細田傳造「うん」(「ぶーわー」49、2023年03月10日発行)
細田傳造「うん」を読む。どこまでがほんとうで、どこからが嘘か、わからない。しかし、嘘にしたって、それを書いているときは、それを書かずにいられないほんとうがあるのである。だから、みんなほんとうと思って読む。詩を書く人間は人をたぶらかしているし、読む人間もだまされてもともとと思って読んでいる。どっちにしたって、人の書いた詩は、自分とは関係がない。それは私の生活ではないのだから、何が書いてあったってかまわない。そのことばのなかで、私は、私の考えたいことを考えるだけである。
おやじ友達出来たか
慈悲が来たりてきく
うん さんにん
三人もか よかったなおやじ
うんさんは海埜と書いてうんのと読むんだ
交際のきっかけのくわしいいきさつはおしえない
とはじまる。「おやじ(細田か)」は「慈悲(息子か)」と会話している。二人目もうんさん。百万円拾って届けたら落とし主が現れないので、自分のものになった。運がいいからうんさん、とつづけて三人目。
さんにんめの御友達もおんなのひとか
もちろんご婦人だ
いつもうんこのニオイがしている
なまえはしらない
うんさんとよんでいる
身近なカオリでおちくつ
勃起させてくれる
ここは酸素が濃い
なんといってもおもしろいのは、ことばの「口調」が、整えられていないことだ。親切なのか、冷酷なのか、丁寧なのか、乱暴なのか。皮肉を言っているか、うらやましがっているのか。「うんこのニオイ」を「身近なカオリ」と言い直したあとで「勃起」か、とうなってしまう。
ここでは、ことばは「知性」ではない。ことばは「肉体」のまま動いている。
で、ことばが「肉体」であるとき、それはどんなに乱暴(暴力的)であっても、「知性」の暴力に比べれば何のことはない。「知性」は肉体を持たないから、他人を徹底的に破滅させてしまうが(核兵器がその代表)、「肉体」には、そこまでできない。
どうしても「肉体」が触れ合うと「反応」が「肉体」にかえってくるから、どこかで、何かが連絡し合う。まあ、一種の「セックス」である。そんなことを感じさせるところが「ほんとう」である。
片貝の養老ホテル
いいところにおしこんでくれてありがとうよ
もつべきものは愚息だなあ
韓国語でも運はうんという
うつくしいわが人生である
うん
いいなあ、この終わり方。細田は、「受け入れる」ということを知っている。「受け入れる」ことが生きること、交わることなのだ。交わったら、そうだね、ちゃんと「エクスタシー」まで、「肉体」のかぎりつくす。
その「つくす」が、いつでも細田のことばのなかにある。「ほんとう」がなければ、つくせないからね。
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