詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

トランプ報道を読む(2)

2019-05-27 20:33:19 | 自民党憲法改正草案を読む
トランプ報道を読む(2)
             自民党憲法改正草案を読む/番外270(情報の読み方)

 2019年05月27日の読売新聞夕刊(西部版・3版)の一面の見出し。

日米貿易「8月に成果」/首脳会談 トランプ氏表明/首相のイラン訪問 理解

 朝刊の見出しが

トランプ氏/首相のイラン訪問 期待/貿易協定は参院選後に/きょう首脳会談

 だったから、トーンが少し変わってきている。貿易協定が「参院選後」から「8月」と絞られている。もうすでに決定していて、8月に発表するということだろう。そうでなければ、「8月」とははっきり言えないだろう。
 イランは、本文中には「期待」ということばがつかわれているが、見出しは「理解」とトーンダウンしている。見出しが同じではニュースにならないから文言を変えたという「読み方」もできるが、新聞なのだから先に進まないかぎり(新しい要素がないかぎり)見出しにしないだろう。つまり「理解」は「期待」していない、という「訂正」を含めた表現なのだ。
 貿易協定の「参院選後」が「8月」に変わったことと比較してみればわかる。「参院選後」では8月だろうか、来年だろうが参院選後。「8月」と限定できたところがニュースなのだ。そして「8月」に限定しているからこそ、もう水面下では決着がついていると想像できる。
 本文中は「8月にも」ではなく「8月には」と書いていることからもわかる。
 では、どういう「貿易協定」なのか、「柱」は何か。3面に、トランプの発言要旨が載っている。

日本は多くの防衛装備品を米国から購入している。我々は世界一の防衛装備品を製造している。日本はそれらを必要としており、ほぼ独占的に米国から購入している。それが貿易赤字を大幅に引き下げている。

 この発言から推測できることは、安倍はすでに約束している「防衛装備品(武器だね)」を、今まで以上に購入すると確約したのだ。
 国民がふつうに買う「商品」は、「これだけ購入します」と安倍が確約することはできない。輸入しても売れないということはありうる。アメリカ産の車を何台買うとか、スマートフォンを何台買うとか、牛肉を何トン買うとは確約できない。輸入して売れなかったら、買った業者が困る。
 ところが「武器」は、そうではない。そんなものは国民は買えない。買うことができるのは「軍隊」をもっている「国」という組織だけである。そして、それは買うだけでいい。転売する必要がないし、使わなくてもかまわない。だいたい「武器」はつかうことが前提につくられているはずなのに、使わないようにするのが「政治」の仕事なのだから、使われない方が国民にも好まれる。戦争をせずにすむのだから、使わない方がいいに決まっている。
 こんな、使わない方がいいもの、消費されなければいいものを、単にアメリカの企業をもうけさせるために安倍は大量に買うと約束したのだ。
 トランプは、この確約がよほどうれしくて、大はしゃぎでことばにしてしまったということだろう。成果は早くアメリカに知らせる必要がある。

 これだけたっぷり安倍政権に対する「攻撃材料」を提供してくれたトランプだが、野党はどこまで「攻撃材料」を利用できるか。
 他紙には野党側の声が載っているのかどうかしらない。朝刊で展開されるのかもしれないが、マスコミは、そういう声もきちんと紹介してほしい。











#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位 
 


*

「天皇の悲鳴」(1000円、送料別)はオンデマンド出版です。
アマゾンや一般書店では購入できません。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

ページ右側の「製本のご注文はこちら」のボタンを押して、申し込んでください。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エマニュエル・フィンケル監督「あなたはまだ帰ってこない」(★)

2019-05-27 19:53:40 | 映画
エマニュエル・フィンケル監督「あなたはまだ帰ってこない」(★)

