小金沢ライブラリー

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2009~2010年のミステリ遍歴

2021年09月16日 | 雑文
2009年
講談社BOXとはなんだったのか。島田荘司「Classical Fantasy Within」を見るたびに思い出す。
まず講談社BOXはうっすい本を化粧箱に入れることで飛躍的に価格を高騰させただけの装幀で、西尾維新「化物語」のおかげでたぶん爆発的に売れたが、本棚のスペースは取るわ高さが合わなくてそもそも本棚にしまいづらいわで値段以外も良いところがなかった。
そして島田荘司「Classical Fantasy Within」は12ヶ月連続刊行で太平洋戦争→中世ファンタジー→未来都市がストーリーに一見して繋がりがなく描かれるが、終わってみれば本格ミステリとしてまとまるという触れ込みで出たものの、あっさり12ヶ月連続刊行が頓挫するだけならまだしも、8作目で完全に停止してしまい今に至るという有様で、つまり全然本格ミステリとしてまとまっていない。士郎正宗の美麗なイラストと、8作目が単品で優れた本格ミステリだから信者はわりと許してるけどな。
メフィスト賞では望月守宮が「無貌伝シリーズ」でデビュー。自分にはスマッシュヒットしたが世間的には一切話題にならなかったし、シリーズ完結後には音沙汰なく、後のメフィスト賞作家に望月姓を使われたりとたぶん抹殺された。異能力バトルと本格ミステリを融合させ、名探偵にスポットライトを当てた面白い本なので一人でもいいから読んで欲しい。
望月守宮に限らず、この頃に受賞した二郎遊真、赤星香一郎、丸山天寿はあっという間にいなくなってしまった。
清涼院流水(現在)最後のミステリとなった「コズミック・ゼロ」が出たのもこの年か。「コズミックのような作品を」と依頼されてタイトルにコズミックを入れてしまうのは流石である。内容もこれがダメミスだ!と見せつけるようなすごいものだった。
講談社は島田荘司御大に選んでもらいアジアの本格ミステリを何冊か刊行した。2冊読んで「このミス海外版のランキング上位を読んだほうがいいのでは?」と気づいたため追わなかったが、これもあっという間に終わったっけ。
エジプト旅行の懸賞付きミステリの触れ込みで、ふじしろやまと「Rの刻印」が出版されたがこれも酷かった。何が酷いって小説としてミステリとしてつまらなすぎた。ただつまらないだけではなく文章も酷かった。第二弾も無かった。今見たら綾辻・有栖川が推薦してて笑った。
2020年に「medium」で斯界を震撼させた相沢沙呼が鮎川賞を獲得してデビュー。新人潰しとしか思えない難癖つけてるだけの北村薫・山田正紀・笠井潔の選評は今見ても酷い。「この作品はあまりに達者すぎるし、完成されすぎていて、ここに探偵小説の未来を託すのは難しいかもしれない」ってマジでなんだったの山田センセ? 宮部みゆきや京極夏彦はもっと達者だったろ……。
また綾辻行人の新作というだけではないホラーとミステリの融合の大傑作「Another」が話題を呼んだ。


2010年
なぜか清涼院流水「トップラン」シリーズを読んでしまったが感想は控えておく。
道尾秀介が「光媒の花」で地の文で書いた事実を後からあっさり否定して「ミステリを離れて書くことはこんなに自由なのかと感じた」「自分の作品のミステリという側面ばかり取り上げられるのが嫌」とかのたもうたため見限った。自分、道尾を見限った速さには自信あります!
湊かなえも「告白」後はいまいちでこのあたりで切った。以後もランクインはしていない。
麻耶雄嵩は後の月9原作「貴族探偵」を刊行。いや今かえりみても麻耶が月9!? 収録された短編「こうもり」は2000年代最高傑作の一つに数えられるだろう。
西尾維新は完全にラノベに舵を切った「零崎人識の人間関係」を一気に4冊刊行。
七河迦南「アルバトロスは羽ばたかない」が知名度の低さを乗り越えてランクインしたが、そういえばこの人もすっかり見なくなってしまったな…。
東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」がありえないほど馬鹿売れして、本格ミステリが大衆に受け入れられ始めたのもこの辺からだったと思う。ぶっちゃけそこまで出来の良くない本作が大ヒットするのだからわからないものだ。
個人的には島田荘司が写楽の正体を突き止めた「写楽 閉じた国の幻」も面白かった。これも続編を匂わせたけど出ていない。続編でそれ以上に何か書くことがあったとも思えないが。
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2006~2008年のミステリ遍歴

