【教務主任通信(7)】利他の心

利己主義の正反対にあるのが「利他主義」です。
茂木健一郎先生の著作『カラヤン 音楽が脳を育てる』の中に「利他」に関する一文があるので、引用が少々長くなりますが紹介させていただきます。

「本来、「利己的」といわれる脳のはたらきが、例外的に「利他的」になるもの、それが「愛」だと科学者は考えている。いわば、愛とは「他」への働きかけであり衝動であり、その源は「知りたい」「わかりたい」と思わせる空白、すなわち「脳の中の不在」である。つまり、愛の対象とは常に、不在を孕んでいるといってもいい。
(中略)
 つまり、愛とは脳の中の「無」から「有」を創り出す営みであり、自分で働きかけを続ける限り、無限の能動性を持つ精神運動である。愛が命の根本だといわれる所以である。どこまで「他」を愛せるか。
 それは同時に、脳内で「他」をどこまで実在的に想像できるか、ということではないだろうか。」


 これからの教育の現場に求められているものは、ここに述べられているような「利他の心」から創造される他者の存在を尊重していく営みであると思います。これまでの歴史の中でも当然この「利他」の精神というものは尊ばれてきたわけですが、残念ながら日本の教育は日に日にこの精神が薄れているように感じられてなりません。私がここで述べている「教育」は、学校教育という狭い範囲のものではなく、「人間が行っている教育活動のすべて」を対象に論じているつもりです。

 教育の範囲をしぼって、学校現場のことを言えば、親と子、子と子、子と教師、親と教師、教師と教師、そして裏から学校を支えている職員の方々、地域の方々。つながりを持っている人々すべての精神性の大河の中に、「利他」という深層を流れる安定した潮流があるならば、相互にいがみ合ったり、安易な批判をくり返すようなことなく、豊かで美しい教育の花を咲かせていくことになるでしょう。
その教育の花の象徴として「こどもたちの太陽のような笑顔」がにじみ出ると私は感じています。

 先人の言葉で私の記憶に強く刻まれている言葉があります。

「親をも愛することのできない現代の若者に、他者への慈愛を教えていくのだ。そこにしか時代を変革できる可能性はない。」

 慈愛とは、愛し慈しむと書きますが、私のイメージとしては、大切な大切なものをそっと両手の平に乗せて温めているような映像が浮かびます。私は親や教師の心根には、このようなイメージがあった方が良いだろうと思っています。



 我が師から学生時代に教えていただいたこと。教師としての条件です。自分自身が原点に立ち返る意味でも書き残しておきます。

一、絶対の確信に立って指導をすること。

二、子どもたちを心から愛し、親切に、暖かく擁護していく責任感を持て。

三、包容力。子どもの境遇や立場をよく理解し、どんな子どもでも幸福にしきっていこうと忍耐強く指導をすること。

四、公平であれ。自己の感情や情実に動かされず、正論であれば耳を傾けて、間違った意見や感情論にはたとえ先輩の言葉であっても厳戒に戒める厳正公平さを持て。

五、自信がなくてはならない。決意、勇気、果断な行動により、全員を守り、張り合いを持たせ、楽しく前進させきってみせるという自信がなくては教師は務まらない。

カラヤン Herbert von Karajan ―音楽が脳を育てる (CD付き:茂木健一郎選曲 脳を育てる名曲11曲58分)
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【教務主任通信(6)】強化学習・マイナスの強化にしないために(アドラー心理学から)

ある年の6年生の授業で、子ども達から「プラス思考」の話題があがったことをきっかけにして、「マイナスのスパイラル」に入らない方法を何気なく話しました。

キーワードは「肯定文」と「否定文」の差です。

 「否定文」とは「○○しない」という「ない」で終わる文型のことを意味することにしました。例えば、「遅刻しない」「ふざけない」「授業中はおしゃべりしない」「けんかしない」「泣かない」という文です。
 学校行事で七夕集会とか節分集会をすると、願い事にこの「否定文」の文章が割と多く出てきます。
「けんかをしないでみんな仲良くすごせますように」
「追い出したい鬼は乱暴な鬼」
「授業中にさわがないで頑張るクラスになりますように」
本当によく目にする願い事です。

