嫌取りをやっているばかりでは、拉致問題は解決しない。家族会は、拉致問題を身内に抱え、感情的であり情緒的である。政府は、確たる方針を持って時には家族の意向に反しても、国家としての行動をするべきなのである。それがない。アメリカ頼みと経済制裁だけである。
日朝平壌宣言は矛盾に満ちている。5人生存8人死亡を何の根拠もなく受け入れるところから、この宣言の本質は貫かれている。宣言の中にも、拉致の一文字もなければ、北が望んだ戦後補償にも触れていないのである。一時帰国についても、曖昧なまま申し合わせを日本が一方的に反故にした。
経済制裁のグレードを上げても、かたくなな態度になるだけである。中国やロシアなどの協力がなければ、日本が浮くだけである。そうして現状に今ある。
その結果、拉致問題をめぐって日朝関係は極めて深刻な、行き詰まり状態に陥っている。北朝鮮には、日本が数万人の国民を拉致した事実と補償を盾に、現代の拉致を帳消しとはいかなくても、軽視する向きがある。心情的な問題であるが、北朝鮮が抱いている感情である。
拉致問題は、蓮池透さんが主張するように、日朝の国交正常化を抜きにして解決できるわけがない。その事実を踏まえるなら、打倒北朝鮮などの徒な非難や経済制裁からは、前に進むことはないのである。従軍慰安婦もなかった強制連行もなかった、北に対し核の先制攻撃をやれでは解決できるわけがない。