そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

新自由主義の破綻

2009-03-16 | 政治と金

Photo_3 小泉改革の一翼を担った反省から、中谷巌が自らの懺悔の書と言ってはばからない「資本主義はなぜ自壊したか」集英社刊、を著した。中谷はいわば、高度成長を経済学者として、支えた論客でもあった。その中谷が、膨大に膨らんだ資本主義をサイバー資本主義と呼ぶ。

市場経済、市場原理主義は多くの矛盾を抱えている。必要な物の価格と量は市場が決定するといのが、新自由主義の考え方である。政府は小さくして、規制を緩和する。自由競争こそが市場経済を支える。市場経済は人の幸福に機能するといのである。

ソビエトの崩壊で、一人勝ちになったアメリカは膨張し続ける。グローバル資本主義はアメリカに多大な恩恵をもたらした。日本も同様である。しかし、恩恵をもたらしたのは極めて一部の国家と階層でしかない。国家が経済として成り立っているように見えても、その実驚異的な収入を得ている階層が、全体の数字を上げているに過ぎないのである。

新自由主義=グローバル資本主義は、三つの問題を残した。経済の不安定と格差社会、それに環境問題である。とりわけ格差社会は信じられない勢いで進行している。国家として破たんしかねない状況にあると言える。

半年前に破たんしたリーマンブラザーズの、07年の社員の平均給与が7000万円だったそうである。信用を担保に、投資するだけの会社である。素人目に見ると、実体のない組織である。組織が立ちいかなくなったからと、平然と破綻するが、それが世界に波及する。そのことにアメリカは何にも説明はない。

中谷は、副題に「再生への提言」としている。信じられないことに、縄文・弥生に遡及し日本文化を論じている。一神教のキリスト、イスラムに対して日本は、八百万の神を抱き、仏教をとりいれた。こうした温厚な民族こそが、環境を守ると提言する。キューバとブータンを例にとり、グローバル資本主義の発展、グローバル化は未来を作らないと、中谷は提言する。

この種の本は、あちこちに書いたものを寄せ集めたものが多いが、本書は純然たる書き下ろしである。オバマ登場以前に書かれていることを考慮しなければならない。全体を通じて、見出しを掲げてその説明を短文で説明している。読み易い本である。


羅臼港

春誓い羅臼港