 ところがこれが意外に大きな力を発揮してしまうのです。
「けんかをしない」という目標や願いを立てて、毎日自分達に言い聞かせていくと、「自分達はけんかをしやすい集団なんだ」という集団イメージを定着させていく効果が生まれてしまう。結果、その目標を立てたばかりに、もっとけんかをするクラスになっていってしまうことも考えられます。

「ふざけない」という言葉が出てきた場合は、「自分はふざけてしまいやすい人間なんだ」というセルフイメージが無意識にあって、くり返し言葉したり、身近な人が「ふざけないで」と注意を聞かせることで、その「マイナスイメージ」が強化されてしまう場合も多いはずです。

 こうしたことを防いでいくためにも、目標設定の言葉には「肯定的な言葉」を慎重に選んでいく必要がありそうです。
「授業中はふざけない」という言葉は、「自分は授業中に集中できる。集中する。」という肯定的現在形にする。「けんかをしない」という言葉は使わずに、「いつも仲良く楽しいクラス」と表現しておけば十分なのではないでしょうか。

 こうした考え方はいろいろな本でも紹介されていますが、今回の裏付け理論として下記に紹介する本の一節を引用させていただきます。

「やめようとする努力そのものが、ますますその行動へのこだわりを深め、その行動の頻度を高めることにつながるということである。それまで何も気にならなかったことが、やめようとすればするほど罪悪感を伴ってこびりついてしまう。代替案が否定文でなく肯定文でなければならない理由はここにある。」(岩井俊憲 著「アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方―人はだれに心をひらくのか」)

アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方―人はだれに心をひらくのか
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マインドマップにかくと望みが叶う

先週の土曜日、辰巳ジャンプの子どもたちを相手に、3時間の「マインドマップ導入講座」を開催しました。バレーボール指導の一環ですから「メンタルトレーニング」に活用していくことが最大のねらいです。しかし、辰巳ジャンプは私・井上という現職教員が指導しているチームの特色を生かして、勉強面の指導も強くおし進めていきたいと思っています。

内容はこちらの記事です。

辰巳ジャンプは勉強にも挑戦する!!!

その中で話したことを、子どもたちはよ~~~く覚えていたみたいです。

「紙に自分の希望や夢、願い事、目標などをしっかり書いて、毎日見ると、それが叶いやすくなるんだよ。なぜなら、誰もが自分の目標を紙に書いて貼っておいた方が良いと思っているんだけど、実際にそういう行動を起こす人は3%しかいないんだ。世の中はそういう3%の人の成功のために、残りの97%の力が集中するようにできているんだって。紙に書くとそれは、夢から目標という具体的なものに変わるんだ。そして人間は目標の方向に、脳が自然に運んでくれるものなんだ。」

この3%という数字は、1953年・エール大学卒業生を対象にした、実際の調査結果から明らかになっている数字です。

紙に書くという行動をする人間は、なんと3%しかいないのです。物事を実現していくためには、この「3%」に入ることを意識することがとても大事です。



子どもたちは、翌日の日曜日に集まった時、さっそく報告をしてくれました。

「先生、昨日のマインドマップの勉強で、私はミュージックプレーヤーがほしいって書いたんですよ。家に帰ってすぐに、お母さんとヤマダ電機にお買い物にいったんですけど、ポイントカードに残っているポイントを使わないと無駄になっちゃうことが分かって、お母さんがミュージックプレーヤーを買ってくれたんです!!!本当に実現しちゃいました!!!」

「先生、私も昨日、マックを食べたいってことを書いたんです。うちに帰ったら、お母さんが今日は食事を用意できなかったから、何か食べに行こうっていったので、マックを食べに行けました!!!」

いつもながら、行ったことがすぐに実現していくことに、私はまたまた自信を深めながら、喜んでいる子どもたちの声に「本当!!!やっぱり紙に書くと叶うんだね!!!」と共感していました。


不思議なことかもしれませんが、私の教え子には、何度も何度もこうしたことが起こるのですから、「3%効果」は間違いないような感じがします。


この根拠となる書物を紹介しておきます。少々値が張りますが、読むことを強くお勧めします。
「PX2」という自己啓発プログラムを日本に紹介しているルー・タイス氏の著書です。


