世界最大の少数民族、クルド人は3000万人ほどいる。これで少数民族と言えるかどうかわからないが、トルコ領内に1500万人、イラクには400万人ほどいる。イラクでは自治区を形成している。トルコでは、独立を主張する政党などが存在感を示している。
十字軍を追い払った英雄サラディンはクルド人と言われている。国境をもたず部族中心の社会を形成していたアラブ地域の人たちにとって、国家や民主主義はキリスト国家の生産物との認識が強い。
アラビア半島からエジプトまで支配していた、オスマントルコが第1次世界大戦で敗北したことによってこの地域を、イギリス、フランス、ロシアで分捕り合いをやった。三枚舌との悪名高い、1916年のサイクス・ピコ条約である。北はロシア、中ほどはフランス南はイギリスが統治した。(右図参照ください)
後にイスラエルとなる地域は、相互の話し合いの地域とされている。ユダヤのシオニストには国家形成を容認し、アラブには認めないとしている。その経緯に反対したのが、アラブの独立のために戦った、アラビアのロレンスとして知られるT・Hロレンスである。映画などは脚色されているが、アラブを反オスマンとして戦わせたのは、イギリスの思惑通りである。利用されたロレンスは今ではアラブの英雄でもない。
もうひとつ大きな問題になったのが、イギリスに非協力的だったクルド人の存在を認めなかったことである。その結果、クルド人は四国にまたがる民族となって、現在に至っている。
もう一つのこの地域の不幸な出来事は、その後石油が産出されたことである。利権と民族間の対立、宗教紛争が今日に至っている。その元凶を作ったのは、ヨーロッパ諸国である。フセインのクエート侵攻も一つの理由がある。
オバマは、イラクからの撤退を表明している。アメリカの侵攻で最も恩恵を受けたクルド人たちは、その時のために着々と地盤を固めている。油田の利権をとり政治構造を整備している。もちろん独立を志向している。イラクの自治区が安定しているので、トルコの方も治まっている。
彼らは最早、イラクに戻る意思はないと思われる。トルコやイラン、シリアも現状を容認することになる。アメリカの撤退によるもっとも大きな不安材料は、クルド問題である。これまで言葉の人だった、オバマのハネムーンは終わり試練になるものと思われる。