監督 エマニュエル・フィンケル 出演 メラニー・ティエリー、ブノワ・マジメル

 マルグリット・デュラスの小説「苦悩」は読んでいないが、デュラスの小説が原作、予告編の「君が必要としているのは苦悩か、夫か」というシーンを見たいのと、ブノワ・マジメル(「人生は長く静かな河」では、子役だった!)が出るので見に行ったのだが。
 駄作。
 小説を読んだ方が絶対におもしろいと思う。映画になっていない。大事なところはナレーションになっていて、そこに風景とメラニー・ティエリーが映っているだけ。ナレーションなしで、そのときのマルグリットの「思想」と「感情」が伝わってくるのならいいけれど、ナレーションなしでは「描写」がわからない。
 小説は「ことば」だから、風景(描写)と思想、感情は「地続き」になる。だから、どんな風に書いても(とはいえないかもしれないが)、「一体感」が生まれる。渾然とした感じが、読者を引きつける。
 でも、映画では、映像とことばが分離してしまう。映像と無関係なことばなら、まだ刺戟があるが、映像をなぞっていてはだめ。あ、ことばを映像がなぞっているのかもしれないけれど。
 唯一の見せ場は、予告編にあった「君が必要としているのは苦悩か、夫か」と友人がマルグリットに問いかけるシーン。マルグリットは友人を平手打ちするが、ここの「作家」の宿命のようなものが凝縮していて、そこだけが光っている。「苦悩」が作家を育てる。作家のことばを豊かにする。言い換えると、マルグリットが小説を書けるのは、苦悩があるからだ。その苦悩が、「夫が帰って来ない」というものであっても、作家は「苦悩」を必要とする。問題を図星されて、マルグリットは、反射的に、ヒステリーを起こす。ヒステリーの中へ逃げ込むことで、自分自身を「解放」する。
 でも、まあ、こんなシーンは、「物書き」に興味がなければ、どうでもいいシーンだろうけれどね。私は「作家」にもデュラスにも関心があるので、なるほどなあ、と思って見たのであった。
 もうひとつ、見たいと思っていたブノワ・マジメル。
 うーむ。フランスの「美男子俳優」のはずだったが。いや、いまでも「美男子」なのかもしれないが、まるでジェラール・ドパルデューを見るみたい。ぶくぶくに太ってしまった。最初に登場するとき、上着を脱いでいてカッターシャツ姿なのでビール腹がそのまま目に飛び込んでくる。役どころにあわせて太ったというのではなく、単に不摂生で太ったというところ。「人生は長く静かな河」から見ているから、この変化には、あきれかえった。フランスでは、太っているかどうかは、もてる、もてないとは関係がないということがわかり、中年太りの人には「朗報」かもしれないけれどね。
 中年太りといえば、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に出るディカプリオもスーツを着ていても太っていることがあからさまにわかるくらい太っていたなあ。目の感じがチャールズ・ダーニングに似ていると思っていたが、体型も似てきてしまった。(身長は違うけれど。)
 という具合に、見た映画からどんどん感想が離れていってしまう作品。
 (KBCシネマ1、2019年05月27日)
人生は長く静かな河(字幕スーパー版) [VHS]
ダニエル・ジュラン
EMIミュージック・ジャパン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(7)

2019-05-27 10:43:57 | 嵯峨信之/動詞
* (いちどだけ呪いながら)

日を少しひろげて
おまえをやわらかに包んでみた
おまえは花よりももつとやさしく風にさわり
小さなことばを光りの上に泳がせた

 「ひろげる」と「包む」。反対の動きが読者の意識を詩へと誘う。矛盾のなかに何かが生まれてくる予感がある。既に知っているものではなく、知らないものが姿をあらわすとき、そこには必ず矛盾がある。
 パラダイムの変更、と言っていいかもしれない。
 「やわらかな」は「やさしく」へと変化していくことで、動き始めたものを、そっと後押しする。
 「さわる」は「ひろげる」が変わったものか、それとも「包む」が変わったものか。どちらもありうる。
 この「不安定」を経て、動詞は「泳ぐ」へと変わっていく。



*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
『誤読』販売のページ
定価の下の「注文して製本する」のボタンを押すと購入の手続きが始まります。
私あてにメールでも受け付けています。(その場合は多少時間がかかります)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプ報道を読む

2019-05-27 10:10:26 | 自民党憲法改正草案を読む
トランプ報道を読む
             自民党憲法改正草案を読む/番外270(情報の読み方)

 2019年05月27日の読売新聞(西部版・14版)の一面の見出し。

トランブ氏/首相のイラン訪問 期待/貿易協定は参院選後に/きょう首脳会談

 まるで安倍がイランを訪問すること、アメリカとイランのの関係改善のために何かすることがトランプの訪日のテーマみたいな書き方だが。そんな期待を伝えるため、あるいは「要請」するための訪日するはずがないだろう。だいたいアメリカのイラン制裁の結果、困っているのは日本であって、アメリカはぜんぜん気にしていない。イランとの関係悪化が気になるならイラン制裁などしないだろう。まるで安倍に、アメリカとイランの関係改善(橋渡し)をする能力があるかのような書き方には問題があるだろう。日本とイランの関係をどうするか、ということさえ、わかっていない。
 本当のニュースは「貿易協定は参院選後に」にある。それが「証拠」に、3面の解説にはイラン問題など書いていない。安倍とトランプの「親密さ」と参院選のことが少し書かれているだけだ。
 一面の記事中には、見出し部分は、こう書いてある。(1)(2)は、私が便宜上補足した。