望めば、叶う―自分を高め人を導く成功法則
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日経BP社


今週末のバレーボール練習の合間時間には、「マインドマップで作文すらすらワーク」を使って、作文の書き方を指導する予定です。
オブザーブしたい方はコメント欄に連絡先をご記入ください。


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【教務主任通信(5)】「百年後のふるさとを守る」(5年国語)でPISA型読解力を鍛える

6月の研究授業では5年生が「百年後のふるさとを守る」(伝記)という中心教材を活用して、「自分の生き方を考える」というキャリア教育のねらいに直結する研究をしてくれます。

この教材、あまりにもタイムリーな内容です。浜口儀兵衛という紀州藩の商人が、1854年に起こった安政の南海地震(M8.4)による津波で壊滅的な状態になった故郷・広村の再建に、私財をつぎ込んでいく。そして100年後の大地震に備えるために、大堤防を築きあげます。そして1946年の南海地震の時に、この大堤防のおかげで津波をくいとめることができたという内容です。

この単元では、ぜひともPISA型の読解力を鍛え上げてほしいと思います。もし私が授業をするとしたらと考えて、概略を紹介します。

(1)解釈
・中心教材文を読み、浜口儀兵衛の業績・考え方、周囲の人々への影響などを整理した上で読解する。
・この伝記の書き方は、「物語文」「史実」「筆者の考え」に分かれていることを指導し、文章構成の学習を深める。

(2)熟考
・読解したことを元にして、「自分の生き方・考え方」という基準を見つめながら、浜口儀兵衛の生き方と比較し、感心したことやこれからの生き方の参考になることは何かを熟考させまとめる。仕事というのは自分のためだけでなく、みんなのためを思って取り組むことが大事なことなのだと気づかせたい。(利他の精神)

(3)評価
・熟考したことを元にして、自分の生き方を再度見直す。
・自分にとって大切なことはなんなのかを判断する。
・さらに他の伝記を読むための選択基準を考える。

(4)発信
・学習の中で考えた自分の生き方や考え方を発信(発言や作文)して、友だちとの学習交流をする。
・友だちの意見を聞いて、自分の中で「解釈⇒熟考⇒評価⇒発信」の流れを繰り返す。

こうすることによって、学び合うことの楽しさを味わえるこどもたちに育てることが、今年の本校の研究かなと考えてみました。

何かの参考になれば幸いです。



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【教務主任通信(4)】 授業にはできるだけ「自己評価」を入れたい

最近、個人的につくづく思うことがあります。45分の授業って本当に短いなぁ・・・
やりたいことがまだまだあるのですが、時間が足りなくなってしまう。そんなことはありませんか?
運動会の練習などはその最たるものかもしれません。
「間に合うのか???」という気持ちになっているのは担任ばかり?

授業を効率的に行うためには、やはり児童のモチベーションアップを図る必要があります。
そのために、「自己評価」を必ず入れてみてはどうでしょうか。

授業のはじめに必ず「ねらい=目標」を確認しますよね。教師は評価規準をもって臨みます。
「今日の練習では、足の動かし方を覚える」
という評価規準であれば、
A「足の動かし方をすべてできる」 B「模範演技を見ながらできる」 C「難しくてできない」
という評価基準になるでしょうか。
そしてこれを児童個人内評価にも活用していくのです。

授業最後の号令をする前に、
「今日の練習で、自分はどうだったかを考えましょう。Aだった人? Bだった人? Cだった人?」
と質問をして、挙手をさせるだけでも、児童の練習へのモチベーションが変わるはずです。
「次も頑張ろう!」
「次はAになるようにしよう」
まわりの子がAばかりに手を挙げて、Cがほんのわずかだったとしたら、その子はきっと、なんとなく恥ずかしい空気に包まれ、(次はもう少し頑張ろうかな・・・・・)と思うかもしれません。
また、自己評価をさせて、いったん自分自身を客観的に見つめさせることにより、心の「クールダウン」にもつながります。

さらに一歩進めると、児童自身がいつでも「目標意識」を持ち、自発的に取り組むようになってくれば、そこには必然的に自己評価が生まれ、教師が指導しなくても勝手に成長していく状況が生まれてくるものです。

