自らの第一秘書が逮捕され、それを受けて小沢一郎民主党党首が続投の記者会見を行った。少し驚いたのは、剛腕と称された小沢一郎が、涙を見せたことである。この男も、所詮世襲議員でしかないのか、おぼちゃまの本性を公衆の面前で見せたことには、少々驚かされた。
小沢一郎は、27歳で初当選してから25年ほどを自民党で過ごしている。それも、田中角栄の寵愛を受けて若くして要職を歴任した。とりわけ、幹事長時代には、金丸信のバックもあったが若くして総裁の選出の主導権を握っていた。湾岸戦争では、ポンと40億ドルもの金をアメリカに献上したりもした。東京都知事選で剛腕が通じず辞任した。
自民党離党後は、93年新生党、96年新進党、98年自由党と今はすでにない政党を作っては壊す繰り返しをやって来た。壊す度に政党は小さくなり、政権から遠ざかることになった。03年に綱領をうのみにされた、民主党への吸収合併は、小沢にとって屈辱であったに違いない。
それを救ったのが、当時の党首管直人の年金未払い時期の発覚である。これで後を継ぐことになった小沢一郎は、この5年で大きく変貌していることを印象付けた。更に、小沢の政権奪回への意欲に火を付けたのが、3年前の参議院選挙の大勝である。その後のおぼちゃま3人衆の総理の迷走が、この男を甦らせた。
何度も下野した小沢にとって、政権奪回が現実味を帯びてきた。安部晋三、福田康夫の政権投げ出す無責任さは、こうした経歴を持つ小沢にとって耐え難いものであったであろうことは、推測に難くない。その後の、先読みのできない無教養な麻生太郎の登場は組みしやすいと見たのであろう。小沢にとって、前代未聞の秘書の不実記載などで、降りるわけにはいかない。企業献金をとり止めても良い、などと言いだす変貌ぶりである。
小沢の政権への執念は、並大抵のものではない。年齢的に見ても、今が最後のチャンスである。これまでなら、ポイと投げ出してしまう小沢がいない。今投げ出すことは、政治家小沢一郎の投了を意味するからである。
クリーンなイメージを国民に示していた民主党は、いずれの日にか角栄の影をもつ剛腕小沢を、見放さなければならない日がくるに違いない。それが、政権奪取し一定期間政権を担った後なのか、今回の選挙後の政界再編時なのか、あるいは今なのかわ解らない。小沢自身が悩んでいることであろう。
このままでは、選挙前に投げ出すことになりかねない。それは同時に、政治家小沢一郎の投了と、この程度のことで麻生支持が20%にもなることから見ると、自民党の復活をも意味することにもなるのである。