2021年09月15日 | 雑文
2006年
ほうぼうで大傑作という評判を聞いていた連城三紀彦「戻り川心中」に魅了され、連城作品を読み始めた。どこまでも恋愛小説でありながら本格ミステリでもあるという特異な作風に夢中になっていく。
また年間ランキングを意識したことで、新刊を中心に買い、独自のランキング予想を楽しみだした。
2004年に出版された乾くるみ「イニシエーション・ラブ」を読んだのもこの年。10年後にテレビで有田哲平に採り上げられ再ブレイクしたのも記憶に新しい。
その他、竹本健治に「所有者の1割しか読んでない(うろ覚え)」と言われた笠井潔「哲学者の密室」も読んだ。
この頃からネット人口が爆発的に増え始め、新刊の評判が手に入りやすくなったように思う。その一環で道尾秀介と米澤穂信を読んだはず。
綾辻行人は講談社ミステリーランドからまさかの館シリーズ最新作「びっくり館の殺人」をリリースしたが、ぶっちゃけると半分は黒歴史である。


2007年
正月早々にこのミス1位に輝いたがさっぱりミステリじゃない平山夢明「独白するユニバーサル横メルカトル」を読んでトラウマになった。
ネットの評判から柳広司の偉人物を買い、そのまんま東「ビートたけし殺人事件」をブックオフで調達。
スマッシュヒットは三津田信三の「厭魅の如き憑くもの」で、刀城言耶シリーズは全ミステリファン必読。
何よりも横山秀夫を読みだしたのが大きい。当時よく見ていた書評サイト(※現在は消滅)がさんざんにこき下ろしていたので出遅れたが、読んでびっくり最高の作家だった。評論家か誰かが「ここ十年で一番の発掘は横山秀夫」と京極夏彦もいるのに言っていたが、心から同意できる。
横山秀夫がこんだけ面白かったならと刑事小説にも手を出し始め、大沢在昌「新宿鮫」や佐々木譲「制服捜査」も読んだ。
この年、宝島社が「バカミスじゃない!?」を刊行し、一層バカミスが広く認知された。前からバカミスに分類されていた霞流一、鳥飼否宇も当然ながら寄稿し、実力をまざまざと見せつけた。
後押ししたのが倉阪鬼一郎で、ここから数年にわたり講談社ノベルスでバカミス新作を書き下ろす。いずれ劣らぬ狂気の沙汰なのでぜひ一読を。
また数年前から名前と高評価だけ聞いていた伝説的作品の中西智明「消失!」も講談社ノベルスから復刊された。これもすごかった。


2008年
辻真先がなぜか覆面作家の牧薩次名義で「完全恋愛」を刊行し話題に。はなから正体はバラされていて本当にあれはなんだったのか。当時は御年76歳にして最高傑作と驚かれたが、2020年にも88歳でこのミス・文春の二冠を制したのだから恐ろしい。
島田荘司御大の肝いりで「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」が発足。以降も毎年地味ながら優れた本格ミステリ作家を輩出している。
読者=犯人という変化球(というか禁じ手)のイロモノ「ウルチモ・トルッコ」でデビューした深水黎一郎が作風をガラッと変えた「芸術シリーズ」を刊行し始めた。あのデビュー作はなんだったのだろうとこちらも思わせたが、後年の作品では「ウルチモ・トルッコ」どころではない魔球をいくつも放っている。
ミステリ外では理由は忘れたがなぜか直木賞作品の桜庭一樹「私の男」を読んだのだが、これがもう(※個人的には)ゴミ中のゴミで改めて純文学は自分の人生に必要がないという思いを強くした。
いやもう本当に「直木賞という肩書を冠した、実父が幼女にク●ニするという小説」ってなんなの?
同様に筒井康隆「ロートレック荘事件」も筒井ファンの普段はミステリを読まない連中が「空前絶後」「これはミステリではない」裏表紙でも「推理小説史上初のトリック」「前人未到」「メタミステリ」と持ち上げていたが、読んでみたら「例のトリック」で引っくり返った。お前らはもっとミステリを読め。
他に泡坂妻夫「生者と死者」の未使用品をブックオフで発掘。これはページがあちこち糊で閉じられていて、そのまま読むと短編だが、切り開くと長編の一部として取り込まれてしまうという意欲作だった。今でも未使用品を持っている。
私的ベスト1の辻村深月「凍りのくじら」を読んだのもこの年か。ドラえもんファンは必読。
日本一エロいミステリの愛川晶「六月六日生まれの天使」もぜひ。
このミスはなんだかんだでミステリ史に残るだろう伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」、湊かなえ「告白」が上位に入った。
また初野晴が後の「ハルチカシリーズ」第一作「退出ゲーム」を刊行。この一冊だけでアニメ化やヒットを確信し、5年以内に絶対売れると言い続けたものである。今となってはLGBTやらなんやらで続けづらいんだろなあ…。
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2003~2005年のミステリ遍歴

2021年09月14日 | 雑文
2003年
メフィスト賞を最年少の19歳で受賞した浦賀和宏にはまる。デビューしたのは数年前だが、読んだのは前年末から。全作品を読むことになるとは思わなんだ。
しかしこの年最大の衝撃は西尾維新だ。あっという間に時代の寵児になった維新ははじめメフィスト賞でデビューしミステリを書いてたのだ。毎月刊行するような驚異的なペースと、当時はまだ一般に浸透していなかったライトノベルが流行り出したのもこの頃だろう。(MF文庫Jの創刊が2002年7月)
同時期に親父がはまったきっかけで日本最強作家の一人である宮部みゆきにもはまる。維新・宮部のおかげで本格だけではないミステリの面白さを味わえたのかも知れない。
本格ミステリ大賞が設立され前年の倉知淳「壺中の天国」が受賞。もう20年近く続いているが、大賞とノミネート作品は本格ファンなら読んでおいて損のない質を保ち続けている。
また講談社ミステリーランドは「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」をコンセプトに、絵本のような装幀と挿絵や子供向けの平易な文章が用いられ、数多くのミステリ作家が普段は書かないジュヴナイルに挑戦した。結局1冊目に出た小野不由美「くらのかみ」が完璧で、それを超えるものは出なかったが、レーベルを逆手に取った麻耶雄嵩「神様ゲーム」などちょくちょく話題作はあった。
この年を代表するのは歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」だろう。初心者におすすめできる作品を10冊選べと言われれば真っ先に候補に上がる。
昭和ミステリでは都筑道夫「退職刑事シリーズ」を読み始め、良い評判を聞いた大阪圭吉「とむらい機関車」・「銀座幽霊」を読んだ。


2004年
個人的にはこの年に初めてのホームページを作り、これまで書き溜めていたミステリ感想をネットに公開した。
しかしネット大喜利に夢中で、ネットの交友はそちらばかり広がった。
ブログの感想を見るとこの年の8月9日に多数の本を読んだことになっているが、PCを持っていない2000年以前に読んだり、メモの紛失で読了日を把握していないものを、ネットに公開した8月9日にまとめて放り込んだだけである。時系列の矛盾とかではないのであしからず。
綾辻行人は館シリーズ最新作「暗黒館の殺人」をついにリリースした。


2005年
この年はネット大喜利に夢中でろくに本を読んでいない。
西尾維新はあっという間に戯言シリーズを完結させ、この後はラノベ中心へ舵を切っていく。そっちでも「化物語」をすぐ出したのだからとんでもない。
メフィスト賞は後の直木賞作家・辻村深月と、個人的に大好きなダメミス王・矢野龍王を輩出する両極端な年だった。
この頃に中町信の「天啓の殺意」等がタイトルを変えて復刻されて評判を呼び、しかも折原一と同じく絶対に叙述トリックを使うと聞いて読み始めた。
そして2005年といえばあの東野圭吾「容疑者Xの献身」をめぐる騒動だ。
五冠を達成した本作へ某二階堂黎人を中心に「本格ミステリではない」と噛み付いた件である。
あれだけ議論されて結局「本格ミステリとはなにか?」が全く定義されなかったくらい実に不毛な議論だったので、さわりだけ触れておく。
思えばこれかもしくは五冠達成をきっかけに年間ランキングのこのミス、文春、本ミスや本格ミステリ大賞を明確に意識して本を選ぶようになったのだと思う。
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2000~2002年のミステリ遍歴

