詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

村上春樹「イエスタデイ」

2023-03-24 22:32:29 | 詩集

村上春樹「イエスタデイ」(『女のいない男たち』文春文庫、2022年04月05日、第15刷)

 私は何度か書いたことがあるが、村上春樹の小説が嫌いだ。ただ、日本語を外国人に教えるには最適のテキストである。同じことを何度も繰り返して説明するからである。(描写ではない。)「わからなくてもつづけて読んで。同じことが別のことばで書いてあるから」と、生徒のとなりにいて、そう言うだけで日本語を教えられる。
 それ以上、言うことはないと思っていたのだが。
 いま日本語を教えるテキストにつかっている文庫本に「イエスタデイ」という作品がある。それを読んでいて、121ページまで来た。主人公が、かつてデートした女性と再会し、彼女とのデートのことを話す。話題は、彼女が見た「氷でできた月の夢」である。

「その夢のこと、まだ覚えていたのね?」
「なぜかよく覚えている」
「他人の夢のことなのに?」
「夢というのは必要に応じて貸し借りできるものなんだよ、きっと」と僕は言った。

 この会話のあと、彼女は姿を消す。そして、「たぶん化粧室にアイメイクを直しにいったのだろう。」という文章がある。ページの最後に「空白」がある。ここで、おわった、と私は思った。そして、非常に感心した。村上春樹の小説に感心するとは思いもしなかった。
 余韻がある。
 「夢というのは必要に応じて貸し借りできるものなんだよ、きっと」は、小説を書いていて、突然ひらいめたことば、どこかから降ってきたことばなんだろうと思った。そういう強さがあって、そのあと彼女が消えてしまうのもとてもいい。
 うーん、すばらしい。

 ところが。
 日本語教師をしていなかったら、そこで本を閉じるのだが、次に読む作品を予習をしておこうと思ってページを繰ったら、つづきがあるのだ。小説は終わっていない。
 そして、その最後の「説明」がとてもくだらない。「説明」にもなっていない。
 その前に収録されている「ドライブ・マイ・カー」も終わる直前、65ページの、みさきのセリフはとてもよかった。「ドライブ・マイ・カー」は、そのあとが短くて、まだいいのだが、それでも最後の一行はいらないだろう。

「少し眠るよ」と家福は言った。

 ここで終われば、もっとよかった。
 で、何が言いたいかというと、村上春樹の小説の文体は「描写」ではなく「説明」であり、村上春樹が「説明」してしまうのは、読者を信じていないからだ。読者を信じていないということは、村上春樹が村上春樹自身のことばを信じていないということなのだ。だから、どうしても長くなる。
 別の生徒とは「18Q4」を読んでいるのだが、「高速道路の非常階段を降りるのに、なぜ、こんなに長い時間がかかる?」と質問されてしまったことを思い出すのだった。
 だらだらと書いてしまうのは、私自身の癖でもあるのだが、だれか、村上春樹に、「ここはいらない」と助言する編集者はいないのだろうか。

 

 


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Estoy Loco por España(番外篇330)Obra, Jesus Coyto Pablo

2023-03-24 10:38:54 | estoy loco por espana

Obra, Jesus Coyto Pablo
"El vendedor de Evangelios" fragmento, Mixta 2023

 "El vendedor de Evangelios" de Jesus. Los colores son muy extraños. Hay varios colores, pero no se mezclan. Desde el momento del contacto, cada uno intenta condensarse hacia su propio centro. Como una gota de agua que se redondea debido a la tensión superficial. Hay algunos colores mezclados, pero acaban separándose y convirtiéndose en colores independientes. Más que un rechazo a la fusión, hay un movimiento autónomo hacia la coexistencia. Hay aquí una fuerte voluntad hacia lo individual.
 Tal vez debido a los muchos blancos dispersos, mis pensamientos se desbocan desde aquí. ¿No son estos blancos del semen? Se combina con el óvulo y se convierte en una "vida" que nunca antes había existido. Innumerables blancos se combinan con el negro (el huevo) que existe detrás del mundo y cristalizan en nuevos colores. Azul, rosa, verde, amarillo. Tengo la impresión de asistir al nacimiento de los colores.
 Incluso el ser humano en la cruz me parece una mujer. El sacerdote parece estar leyendo la Biblia, pero para mí, que no soy cristiano, esta serie parece representar el "nacimiento de los colores". El azul, el rosa, el verde y el amarillo son puros y bellos. Tienen el poder de brillar aún más en el futuro.

   

 Jesus の"El vendedor de Evangelios" 。色が、とても不思議だ。いくつもの色があるが、それは混じり合わない。接触した瞬間から、それぞれが、それぞれの中心へ向かって凝縮しようとしている。表面張力で、水滴がまるくなるように。混ざり合っている色もあるのだが、それはやがて分離し、独立した色になるだろう。融合の拒絶というよりも、共存をめざした自律的な動きがある。ここには、何か、個への強い意思がある。
 多くの白が散らばっているせいか、私の思いは、ここから暴走する。この白は、精液の白ではないのか。それは卵子と結びつき、いままでなかった「いのち」になる。無数の白が、世界の背後に存在する黒(卵子)と結びつき、新しい色になって結晶する。青、ピンク、緑、黄色。色の誕生を見ている気がする。
 十字架に架けられている人間も、私には女の見える。司祭は聖書を読んでいるようだが、キリスト教徒ではない私には、このシリーズは「色の誕生」を表現しているように見える。青、ピンク、緑、黄色のどれもが純粋で美しい。これからさらに輝く力を秘めている。

 

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