(1)首相はゴルフの際に、日米の新たな貿易協定交渉について、夏の参院選前は農業分野などでの譲歩が難しいいとして配慮を求め、トランプ氏も理解を示した。
(2)トランプ氏は、26日午後のツイッター投稿で、貿易協定交渉について「大きく前進している。多くのことは7月の選挙後まで待つ」とし、脳産品の市場開放などの具体的な要求を参院選後とする考えを表明した。

 問題点はふたつある。ひとつは、なぜ貿易交渉を参院選後にするか。せっかく日本に来たのに、わざわざ交渉を避けたのはなぜか。
 (1)に「参院選前は農業分野などでの譲歩が難しい」という表現がある。これは逆に読めば「参院選後は農業分野(などで)の譲歩は簡単だ」ということだ。言い換えると、参院選で勝利してしまえば、自民党(安倍)の支持母体である農業関係者の票を気にする必要がないから、いくらでも譲歩します。選挙前は、農業関係者の票離れが心配だから、譲歩した貿易協定は結べない、ということ。
 農業関係者を完全にばかにしている。
 「日本の農業を守るから参院選では自民党に投票して」と呼びかけておいて、参院選が終われば「日米関係は何よりも重要なので、農業関係者にはがまんしてもらいたい」と言うことになる、と「事前予告」している。
 (2)の部分のいちばんの問題点は、トランプの「7月の選挙後」ということばである。(1)には「夏の参院選」ということばがあるが、トランプはこれを「7月の選挙」と言いなおしていることになる。参院選の日程はまだ明確になっていない。けれどトランプは「7月の選挙」と言っている。トランプが日程を決められるわけではないから(安倍のことだから、トランプの言いなりになって日本の選挙日程を決めているのかもしれないが)、これは安倍がゴルフの際に「7月の参院選前は」と言ったということだろう。国会や国民よりも、トランプを優先していることになる。こんな非常識な首相がいていいのか。 またこの「7月の選挙後」という表現には、もうひとつ、問題がある。「外交」(ゴルフ外交)がどういうものか、私は知らないが、外交だから「オフレコ」の部分あるだろう。水面下の交渉ということもあるだろう。しかし、そういう交渉を進めたときの「基本」は、これは「オフレコだから、外には絶対に漏らさないでくれ」と念押しをするのがふつうなのではないのか。つまり、安倍が「7月の参院選前は譲歩がむずかしい」と言ったのだとしても、参院選の日程はまだ決まっていないので「7月」という表現はつかわないでほしいとクギをさすべきなのに、それをしなかった、ということだ。
 これで思い出すのは2016年の日露首脳会談の直前のことである。このとき、日露首脳会談の成果(北方四島の返還に道筋を付ける)を掲げて衆院選を強行するといううわさがあった。ラブロフが「ロシアへの経済協力を言ってきたのは安倍であって、ロシアが経済協力を申し込んだのではない」という「外交の内幕」を暴露した。つまり、「ロシアが経済協力を申し込んだのではないから、見返りに北方四島を返すというようなことはありえない」と言外に言ってしまった。岸田が交渉過程で、よほどラブロフを怒らせたのだろう。そうでもしないかぎり、外交の「内幕」は口にしない。あらゆる協定が終わってから、「実はこうでした」というのが外交の基本だろう。
 安倍は「外交が得意」と言われているが、単に外国に行って金をばらまく約束をし、歓迎されるというだけだろう。野党は外交の責任をとれないから、どうしても与党主導になる。単に安倍がメディアに露出する機会が増えるというだけで、「外交が得意」ということになっているだけだ。
 この「外交の基本を知らない安倍」について、読売新聞は、3面でこう書いている。

 トランプ氏はツイッターで、まだ日程が決まっていない参院選が「7月」に行われると投稿した。首相がゴルフの合間などに、参院選の日程について言及したのではないかとの憶測を呼びそうだ。

 これはなんとも「甘い」追及である。「憶測を呼びそうだ」ではなく、それに気づいたのなら、それを問題にして、そのことを読者にわかるように追及するのが新聞の仕事のはずだ。社会的な議論にしていくのが新聞の仕事だ。これが問題になることは、わかっていました、という「証拠」を残しておけば言いということではない。
 トランプはどうやって「7月」ということばを手にしたのか。安倍が「7月の参院選」と言ったのだとしたら、なぜ、国会(国民)に知らせる前に、トランプに言ったのか。いま開かれている国会との関係もあるはずだ。国会をどうするつもりなのか。開かれていない予算委をどうするのか。憲法審査会をどうするのか。
 トランプをどんなふうにもてなしたか、などよりも重要なはずだ。










#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位 
 


*

「天皇の悲鳴」(1000円、送料別)はオンデマンド出版です。
アマゾンや一般書店では購入できません。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

ページ右側の「製本のご注文はこちら」のボタンを押して、申し込んでください。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする