NHKスペシャル「永田町・権力の攻防」を3夜連続で見た。細川政権以後の、16年間の関係者たちの証言で綴った権力の攻防である。ほぼリアルタイムで見てきた者にとっては、確認の意味もあったが、それにしてもいかにも生々しい政治闘争であった。
主役は何と言っても小沢一郎であろう。自民党を飛び出し、剛腕で幾つもの党を作り連合、連立を繰り返しながら、消耗する様をこの番組は見事に浮き出している。
結局小沢は理念闘争を捨て、政権交代だけを旗印にするようになる。民主党に統合する時の態度を、管直人は驚きを隠さず述懐する。統合に当たって、小沢は何の注文も付けることはな かった。やがて自分をこの政党は必要になると読んでいた節もある。
もう1人の主役は、野中広務である。過半数を割った自民党が政権を維持するのには、公明党が必要であった。そのために、当時公明党と近かった自由党の小沢にまず連立を呼び掛けて、自自公政権を誕生させる。利用されたことに気付いた、小沢は政権を離脱する。
野中はこの攻防にどんな理念を描いたのかとの質問に、「高邁なものはなにもない。ただ政権維持のために動いた」と答える。加藤の乱のときにも、野中は宏池会の切り崩しを強引にやり遂げる。何の理念もなく。ただひたすら政権維持のために動くのである。
小沢の執念は、16年経って自らが党首となり参院選を勝利し、西松建設問題で副代表となり鳩山政権を誕生させ、政権交代を実現させる。
野中たちが執念を燃やして守った政権も、その後の安倍、福田の何とも淡泊なポイ捨てと、その後の麻生の抜けた人物たちによって簡単に投げ出されてしまう。
番組では、小泉純一郎の告白がなかった。この男らしいが、劇場型の選挙運動は、小泉が何を目指しているのかを覆い尽くす作用をした。小泉の負の遺産を清算する形で、小沢の執念は実を結ぶ。
それにしてもこうして見ると、この16年間の政権を巡る攻防には、力学的な作用点の模索に過ぎなかった感がする。政治理念とは程遠い中での攻防であったと言える。日本が、成熟した国家になるには今しばらく時間がかかるのかもしれない。