14日に海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」と「さみだれ」が、ソマリア沖に海賊退治に出かけた。日本の商船を海賊から守るという、もっともらしい理由は用意されている。経済対策などで、もたもたする麻生首相が、珍しく素早く動いた。中国が護衛艦を出すのに「負けていられるか」と言うのが、彼の決断を早めたようである。
海賊が、ドクロ旗を掲げているわけでもない。25年以上も続く、ソマリアの無政府状態が生み出した産物である。武力勢力が海に強い漁民をそそのかし、武器を渡して儲け話を持ち込んだのである。物を盗まなくても、身代金など見返りは計り知れないほどある。海賊は悪者である以前に、治安を維持できない国家が生み出した一般人である。
このソマリア沖には、米、露、EU、中国、インドが艦船を送っている。ここに、拘束権もなければ攻撃権も持たない日本の自衛隊が行くこと自体意味がない。日本は、武力をもつ国家と同じころをやるのではなく、ソマリアの政局安定と食糧援助などの働きかけをするべきなのである。
武力による威圧は、ハエ叩きのような行為である。ハエの発生に対応するのが、平和憲法をもつ日本らしい仕事である。
「取り急ぎ」の対応であると、政府の説明である。つまり、こうした行為そのものを、政府が法的に無理があることを認識しているのである。自衛隊法82条は公海上の警備行動を想定していない。そもそも。一月もかけて出かけなければならない地域など、自衛隊による自衛権の範囲を逸脱している。
そのことを最もよく解っているのが、他ならぬ自民党である。取り急ぎの派遣をやっておいて、「海賊新法」を作るそうである。これに最も困っているのが、民主党である。海賊法は勿論のこと、シーレーン防御を打ち出しているグループがいる。他方で自衛隊海外派遣に反対の勢力もある。
海賊法は、自民党が民主党に突きつけた「踏み絵」である。民主党は最も触れたくないところを、あからさまにされたのである。インド洋上での給油についても、政局がらみにされて民主党の賛成派は黙っていただけである。
民主党ははっきりと、派兵そのものが憲法違反であると明言して欲しいものである。たとえ、これを乗り切ったとしても、いずれ民主党は分裂の火種になることは間違いない。久しぶりに、麻生ボッチャマが放ったヒットと言える。