多くのアスリートを育てた「コンディション・コーチ」の立花龍司氏はコーチの役割について書いています。

「コーチの役目は『大切な人たちを目的地まで安全かつ確実に送り届ける』ことだ。送り届けるのは『コーチ』、大切なひとたちは『選手(児童)』、目的地とは『夢や目標』、安全かつ確実とは『確かな計画性や科学的根拠を持っていること』」

私たち教師もまた「コーチ」なのです。こどもたちが自ら練習したくてしたくて仕方なくなるような、計画性や指導性、そして「目標」をもって進んでいきたいところです。



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辰巳ジャンプは勉強にも挑戦する!!!

今日は私の勤務校でバレーボールの練習をしました。体育館を1日使うことができなかったので、午後は3時間かけて「マインドマップ講座」を行いました。受講した子どもたちは13人。本格的に井上の授業を受けるのは初めてのことなので、みんな楽しみにしていたようです。

3時間でマインドマップをかけるようにするだけでなく、脳の使い方=メンタルリテラシーの考え方も、体験的なワークを通して理解してもらいました。今日子どもたちに理解させた内容は、大人が受講しても、きっと目から鱗が落ちるような内容のはずです。それを小学校3年生にも理解できるようにかみくだいて構成した、楽しい講座を行ったつもりです。

実際、途中の休憩は5分を2回取っただけなのに、小さな子どもたちは最初から最後まで、集中して授業を受け続けることができました。しかも午前中に目いっぱいバレーボールをして、お弁当を食べた1番眠くなる時間帯ですよ。だれ一人ボーっとすることなく、最後には「もっとやりたい!」と言って時間を延長したくらいに勉強をしました。

簡単に流れを紹介します。

(1)自己紹介カードに文字を使わず「好きな食べ物」をかいて、みんなで自己紹介をしていく。

(2)マインドマップの小学生の事例を、メンタルリテラシーの考え方を織り込みながら紹介。

(3)進化ゲームをして体を動かす。メンタルブロックを外す。

(4)ワーク1「言葉の連想」「イメージフラッシュ」

(5)「気づき」のワーク、いろいろと。漢字の覚え方やアハピクチャー。

(6)マインドマップ、7つのルール

(7)「自分の夢」をかくワーク

この内容で3時間。


子どもたちはみんな、「家に帰ってからもマインドマップの続きをかこう!」と言っていましたが、実際はどうだったのでしょうね???




来週もまた練習の合間に授業をする予定です。
次は私が監修にたずさわらせていただいた、「マインドマップで作文すらすらワーク」を活用します。

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自分で制作に協力し、たくさん意見を生かしていただいた本なので、この本で指導するのは人類で私が一番だと自信を持っています。
来週の3時間授業で、全員を作文好きにしていきます。休まない方が得ですよ~(笑)


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【教務主任通信(3)】 「評価規準」と「評価基準」

今年度、新学習指導要領完全移行に伴い、年間指導計画・全体計画・評価計画を全面的に作りかえました。

我が区の場合、教育委員会からひな形や参考事例などの資料がいっさい出ませんので、どの学校の教務主任も非常に頭を悩ませて作成に当たっているのが現状です。本校も多分にもれず、昨年度までは業者から出されている年間指導計画に少し修正を加えて教育委員会に提出していました。その厚さは国語辞典2冊分くらいあるほどで、そんなものを校内に全員配布しても邪魔なだけ。だからデジタルデータのみ校務LANに保存してあります。

しかし、今年度は「先生方が使えるものを作る」と一念発起して、全教科を作り直しました。一人で作ったものなので完璧なものではなく、早くも修正をしないといけない部分を何人かの先生にご指摘頂いています。ぜひ日常的に活用していただき、直した方が良いところに赤を入れておいて下さい。来年の2~3月には、先生方に担当教科の年間指導計画・評価計画を作り直していただくことになります。みんなの目で見て、本校の実態により合ったものを作って下さい。

さて、この年間指導計画の中には「評価規準」も並列しておきました。本来は毎時間の評価規準が必要なのですが、それをやると先述の通り、辞書のようなものになってしまいますので、単元の評価規準を載せる程度にしてあります。この「評価規準」の考え方を確認させて下さい。