2021年09月13日 | 雑文
昨年に引き続きメフィスト賞作家を読んでいる。高田崇史や積木鏡介、殊能将之らがデビューした。
創元推理文庫を知ったのもこの頃だろう。なんせ名前に「推理」が入っている。北村薫こそ全くはまらなかったが、このレーベルから出ているだけで一定以上の信頼感があった。
森博嗣はペースこそ3ヶ月おきに落ちたものの「Vシリーズ」を連載している。「S&Mシリーズ」ほど話題にならないが質は全然劣っていない。このへんから犯人に動機が無くなってきたけど。

鮎川哲也の影響で昭和ミステリを読みたいと思い、目をつけたのが泡坂妻夫と天藤真だった。
泡坂はまず「亜愛一郎シリーズ」を、天藤真は「遠きに目ありて」を読んだ。振り返ればこれが大正解で、作者の短編集の最高傑作といえる代物にいきなり出会えたのだから運がいい。昭和ミステリのち力をまざまざと見せつけられた。

ミステリ界のトピックスとして、島田荘司御大が「御手洗パロディ・サイト事件」を出したのにも触れておこう。
これはプロ・アマ混合の御手洗物の同人作品集を御大が御手洗シリーズの一つとして無理くりまとめ上げたもので、これを普通の出版社が商業作品として出してしまったのだからすごい。こんな試みは空前絶後では?
一方で信じられないほど誤植が多く(もしや同人作品は修正しなかったのか?)胡散臭さも半端なかった。

その他、創元推理文庫からの経由で倉知淳や加納朋子も読み、乱歩の傑作選「江戸川乱歩集」も読んだ。


2001年
タイミングよく天藤真の短編全集の刊行が創元推理文庫で始まった。本当に粒ぞろいなのでぜひ読んで欲しい。
昨年から引き続き泡坂妻夫の短編集をブックオフで買い集めたが、驚異的な高打率でどれもこれも面白かった。
創元推理文庫きっかけで折原一にもはまった。絶対に叙述トリックが使われるという情報を得たのも大きい。
短編ばかり読んでいた泡坂妻夫の長編に手を出したのもこの年。長編でも全く切れ味は衰えていない。
一番最初に読んだ綾辻行人が「どんどん橋、落ちた」を出したのもこの年だった。ある意味でいまだにこれを超える短編集は出ていない。


2002年
メフィスト賞に対抗し(?)光文社がカッパワンを開始。すぐ終わったけども石持浅海と東川篤哉を世に送り出した功績は素晴らしい。
対抗するように(?)講談社は袋とじが必ずある密室本を企画。遊び心は買うがただ値段がつり上がっただけで、袋とじを活かせた作家は皆無だった。
メフィスト賞ではダメミス一歩手前の石崎幸二が自分には刺さった。殊能将之が一気に評価を高めたのもこの頃か。すぐ実質的に断筆してしまったが。
後に戦争小説で名を博す古処誠二や黒田研二もデビューしたが、なんといっても舞城王太郎の存在が際立つ。清涼院流水のようなキワモノかと思ったらあれよあれよと文学界を席巻してしまった。
また文藝春秋が高級そうな装丁の本格ミステリ・マスターズを開始。第一弾として島田荘司「魔神の遊戯」が出版された。なんやかやでこのレーベルは優れた本格ミステリを多数輩出したと思う。
この頃に鮎川哲也賞や、このミス・文春ランキングの存在を認識しただろうか。
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1999年のミステリ遍歴

2021年09月12日 | 雑文
森博嗣との出会いが自分の運命を変えたと言ったが、それは2つのキーワードが関わっている。
メフィスト賞と講談社ノベルスだ。
森博嗣のデビュー作「すべてがFになる」は記念すべき第1回メフィスト賞の受賞作で、講談社ノベルスから出版された。森博嗣にがっちり心をつかまれ、メフィスト賞と講談社ノベルス作品にはまっていった。
そして当然アレに出会ってしまう。清涼院流水だ。

第2回メフィスト賞を制した清涼院流水の「コズミック」とシリーズ第二作「ジョーカー」はすごかった。
ネットの普及し始めで数も多くなかった感想でさえ「一枚ずつちぎって便所に流した」とか「一枚ずつ焼いた」とか書かれており、わくわくしながら読んだらそれも普通に納得するとんでもない内容だった。
しかし不思議な魅力も備えていて、自分はますますメフィスト賞及び講談社ノベルスにはまってしまった。ミステリは何をしてもいいという想像を絶する懐の深さが垣間見られ、新たな世界への扉が開いた。

