Project Syndicate Jul 1, 2020 に、 Joseph E. Stiglitz が、”Priorities for the COVID-19 Economy”を書いた。
コロナウイルス経済における優先政策について書いているのだが、今回は、非常にシンプルで、まさに、リベラル学者の言が冴えていると思うので、この点だけについて、考えてみたい。
この論文の後半部分だが、大意は、ほぼ次の通り。
スティグリッツは、まず、
短期的な優先順位は、パンデミックが終息するまで経済は回復しないので、明らかに、人々への保護設備や病院のキャパシティへの援助サポートなどの緊急ヘルス関連支出(the health emergency)。
そして、最も困っている人々を助け、不必要な倒産を避けるための財政援助、コロナ終息後の緊急再起が上手く行くような労働者と企業とのリンクの維持、を説く。
このアジェンダで、絶対に必要なのは、既に寿命が尽きた企業に救済策を施さないこと、すなわち、コロナ前から既に倒産寸前の企業、ダイナミズムと成長余力を欠いたゾンビ企業、いかなるショックにも耐えきれない債務超過企業などへは財政援助をしてはならない。FRBが、財政救済策で、ジャンクボンド市場を支援するなどと言うのは完全な誤りである。これらは、まさに、モラルハザードを惹起する要因であり、政府は、愚挙とも言うべきこのような財政資金援助をやってはならない。と言う。
実際には、アメリカ政府は、コロナの影響で売り上げ急減で危機に見舞われ、本来なら競争力が保てるはずの企業を破綻するのを防ぐ狙いであったのが、投機的等級に落ちた企業の社債を買ったり、コロナ以前から財政が悪化していた企業までも救済すると言うので問題視したのであろう。
資本主義においては、企業の淘汰新陳代謝は、当然、自由市場システムの健全なメカニズムであるから、このような時期こそ、自浄作用を働かせよと言うことであろう。
このコロナは、長引きそうなので、財政出動の優先順位をつけるのに十分な時間がある。パンデミックが、発生する前に、アメリカ社会は、人種的差別、経済格差、健康水準の傾向的低下、化石燃料への異常な依存等々、深刻な病巣を抱えていた。今や、政府は、膨大なスケールで財政出動するのであるから、国民は、それを受領した企業に、社会的かつ人種的な公正、健康の改善、より環境重視の知識ベースの経済へ資金を投入するように要求する権利がある筈である。
特に、環境保護グリーン革命への投資に意を用いるなど、公共支出の管理よろしきを得て、深刻な失業対策を兼ねての労働集約的かつ高度に刺激的な支出の価値のある財政援助、そして、減税。国家は、社会にたいして、それが求めている持続可能な回復プログラムを採択できないという経済的な理由はない。と言うのである。
さて、先に、スティグリッツは、このパンデミックは、格差の拡大を増大すると述べている。
機械やロボットは、ウイルスに影響されないので、未熟練労働者を使う建設業の雇用者などはハッピーな筈。それに、低所得者は、富者よりは、消費性向が高いので、所得を高い割合で費消するので必然的に格差が拡大するというのである。
また、財政出動についても、金融政策は、一時的な流動性苦境に対応できても支払い能力問題の解決にはならないし、既に金利が0%近辺では経済刺激効果がない。それに、赤字の増大と政府債務の増加を嫌う保守派の強力な反対がある。と悲観論を展開している。
そして、ウイルスが人間の行動にTAXのように作用するので、消費や生産に大きな変化を引き起こして、広範な形の構造変革をもたらすであろうという。
今回のパンデミック不況は、急激な変化でありながら、求められる職業は、労働集約性の低い、より技術集約的な職なので、職業のスムーズな転換は非常に困難であり、コロナ終息後、再雇用によって失業率が多少戻ったとしても、構造的な失業は増加すると言うことであろう。
それよりも、私が注目したいのは、ゾンビ企業や命運の尽きた企業は見限って新陳代謝を図れというシュンペーター張りの議論である。