「評価規準」・・・・・井上が授業の中で意識していること
毎時間の授業の中で、児童に達成させたい「ねらい」にそって、どのような状態になれば達成されるのかを定めたのが評価規準となります。ですから、通知表をつけるための「基準」ではなく、我々教師がどのような授業をするかどうかを判断するための「規準」となります。
例えば、国語の授業で「筆者の考えに対する自分の考えをもち、友達と交流して確かめ合っている。」という評価規準を教師が持っていれば、当然、学習シートブックに自分の考えを書き、その後、意見交換をすることができていればねらいを達成できていると判断します。逆にそれが難しい児童がいれば適切な支援を与えていく。次の授業に入る前に、少しでも授業の評価規準に近づけるように、いっしょに課題を乗り越えていく。学級全体として評価規準を達成できていないようであれば、授業の方法を大きく修正する必要もあるでしょう。
このように、私たちの授業を見直していくために「評価規準」があると考えても良いと考えられます。
「先生は、こども達をどのように判断して指導しているのですか?」という質問に対する説明も評価規準を把握していることで責任を果たすことができると思います。



ちなみに、ウィキペディアの記事を転載させていただきます。

到達度評価をするにあたって設定した到達目標(=観点・内容)を評価規準といい、到達目標に対してどの程度到達できたかを判断する指標(=目安)を評価基準という。どちらも「ひょうかきじゅん」と読むが、意味は明確に異なるので注意が必要である。
言葉を区別するために、規準を「のりじゅん」、基準を「もとじゅん」と読むことがある。

例えば「鉄棒の練習」を評価する場合、

・逆上がりができるようになる

が評価規準、

•補助板を使わずに逆上がりができた
•補助板を使って逆上がりができた
•補助板を使っても逆上がりができなかった

が評価基準である。

評価規準や評価基準を明確にすることで、評価方法が明確になり、また生徒に評価を返す際にも、生徒自身で自分がどこまで達成できているのかを確認することができるという利点がある。一方で、評価規準や評価基準の設定や判断は教師によるところが大きい。異なる2人の教師が同じ学習場面で同様の指導することを想定した場合、一方は全員が達成できることをねらった評価規準を設定し全員が達成できた、もう一方は7割程度の生徒が達成できるような評価規準を設定し、およそ半分の生徒が達成できなかった、というような状況は十分起こりうる。そのため教師には、評価規準・評価基準の設定方法や、評価の精度についての研修が求められている。


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【教務主任通信(2)】 「障害児教育は教育の原点」といわれるわけを考える

私は大学を卒業した後、養護学校高等部に着任しました。障害児教育の知識もなく、大きな不安を感じながらの教員生活をスタートしました。
その養護学校は「重度重複障害」といわれる最も障害の重い肢体不自由児養護学校で、半数の生徒が衣服の着脱、用便、食事など「全面介助」を必要としました。着任から約半年間、私は「どうしてこの子たちに教育が必要なのだろうか?」と疑問に思い続けていました。

養護学校の研修で必ず教えられたことがあります。「障害児教育は教育の原点」という考えです。
それはいったいどういうことなのでしょうか?
本校には幸いなことに「仲よし学級」がありますのでイメージしやすいと思います。

(1)障害がある故に、一人一人の個性がはっきり分かる。一斉授業はできない。その子に応じた教育を考えていかないとならない。つまり「一人の子に寄り添った教育」が障害児教育である。

(2)生徒のほんのわずかの成長を、まるで宝物を探すかのように見つけようとする教師。私自身も、最重度障害の生徒が、小指をほんの少しだけ動かして私を呼んでいることに気づいた瞬間、初めてコミュニケーションを取ることのできた喜びで感無量になりました。

(3)教科書じたい生徒の実態に合わない。だから教師は年がら年中「教材開発」に明け暮れる。その結果として授業の幅が広がる。

(4)「生きる」ということ、「生命」ということを考えないと、障害児の指導はできない。実はこのことが、通常学級の教育でも、やっと理解されはじめましたね。学習指導要領の「生きる力」ということです。