新本格派の法月綸太郎、芦辺拓、麻耶雄嵩もこのあたりで読みだした。そしていいタイミングでとある傑作選が出版された。
鮎川哲也「五つの時計」と「下り、はつかり」だ。
島田荘司曰く「江戸川乱歩亡き後に本格ミステリを一人で守った鮎川哲也」である。今見ればオーバー過ぎる表現なのだが、それで名前を知りいつか鮎川哲也も読みたいと思っていたところに傑作選(それもお求めやすい文庫で)の出版である。これがもうすごかった。簡潔な記述とシンプルなトリックで作り出された不可能状況や密室の数々にメロメロになった。
すでに百冊以上のミステリを読んできて「パターンわかってきたよ!」と厚切りジェイソンみたいに思っていたところにこれである。パターンなんて無かった。ミステリの裾野はお前が測り知れるものではないと思い知らされた。こんな傑作がごろごろしているなら昭和ミステリも読まなければと強く感じた。

この頃から通い始めたブックオフで島田荘司の旧作を買いあさる一方、もう一つの出会いがメフィスト賞・講談社ノベルス方面からもたらされた。京極夏彦だ。
あの妖怪が描かれたおどろおどろしいクソ分厚い本はどうやらミステリらしいという情報を得て、思い切って買った。その後はもう説明不要だろう。あの頃、京極夏彦は紛れもなく全作家の頂点に立っていた。

この年は新本格派の作品を中心に読んだ。講談社ノベルスを手当たり次第に読んだので蘇部健一「六枚のとんかつ」や霧舎巧「ドッペルゲンガー宮」とかにもぶつかった。清涼院流水はカーニバルシリーズを完結させた。あれもあれでとんでもないのに、長すぎて(?)コズミック・ジョーカーほど評価も知名度も無いのは残念である。
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ミステリ遍歴 序文

2021年09月11日 | 雑文
昨年、自分が三国志にはまっていった経緯を書いたので、今度は本格ミステリにはまった経緯を書いて行こう。
ミステリ初心者には参考になるかも知れない。またミステリ界のトピックスも覚えているものは記す。

初めて読んだ本格ミステリは、綾辻行人「迷路館の殺人」である。
本屋で初心者向けっぽいものを適当に見繕ったのだが、これが館シリーズ三作目で、しかもシリーズファンに向けたあるトリックが仕掛けられており「シリーズ物は順番に読むべし」という鉄則が心に刻まれたのは、いま振り返れば幸いである。
そして本作のメイントリックがアレだったことで、アレ系トリックが大好物になるきっかけでもあった。ヒヨコが孵化して最初に見たものを親と思い込むのと同じ原理だ。

その後は当然、館シリーズを一作目から読んでいった。(当時は6作目まで出ていた)
そして(たぶん)島田荘司の解説から作者の綾辻行人が「新本格派」と呼ばれるグループに含まれていることを知り、新本格派の作品を読んでいくことになる。
まず読んだのはゲーム「かまいたちの夜」の作者でもある我孫子武丸の「8の殺人」だ。速水三兄妹シリーズ(3作で終了)の他2作も読んだ。
有栖川有栖の国名シリーズも読んだ。初めて触れた短編集はこれだったと思う。4作目まで出ていた。

そして次に出会った作品が運命を変える。森博嗣の「S&Mシリーズ」である。
おしゃれな装丁と理系ミステリという魅力的なワード。これまで読んできたガチガチの本格ミステリとはちょっと違う雰囲気に惹かれ、現在進行系で作品を出し続けている新人作家も読みたいという欲求が噛み合った。
当時の森博嗣は2ヶ月おきに新作を出す超人的ペースで、しかもどれも質が高かった。現代ならキャラ萌えとでも言うのだろう、人物造型の面白さと、何よりまだ評価の定着していない、旬の作品を読んでいるという感覚も楽しかった。
また後年にミステリに素養のない姉に勧めたが見事にはまってくれたし、森博嗣は初心者向けの可能性が高い。

