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ミステリ感想-『虚ろな十字架』東野圭吾

2014年12月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ペット葬儀社を運営する中原道正は、別れた妻が路上で何者かに刺殺されたと聞かされる。
11年前、幼い娘を強盗犯に殺され、そして今また、なぜ元妻までもが。
フリーライターだった彼女の遺した原稿から、中原は事件の意外な背景へと迫っていく。


~感想~
毎年恒例2時間ドラマで東野圭吾。
東野作品にしては珍しく(?)なかなかのクズが揃っていながら、主要登場人物が出揃った時点で真相におおよその見当がつき、当然のごとくそのまま予想が的中するという裏切りのない展開はやや残念。
死刑制度を題材にしたものの主要な論調2つはともに両極端で、たがいに相容れないのはもちろんのこと、なにか画期的な解釈がなされるでもなく、意表をつく結末が描かれることもない。
なにぶん書いているのが東野圭吾なので、読みづらさや退屈さを感じることはもちろん無いのだが、正直なところ「これを東野圭吾が書く必要はあったのだろうか?」という疑問が終始ついてまわった。主張にも物語にもトリックにも、なんら目新しいところのないこの程度の作品をあの東野圭吾がと。

またここ数年の東野圭吾は、どこがどうと指摘するのは難しいので単純に作風(もしくは空気感)が、としてしまうが、非常に宮部みゆきに似ている。
だがこの物語はおそらく、宮部みゆきならばもっとうまく処理できたろうと思えてならない。全く同じ展開で、全く同じ結末を迎えたとしても、おそらくは。

毎年のミステリシーンの豊作・不作ぶりを示すバロメーターと指摘した東野作品。今年は何位に入るのか、それとも入らないのか。本作に限ってはさすがに無理だと思うが、結果が楽しみである。


14.12.3
評価:★★☆ 5
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