80后(パーリンホウ)と呼ばれる世代が、中国を席巻している。80后とは、1980年以降に生まれた世代のことを言う。后とは後のことである。80后は、親たちも文化大革命の風を受けていない。改革開放以後に育った世代である。
人口抑制策、いわゆる一人っ子政策の落とし子でもある。色々な呼び名がある。小さな王様のように育てられて、小皇帝といわれている。月光族ともいわれ、全く貯金をしない。草苺族とは、温室育ちのことである。その他、揶揄されるような呼び名を受けながらも、中国の経済成長を支える、我が侭で身勝手で消費が得意な30代である。
80后の象徴的存在として、田原(ティンエン)という女性がいる。彼女は、作家であり女優でありミュージシャンでもある。彼女の小説は、透明感のある軽く読みやすいとの評判である。世界各国に訳され、ベストセラーになっている。彼女は、政治には全く興味を示さない。民主化も民族問題についての質問には、全く回答しない。
世界の冷戦構造は崩壊したとされているが、東アジアではそれが妙な形で残っている。中国は社会主義体制だと主張している。北朝鮮も、世襲独裁国家であるが社会主義と、言い張っている。金融危機にあっても、中国は銀行は国営であり、事実上金融危機は存在しない。中国にとっての金融危機は、対外的に生じているだけである。国内需要を促進する形で金融危機を乗り切り、経済成長は驚異的な8%を保っている。
これらの象徴的存在が、80后である。ネット世代で、億万長者が何人も輩出している。国家体制のも内外の政治的問題も触れようとはしない。文化大革命が残したことが余りのも大きく、思想的スタンスを持たないことが、80后を楽しいことだけをやり、お金儲けだけをやるように育てたのかもしれない。その中国は、来年中には日本を追い抜いて世界第2の経済大国になる。
家庭を崩壊させ、中国の伝統的文化を受け入れず、社会の矛盾に目もくれない80后は、これからの中国をどのように支えていくのか、極めて興味がある。