新本格派も読み進める。とっつきやすいシリーズ物から手を出し、歌野晶午の家シリーズ(3作で終了)や二階堂黎人の蘭子シリーズを読んだ。山口雅也の「生ける屍の死」がちょうどこの頃(1997年)に本格ミステリ・ベスト100で1位に選ばれたのを書店で知って読んだのも覚えている。
西澤保彦が革新的なSFミステリを連続で出していたのもこの頃だ。今となってはだいぶ知名度が下がってしまったし、SFミステリ自体を書かなくなってしまったが、あれは必読である。近年「SFとミステリは共存できるか?」とか議論するスレが立つも西澤を読んでる奴が一人もいなくておじさんは悲しい。

島田荘司を読み始めたのもこの頃だ。綾辻ら新本格派の師匠格と聞き、御手洗潔シリーズを中心に読んだ。
ものすごい数の作品がすでに出ていたがどれもこれも面白かった。島田荘司は今や「ゴッド・オブ・ミステリ」とまで呼ばれている。視覚的にわかりやすいトリックも多く、御手洗のキャラも魅力的でとっつきやすいので初心者向けでもあるだろう。

長くなってきたので今後は時系列で書いていく。
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昨年8/19のNXT #577  強烈過ぎるリップタイド

2021年09月10日 | 今週のNXT
NXT北米王座挑戦権争奪戦セカンドチャンス
ジョニー・ガルガノ ◯-× リッジ・ホランド
(ワンファイナルビート)

デクスター・ルミスが負傷欠場となり、挑戦者枠が2つ空いたため、予選敗退したガルガノら4人にセカンドチャンスが与えられた。
ガルガノは腕狙いも功を奏さず、パワースラムで脳天から落とされと大苦戦するが、リングインしようとするホランドの足をキャンディス・レラエが果敢につかむ。ガルガノはすかさずまたいだロープを蹴りつけるローブローでひるませ、ワンファイナルビートを決めて妻の献身で勝ちを拾った。


ジェシー・カミーア ×-◯ ダコタ・カイ
(GTK)

ダコタはジェシーに一瞬反撃を許したが、危なげなく勝利した。

特番で挑戦する女子王者の紫雷イオを挑発していると、ご本人登場され関西弁で罵られながら攻撃されるが、ラクエル・ゴンザレスが駆けつけイオを叩きのめしてしまった。


ブリーザンゴ(タイラー・ブリーズ&ファンダンゴ)&アイザイア・スコット ×-◯ レガード・デル・ファンタズマ(サントス・エスコバー&ラウル・メンドーサ&ホアキン・ワイルド)
(ファントムドライバー)

特に因縁のないスコットがJMLドライバーをエスコバーに決めるが、レフェリーは対戦権はぶつかった時にタイラー・ブリーズに移ったと主張しカウントせず。スコットはメンドーサとワイルドのツープラトンで片付けられ、ブリーズもファントムドライバーで仕留められた。


・アダム・コールとパット・マカフィーが対面

アンディスピューテッド・エラの4人と取り巻き3人を連れたマカフィーが対面。コールは制止しようとするスタッフを蹴散らし、特番での対戦が決まった。


リア・リプリー&ショッツィ・ブラックハート ◯-× アリーヤ&メルセデス・マルティネス
(ダイビングセントーン)

リアは自陣近くでアリーヤにリップタイドを浴びせ、ショッツィにとどめを刺させようとする。ロバート・ストーンがレフェリーを引きつけ、メルセデスがショッツィを足止めするが、リアに捕まりメルセデスは場外フェンスを超えてパワーボムで投棄される。リップタイドを受けてから1分近く経っていたがアリーヤは全然立ち上がれず、そのままショッツィにとどめを刺された。リップタイドの威力が強烈過ぎる。


NXT北米王座挑戦権争奪戦セカンドチャンス
フィン・ベイラー ×-◯ ベルベティーン・ドリーム
(パープル・レインメーカー)

ベルベティーンはサングラスと帽子を着けたまま試合に臨み、フィンに順々に捨てられる。
終盤、キャメロン・グライムスが現れ北米王座ベルトを勝手に持ち出し、リングサイドのハシゴの上で観戦する。フィンがたびたび気を取られていると、ガルガノがハシゴを倒し、リングに落下したグライムスはレフェリーを巻き込んでしまう。
さらにブロンソン・リード、ダミアン・プリーストも現れ乱闘となり、フィンはベルトを拾って喜ぶベルベティーンを一蹴したが、何も関係ないティモシー・サッチャーがフィンを襲撃。
リングに放り込まれ、ベルベティーンにフォールされてしまった。
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ミステリ感想-『機龍警察 白骨街道』月村了衛