(5)障害児教育に真剣に取り組むことは、「社会を変える」ことにもつながる。真剣に考えれば考えるほど、私たちは「心やさしい社会」を創造し続けていく使命があると気づかされる。


さて、どうしてこのような記事を出したのかといいますと、「二十四の瞳」運動(本校のOJTです)のひとつとして、仲よし学級の授業を参観させてもらうことをおすすめしたいからです。

教科書を使った通常学級の指導に慣れている教員は、どうしても指導内容に追いかけられ、授業時数に迫られて、大切なことに気づくことのできない危険があると思うのです。仲よし学級で行われていることは、今、目の前にいる一人の子どもの実態から教育を考え、安心できる教育環境の中で心や体を開放してあげ、思う存分に力を発揮させていく。そんな教育だと私は把握しています。

加えて、仲よし学級で行われている教育から感じた何かを、通常学級の担任が自らの振る舞いを通して、こどもたちに伝えることで、きっと全校の子どもたちの新しい「心の宝物」を見つけることができるのではないでしょうか。

教師は最大の教育環境ですから。


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【教務主任通信(1)】 「毎回の授業で必ずおさえたいこと」

学校で毎日発行している「教務主任通信」を共有してほしいという声が私のところへたくさん寄せられています。そこで、公開可能な範囲内でこのブログ記事にしていきます。

この「教務主任通信」はOJT推進のための研修資料として提供させていただいているものです。

********************


授業はできるだけ“美しく”
大河が流れるように、ねらいの達成を目指して、教室にいる全員が粛々と取り組めたらすばらしいと思うのです。

「粛々と」を辞書で調べると、「ひっそりと静まっているさま。おごそかなさま。厳粛なさま。」と出てきます。卒業式や入学式の空気は、まさにこの「粛々と」なのですが、それは日ごろの授業から鍛えに鍛えてこそ生まれるものだと思います。

今年の校内研究は「学習交流」を生み出すためにはどうしたらよいかという切り口で取り組むことになっていますが、こどもたちが挙手もせずに勝手に話したり、授業者の言葉にあげ足を取ったりするような雰囲気を生み出しては学習のルールが崩れ、真面目に学習をしている子たちが目立たなくなり、冷めた態度になっていきます。たとえ素晴らしい意見を言っていても、勝手に発言したものは私語であるという規準を持っていることが必要でしょう。

「学習交流」を生み出すために、ひとつの授業モデルを提案してみます。

(1)ノートには毎回、「日付」「曜日」「学習ページ」を書かせる。

(2)本時のねらいを必ず板書する。(これをしないと授業はブレます。)

(3)授業を始める前に、授業者は「タイムスケジュール」を決めておく。できれば板書する。

(4)ねらい確認(場合によっては教師の教え込み)⇒個人の思考作業⇒全体の学び合い⇒まとめ⇒ふりかえり
   この流れで全ての教科の授業を行う。

(5)単元を指導する前に「評価規準」を確認し、その規準に従って支援をする。

(6)長期的な見通しを立てて、学び合える児童に育てる。
   本当に建設的な意見交換ができる集団になるには、新しい学級になって3カ月は必要だと感じています。

(7)「気づき」の生まれる授業を繰り返していけば、こどもたちは学び合うことを楽しむように成長していきます。


次に、児童をポジティブにする指導方法を示しておきます。

「~~してはダメ」「~~しないように気をつけましょう」「どうして~~なのか」「私語はやめなさい」という禁止言葉は人間や学級集団をネガティブにし、持っている能力を下げていきます。
「~~していこう」「~~ができるクラスにしよう」「脳に汗をかくくらい考えよう」「やってみよう」という行動イメージを促す言葉は、心の制限が自然に外れて、こどもの持てる以上の力を発揮させられるようになります。
「学び合い」もポジティブな集団であれば、男女関係なくコミュニケーションを楽しむようになるでしょう。