それに、細かいことには触れずに、助けて貰った企業に、環境対策や格差や不平等の社会悪に挑戦して社会的責任を果たせという提言である。
コロナウイルス経済における優先政策について書いているのだが、今回は、非常にシンプルで、まさに、リベラル学者の言が冴えていると思うので、この点だけについて、考えてみたい。
この論文の後半部分だが、大意は、ほぼ次の通り。
スティグリッツは、まず、
短期的な優先順位は、パンデミックが終息するまで経済は回復しないので、明らかに、人々への保護設備や病院のキャパシティへの援助サポートなどの緊急ヘルス関連支出(the health emergency)。
そして、最も困っている人々を助け、不必要な倒産を避けるための財政援助、コロナ終息後の緊急再起が上手く行くような労働者と企業とのリンクの維持、を説く。
このアジェンダで、絶対に必要なのは、既に寿命が尽きた企業に救済策を施さないこと、すなわち、コロナ前から既に倒産寸前の企業、ダイナミズムと成長余力を欠いたゾンビ企業、いかなるショックにも耐えきれない債務超過企業などへは財政援助をしてはならない。FRBが、財政救済策で、ジャンクボンド市場を支援するなどと言うのは完全な誤りである。これらは、まさに、モラルハザードを惹起する要因であり、政府は、愚挙とも言うべきこのような財政資金援助をやってはならない。と言う。
実際には、アメリカ政府は、コロナの影響で売り上げ急減で危機に見舞われ、本来なら競争力が保てるはずの企業を破綻するのを防ぐ狙いであったのが、投機的等級に落ちた企業の社債を買ったり、コロナ以前から財政が悪化していた企業までも救済すると言うので問題視したのであろう。
資本主義においては、企業の淘汰新陳代謝は、当然、自由市場システムの健全なメカニズムであるから、このような時期こそ、自浄作用を働かせよと言うことであろう。
このコロナは、長引きそうなので、財政出動の優先順位をつけるのに十分な時間がある。パンデミックが、発生する前に、アメリカ社会は、人種的差別、経済格差、健康水準の傾向的低下、化石燃料への異常な依存等々、深刻な病巣を抱えていた。今や、政府は、膨大なスケールで財政出動するのであるから、国民は、それを受領した企業に、社会的かつ人種的な公正、健康の改善、より環境重視の知識ベースの経済へ資金を投入するように要求する権利がある筈である。
特に、環境保護グリーン革命への投資に意を用いるなど、公共支出の管理よろしきを得て、深刻な失業対策を兼ねての労働集約的かつ高度に刺激的な支出の価値のある財政援助、そして、減税。国家は、社会にたいして、それが求めている持続可能な回復プログラムを採択できないという経済的な理由はない。と言うのである。
さて、先に、スティグリッツは、このパンデミックは、格差の拡大を増大すると述べている。
機械やロボットは、ウイルスに影響されないので、未熟練労働者を使う建設業の雇用者などはハッピーな筈。それに、低所得者は、富者よりは、消費性向が高いので、所得を高い割合で費消するので必然的に格差が拡大するというのである。
また、財政出動についても、金融政策は、一時的な流動性苦境に対応できても支払い能力問題の解決にはならないし、既に金利が0%近辺では経済刺激効果がない。それに、赤字の増大と政府債務の増加を嫌う保守派の強力な反対がある。と悲観論を展開している。
そして、ウイルスが人間の行動にTAXのように作用するので、消費や生産に大きな変化を引き起こして、広範な形の構造変革をもたらすであろうという。
今回のパンデミック不況は、急激な変化でありながら、求められる職業は、労働集約性の低い、より技術集約的な職なので、職業のスムーズな転換は非常に困難であり、コロナ終息後、再雇用によって失業率が多少戻ったとしても、構造的な失業は増加すると言うことであろう。
それよりも、私が注目したいのは、ゾンビ企業や命運の尽きた企業は見限って新陳代謝を図れというシュンペーター張りの議論である。
それに、細かいことには触れずに、助けて貰った企業に、環境対策や格差や不平等の社会悪に挑戦して社会的責任を果たせという提言である。