2021年09月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
軍事機密を盗み、ミャンマー政府に逮捕された日本人男性の引き取りに、姿ら突入班の3人が指名される。
それは事実上、3人の死を目的とする「敵」の陰謀だった。
インパール作戦の犠牲となった日本兵が眠る「白骨街道」へ突入班は向かう。
機龍警察シリーズ第6弾。


~感想~
前作「狼眼殺手」はシリーズ初のロボットバトル無しという異例の展開だったが、本作も早々に突入班が龍騎兵から離され遠くミャンマーへと出向させられてしまうが、心配は無用。前作で休んだ分、二作分の激しいロボットバトルが繰り広げられる。
もっと熱いのは白兵戦で、突入班の3人がパーティーを組み同じ戦場でサバイバルするのだからたまらない。特に死神の異名を取るライザの無双ぶりは期待以上のものとなるだろう。
当然このシリーズがそれだけで留まるはずはなく、日本国内では「敵」の正体を探るべく警察の地道な調査が行われ、大きな陰謀へと巻き込まれていく。それに加えてあるミステリ的な展開や仕掛けがいくつも絡んでくるのだからすさまじい。
いつもながらの、と言ってしまえるのが本当に空恐ろしい、いつもながらのSF・ロボットバトル・警察捜査にさらに白兵戦・サバイバル・陰謀を上乗せした贅沢な最新作だった。

ところで特に具体的な年代を示す描写が無かった(と思う)ため舞台を近未来と思っていたが、年代自体は現実世界と同じで、科学技術だけが数十年先を行っている、ちょっと珍しい趣向だと今さらながらに気づいた。(※長いこと読んでるので今さら思い出しただけかもしれない)


21.9.7
評価:★★★★ 8
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昨年8/12のNXT #576  ハンドパワーです

2021年09月08日 | 今週のNXT
ダニー・バーチ ×-◯ カリオン・クロス
(スリーパーホールド)

バーチはゴング前に奇襲を仕掛け、なぜか普通に試合が始まる。
正面から戦いを挑み善戦するが、サイトースープレックス(バックドロップ)2発で沈黙し、スリーパーホールドで失神させられた。

試合後、キース・リーが現れNXT王座戦の調印書をクロスに渡す。サインしスカーレット経由で戻ってきたそれを開くと、なぜか炎が上がり、リーは顔を焼かれてしまった。


ドレイク・マーベリック △-△ キリアン・デイン
(アンディスピューテッド・エラの乱入によりノーコンテスト)

マーベリックが空中技を立て続けに決めたが、アンディスピューテッド・エラが乱入して二人を襲い、試合をブチ壊してしまった。


タイラー・ブリーズ ×-◯ サントス・エスコバー
(ファントムドライバー)

先週ファンダンゴを拉致られたブリーズは怒り心頭でイケメンムーブを封印。打撃を連発で決めるが、レガード・デル・ファンタズマの二人が牽制した隙に必殺技で仕留められた。

ファンダンゴが腕を吊り、松葉杖を突いて駆けつけるがもちろん返り討ちにされたものの、アイザイア・スコットがブリーザンゴを救出した。


ミア・イム ◯-× インディ・ハートウェル
(サブミッション)

インディはパワーで優位に立つがビンタでミアを怒らせ、クルックヘッドシザーズから腕をひねり上げる新サブミッションでタップした。


ブロンソン・リード ◯-× ダミアン・プリースト
(ジャックナイフフォール)

すでに北米王座戦へ駒を進めている二人の対決。波に乗るリードはプリーストの飛び技を受け止めてパワースラムで落とし、スプラッシュを狙うが、プリーストは転がって回避。逃げ切れず両足が背中に命中していたが不思議とダメージは浅く、プリーストは必殺のローリングカッターに捕らえたが、リードは体勢を崩してまさかのジャックナイフフォールで丸め込んだ。


ケイシー・カタンザーロ&ケイデン・カーター ×-◯ アリーヤ&メルセデス・マルティネス
(シュバイン)

メルセデスが序盤で受けたハリケーンラナを2発目は見切って、シュバインに切り返しケイシーをフォールした。
前半で出たメルセデスのリバースパワーボムにアリーヤのダイヤモンドカッターを合わせるツープラトンの時、アリーヤがカメラにアピールせずちゃんとカットを封じていたら普通に試合が終わっていたと思う。