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「また、必ず会おう」と誰もが言った 【本のお薦め】

「また、必ず会おう」と誰もが言った。
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サンマーク出版


小学校高学年から高校生までの子どもたちが読んだら参考になる本です。
または親学として思春期の子どもを育てるために読むのも良いと思います。


著者の喜多川さんはこの本によって、

「人間は良い出会いによって、それまで持っていた価値観に影響を受け、未来に向けて新しい生きる力を得ることができる」

そういうことを若者に気づいてほしかったのではないだろうかと感じます。



さらに、この本を大人が読むことによって、若い可能性に満ちた青年たちの伸びようとする芽を、

「邪魔することなく陰から見守っていきましょうよ」

と指摘してくれている感じがします。



ある高校生のあまり素直じゃない行動が、自らを苦境に追い込んでしまう内容なのですが、その失敗が「見ず知らずの人たちとの出会い」によってプラスに転じていく。その結果、その高校生はほんの数日間のうちに、まるでサナギがチョウになるかのように成長していく物語です。


喜多川さんは下記の本も著されていますので、合わせて読むことをお薦めします。
教師を職業にしている方には必読書だと言っておきます。

(小学生向き)
賢者の書(新装版)
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ディスカヴァー・トゥエンティワン


(中高大学生向き)
君と会えたから・・・
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ディスカヴァー・トゥエンティワン


(高校生向き)
手紙屋 蛍雪篇~私の受験勉強を変えた十通の手紙~
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ディスカヴァー・トゥエンティワン


(高校生・大学生向き)
手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~
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ディスカヴァー・トゥエンティワン
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『男子の本懐』・・・関東大震災後の政治状況と東北大震災後の政治状況を比較できる本

男子の本懐 (新潮文庫)
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新潮社


私が大学生時代には先輩から必読書だと言われて学んだ一書です。
東北大震災が起こり、さらに政変が起ころうとしている今だからこそ、再読するために購入しました。

城山三郎氏の本は20代で読んでおくことをお勧めします。男の生き方に大いに刺激を与えてくれる書物が多いのです。

この「男子の本懐」は関東大震災後の政治も経済が混迷している時に、内閣総理大臣になった「浜口雄幸」と、浜口内閣で大蔵大臣を務めた「井上準之助」が主人公の歴史小説です。

「金本位制」こそが長期的に見て日本を向上させていける政策だと信じて、自分の命を内閣総理大臣また大蔵大臣という役目になげうった人生。二人とも反対勢力の凶弾に倒れてしまうという結末を迎えるのですが、一貫して自分の信念に生き切る姿は、平成の世を生きる私たちにも大いに参考になる力強さがあります。

どれだけの批判を受けようが、正しいと確信したことを貫き通すことは青年時代の特権でもあるし、青年だけでなくこの主人公二人のように、60歳を超えた人生総仕上げの時であっても、信念に生きる姿は「青年の息吹」を感じさせるわけです。


下に紹介した本も著名な一書です。あわせてご一読ください。

官僚たちの夏 (新潮文庫)
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新潮社
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先輩ママさんたちからのコメント

辰巳ジャンプ卒業生のことを記事にしましたところ、先輩ママさん方からコメント欄にお言葉をいただきました。せっかくですから表の記事にして、現役辰巳ジャンプの皆さんにも読んでもらおうと思います。


【モンチッチさんより】

ご無沙汰しております。
時々先生のブログを拝見させて頂いておりますが、今日のこの記事を見て、非常に驚き、そしてありがたく思いました。
元男子部員のことも温かく見守って下さっていることに。

T輪高校は毎年関東大会出場は当たり前に思われておりますが、今年は3年生が2人だけで、正直今年は厳しいと思われており、親子共々伝統というプレッシャーに苛まれておりました。しかし、何とか予選突破し、通算34回出場を成し遂げることができました。
今週土曜日の本戦では、相手は強豪チームではありますが、精一杯悔いのない試合をしてくれると信じております。

辰巳ジャンプもこれから楽しみですね。
陰ながら応援しております。
先生は相変わらずご多忙のようですが、くれぐれもお体には気をつけてくださいね。



【なかむらさんより】

井上先生、初めてこちらに書きますね。私も携帯にて書き込みは出来るようになりました。

井上先生の指導で自分に負けない息子になりました。毎日練習で自分の暇もないけど、根っからのバレー好きです。息子も先日形携帯を購入しました。先日のコメントを見せたいと思ってます。高校の監督も人間性にも尊敬し本人も成長しています。
今見てて、とても心に響きました。残念ながら息子は身長が伸びませんでしたが、逆にリベロになって本人の心も身体も鍛えられました。

