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ミステリ感想-『化石少女』麻耶雄嵩

2014年12月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
名家の子女が通う私立ペルム学園で古生物部の部長を務める神舞まりあ。
廃部を免れるべく目覚ましい実績を挙げようと、校内外で頻発する殺人事件の解決に乗り出したまりあに、古生物部唯一の部員である幼なじみにして従僕の桑島彰は頭を悩ませる。


~感想~
麻耶雄嵩が明確にユーモアミステリ気味の作品を書くのは「闇雲A子と憂鬱刑事」以来だろうか。
脳天気な変人少女に、悩める従僕がいささか毒のありすぎるツッコミを浴びせ、浮世離れした名門校の日常が描かれる、肩の力を抜いて書いたような小粒な短編集で、さりげない伏線の張り方や、事件と古生物に関する知識の絡ませ方、密室状況の崩し方などなどさすがの冴えは見せるものの、この程度は麻耶雄嵩ならば難なくこなせてしまうのは当たり前。
麻耶は近年の短編集では共通して、各短編にある法則を持たせるのを常としており、今回も2編も読めばやはりある法則の存在に気付くし、連作短編集としての仕掛けで別のシリーズを思い出させるなど、麻耶ファン向けサービスといった具合の仕掛けはあるのだが、見どころはせいぜいそのくらいで、毎年のランキングを賑わせる傑作群と比べると、だいぶ落ちる手合いなことは間違いない。
もし別の作家がこれを書いていれば、思い切ったことをしてきたと驚くかもしれないが、禁じ手や掟破りを無数に放ってきた麻耶作品だと構えると、ファンならば読んで決して損はしないものの、やはり少々物足りなかった。


14.12.20
評価:★★★ 6
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