それはともかくリア・リプリーがメルセデスへの報復に現れ、アリーヤのナイスアシストで返り討ちにされかけたが、ショッツィ・ブラックハートが駆けつけ救出した。


NXT北米王座挑戦権争奪3ウェイ戦
× KUSHIDA ◯ キャメロン・グライムス ベルベティーン・ドリーム
(ケイヴイン)

直前まで伏せられていた3人目はベルベティーンだったが、最も躍動したのはKUSHIDA。二人をまとめて翻弄し、試合を支配し続けた。
パープル・レインメーカーを受け止め、腕ひしぎからホバーボードロックへ移行し、デスバレーボムもホバーボードロックへ切り返したが、それをグライムスがケイヴインで踏み潰し、ベルベティーンを場外へ落としてKUSHIDAをフォールした。

ベルベティーンは腹いせにKUSHIDAを襲い、勝ち誇った。
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昨年8/5のNXT #575  パット・マカフィー登場

2021年09月05日 | 今週のNXT
NXT女子王座挑戦権争奪戦
リア・リプリー ×-◯ ダコタ・カイ
(メルセデス・マルティネスが襲撃→スパイクGTK)

胸へのビンタで挑発されたリアは激怒し、圧倒的にダコタを攻め続ける。
肩車から前方のエプロンへシャレにならない勢いで叩きつける荒業も喰らわせるが、かえってダコタは目を覚まし反撃する。
非常に手が合い大激戦となるが、最後はメルセデス・マルティネスがレフェリーの目を盗んでリアを襲い、すかさずダコタがトップロープにリアの足を掛けてのスパイクGTKでとどめを刺した。

メルセデスは試合後もリアを襲い流血させた。


ブロンソン・リード ◯-× シェイン・ソーン
(スプラッシュ)

一軍昇格を無かったことにされたソーンがNXTに復帰。頭角を現しつつあるリードに正面からしばき合いを挑み互角に戦うが、デスバレーボムからのスプラッシュで押し潰された。


NXT北米王座挑戦権争奪3ウェイ戦
◯ ダミアン・プリースト × オニー・ローキャン リッジ・ホランド
(ローリングカッター)

一昨年にデビューしたルーク・メンジーズがリッジ・ホランドに改名し、NXT UKで再調整したうえで復帰。
大柄なプリーストを軽々と何度も放り投げパワーをアピールした。
三人の中ではローキャンが激しい打撃と身軽な空中技で目立ったが、最後はプリーストがホランドをチョークボム、ローキャンをローリングカッターで仕留め、王座戦へ駒を進めた。


キース・リー ◯-× キャメロン・グライムス
(ライガーボム)

グライムスは的確なカウンターで対抗するが、ケイヴインを受け止められたのが運の尽き、ショートレンジラリアットで繰り返しなぎ倒され、とんでもない高角度のライガーボムで沈められた。


・レガード・デル・ファンタズマの公開処刑

外を歩いていたブリーザンゴがレガード・デル・ファンタズマに襲われ、ファンダンゴが車で拉致された。
ファンタズマはファンダンゴをリングに連れ出しリンチし、駆けつけたタイラー・ブリーズも返り討ちにした。


ティーガン・ノックス ◯-× インディ・ハートウェル
(シャイニングウィザード)

解説には元NFL選手で現役時代のシーズンオフにはコメディアンもしていたというパット・マカフィーが加わる。
前回アリーヤの乱入で初勝利をあげたインディだが、わりと普通にティーガンに負けた。


NXTタッグ王座戦
インペリウム(ファビアン・アイクナー&マーセル・バーセル) ◯-× アンディスピューテッド・エラ(カイル・オライリー&ボビー・フィッシュ)
(パワーボム+フライング・ヨーロピアン・アッパーカット)防衛成功

あごひげを伸ばしてきたオライリーがフィッシュと交代すると、インペリウムを二人まとめて料理し、バーセルの脚を集中攻撃する。
だがセコンドについていたアダム・コールがマカフィーと口論になり、それに気を取られた隙にフィッシュがツープラトンからバーセルにフォールされてしまった。

オライリーに勝るとも劣らないあごひげを見せつけるようにHHHが出てきて仲裁したが、マカフィーは制止を振り切ってコールを蹴りつけてしまった。
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