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ミステリ感想-『幻肢』島田荘司

2014年12月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
交通事故で重傷を負った医大生の糸永遥は、一時的な記憶障害と鬱症状に見舞われた。
治療のためTMS(経頭蓋磁気刺激法)を受けた彼女は、脳のシルヴィウス溝の働きによって恋人・雅人の亡霊を見るようになる。


~感想~
酷いのろけ話を読まされた。
僕は御大のファンというか信者のため、苦笑して棚にしまうだけで済んだが、もし著者が某道尾秀介とかだったらワインドアップモーションからのオーバースローでブン投げていたことは疑いない。
ストーリーについては「友情・努力・勝利」みたいなものなので特に語るべきことはないが、良い所を探せばとりあえず読みやすかった。
たったこれだけの物語にこんなに長いページ数は絶対に必要ないが、例によって饒舌な片方と気のない相槌を打つ片方との形態描写を省いた会話文(それもおよそ2割は繰り返しで内容は単なるのろけ話)で全ページの半分ほどを消化していくので、すいすい読み進められる。
しかし死ぬほどどうでもいいのろけ話と難解な脳科学の話を、きわめて平易に読ませる技術はさすがだが、肝心の物語自体があらすじから想像できるだろう数パターンの結末のうちの1つにすんなり収まってしまうため、起伏も印象も読後感もそこには全くない。

これが御大初の映画化(ちなみに小説版とは遥と雅人の立場が逆転しているらしい。え。結末に無理が生じなくない?)作品、すなわち一般層に最も「島田荘司の作品」として伝わるのだと思うと、「謎解きはディナーのあとで」周りの作品だけ読まれて凡作家扱いされる東川篤哉と同様にやるせない気持ちになるのは避けられない。


14.12.1
評価:★☆ 3
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