参院選の開票速報が報道されている。憲法改正がこれからのテーマになるが、見るでもない、聞くでもなしに、やり過ごしながら、スペイン旅行を思いだしながら、こんなことを考えた。9条改正、緊急事態条項とは別なことである。原発問題である。電気代の高騰が、友人たちのあいだで常に話題になった。
ロシアのウクライナ侵攻以来、石油、ガスが高騰している。電気代の高騰は、このあおりである。これを解消するために、きっと、これから原子力発電が重視されるだろう。いまのところヨーロッパでは、フランスが原発推進派に見える。ドイツは慎重派だ。スペインは風力発電に力を入れいているが、この先の動きはフランス追随になると思う。フランスが原発を増設すれば、その動きはドミノ倒しのようにヨーロッパ全体に広がっていく。石油、ガスを持たない国は、発電を原子力に頼るしかないのだ。
もちろん太陽光発電や風力発電、その他の再生可能エネルギーをつかった発電も試みられるだろうが。
で。
この原子力発電だが、これは電気(電気代)だけの問題ではない。原子力発電は、電力以外に、原発の「原料」を産み出す。これが、原発推進に拍車をかけることになる。
ロシアのウクライナ侵攻以後、NATOが拡大した。フィンランド、スウェーデンが加盟した。ロシアに侵攻されないためというのが理由だが、その侵攻の「抑止力」が原子爆弾である。フィンランド、スウェーデンが実際に核武装するというわけではないが、NATOの拡大にあわせてアメリカの核は増強されるだろう。その「原料」はアメリカだけでも調達できるだろうが、アメリカはきっとそれぞれの国に「分担」を求めてくるだろう。そのとき原発が必要になる。
東京電力福島原発の事故後も、日本の政府(自民党)が原発稼働にこだわり続ける理由はここにある。日本が核武装するかどうかは別にして、もし核武装するなら、原料が必要になる。原発を稼働させておく方が便利なのだ。そしてまた、そこで培った技術を売ることもできる。以前にも、そういう動きはあった。ただし、それは「世論」の反対もあって頓挫したが、いまは状況が違ってきている。電気代の高騰は世界中の話題である。
ヨーロッパは、日本と違い、地震が少ない。地震の被害については考えないだろう。ヨーロッパに対して日本は原発輸出を試みるだろう。日本の原発産業にとっては、NATOの拡大は、一種の、商売の機会なのである。
岸田がスペインで開かれたNATO会議に出かけたのも、軍事同盟以外に、そういう問題が絡んでいると思う。ロシアのウクライナ侵攻を契機に、「商売」をしようとしてるのである。
こんなことを書くのも……。
実は、私はスペインの家庭では、もうガスがほとんどつかわれないのを見たからだ。私の生まれ故郷のような村、いちばん近いスーパーまで車で30分かかるような家でも、ガスに頼っていない。電気に頼っている。調理も、湯沸かしも電気である。電気で、どう生活するかと考えたとき、原発は必需品になり、その原発から核兵器の原料も抽出できる、という軍事と電力産業が手を取り合っての運動がこれからはじまるのだ、と、私はスペインをぶらぶら歩きながら考えたのだった。NATOの拡大会議(?)が、そんなことを連想させたのだった。