今年から冬高バレーボールまでありますので直接の連絡先を又お伝えします。このブログの違う記事を見るたびにびっくりと感動しています。辰巳JUMPを影ながら応援してます。





お二人の息子さんたちは、関東大会でもし3回戦まで勝ち上がれば、ベスト8をかけて直接対戦することになっていました。残念ながら両チームともその前に負けてしまいましたが、今後は「インターハイ」「国体」「冬休みにやる春高バレー」に向けて、まだまだ活躍してくれることでしょう。
卒業生がみんな成長してくれて、私としては何よりも嬉しいことです。

また、途中で挫折をしている子がいても、それもまた私の心には「大丈夫、いつか違った道で活躍してくれるはず!」という期待があります。そんな卒業生は、ぜひ辰巳ジャンプのコーチとして戻ってきて下さいね!!!一緒に現役辰巳ジャンプの子どもたちを育てましょうよ!!!


関東大会男子大会の結果へリンク


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「あこがれの先輩」を感じさせてあげたいから・・・

辰巳ジャンプの話題です。

今の現役辰巳ジャンプっ子たちは、直接ふれ合う機会のあった先輩といえば、現中1の「マイ」しか知らないのです。つまり、先輩チームがバレーボールをしている姿を見たことがないのです。ということは、今の辰巳ジャンプは新しいチームを立ち上げたと言ってもいい状態であり、これまで作ってきたチーム伝統の流れという点では、いったん途切れたようなものです。

しかし私は、日曜日に応援に行った卒業生の頑張っている姿に、伝統復活の潮流を感じたのです。

辰巳ジャンプが最も強かった時期の先輩たちは、今、高校バレーの中心メンバーとして活躍しています。その姿を見せてあげ、そして直接交流をさせてあげることで、現役辰巳ジャンプの子どもたちにも「あんなすごい先輩のようになりたい!」という気持ちが沸き起こることでしょう。

そうした「あこがれの気持ち」を感じさせてあげたい。
その気持ちは、厳しい練習にも弱音をはかずに頑張り続けられる意欲につながります。


また、「キャリア教育」の視点から考えても、素晴らしい先輩の姿は、子どもたちの「メンター(良き助言者)」として相応しい。
子どもたちの将来像のひとつとして、具体的な姿を見せてくれます。
「私たちも努力すればあんなふうになれるんだ!」と感じてくれたら嬉しいです。

そんなことを考えて、高校バレーの応援ツアーを組むことにしたわけです。


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マインドマップで作文すらすらワーク (ドラゼミ・ドラネットブックス)
クリエーター情報なし
小学館
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教務主任通信を毎日発行

仕事の話題です。

今年度は教務主任としての仕事を極めることを目標にして行動しています。

そのねらいは3点、

(1)全校レベルで、子どもたちがより良く成長できるように環境を整える。

(2)学校の教職員のみなさんに少しでも役に立つように考えられることをすべてやる

(3)校長、副校長から見て、手の届かない痒いところを搔いてあげるような仕事をする。

この3つのねらいには、具体的なことはまったく入っていませんが、それが良いのだと思っています。なぜなら、抽象度が高いからです。

具体度が高い、そのことに捉われてしまい、応用的な仕事ができなくなります。

抽象度が高いと、そこから放射状に広がっていくスパイダーマンのような発想の糸が、次々に生まれてきて、予想以上の成果を出すことができるのです。




今現在、小さなチャレンジを続けているのが「教務主任通信」です。職員室内限定で先生たちの「プチ研修」になるように発行しています。

今日現在で平成23年度第7号。先週の木曜日からは毎日発行しています。

もちろん校長、副校長の承認を得て発行していますので、数日前にはできあがっている状態です。そんなことで、すでに第16号までは作成済みで、これから職員室に配布する予定です。

自己申告書には「年間30号発行」という目標を設定して提出しましたが、それは6月中に達成できてしまいます。そこで早くも目標の上方修正。年間100号発行していくことにしようと思います。

どんな内容で記事を書いているのかというと、ほとんどは「授業に関すること」です。

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