熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

経済社会構造を改革せずに生産性など上がるのか

2007年08月07日 | 政治・経済・社会
   今日、「経済財政白書」が閣議に提出された。
   日経と政府の広報版(抜粋)を見ただけで、詳しくは分からないが、日経夕刊の記事のサブタイトルは「成長へ生産性向上急務 デフレ脱却視野に」「M&A活用の余地指摘」であり、これを見る限り、前向きの指摘は一切ないと言う印象受けた。
   日本の経済成長に取るべき道は、経済社会構造の変革以外にないからである。

   早い話が、白書で触れているIT活用と生産性の項目だが、指摘が何年も世界趨勢から遅れている。
   TVで、何処かの団体が「税金の税務申告やってるで」とか言って全国から自慢そうに報告しているが、このようなルーティン仕事は、アメリカでは、とっくの昔にインドにアウトソーシングされていて、既にプロの仕事ではなくなってしまっている。
   先進国では、パソコンや機械で出来る仕事や外国へアウトソーシング出来る仕事は、プロの仕事でも駆逐されて消えて行き、たとえ残っていても、途上国労働者並みの賃金しか得られなくなってしまっている。
   社会保険庁の年金トラブルで、某評論家が「コンピューター処理をバンガロールに依頼したら即刻解決する」と言っていたが、悲しいかな、色々シガラミがあってそれが出来ないのが日本である。アメリカでは、高度な弁護士や会計士の仕事などどんどんコンピュータ化されており、多少の会計なら日本でも弥生会計や勘定奉行で十分である。
   CIOの活用などと言っているが、パソコンを使えない重役が居るために、そのごり押しでITシステムが有効に動かない大会社があると言う嘘みたいな話が、日本の現状だと言う。

   それに、IT関連では、電子政府と言っているが、政府関係部門の遅れが致命的であり、このようなちぐはぐでは、日本経済社会のIT化は進まない。

   生産性については、「資本進化と全要素生産性上昇と言う二つの経路でバランスを取りながら労働生産性の上昇を目指していく必要がある」と難しいことを言っているが、国際競争力に曝されている製造業などは言われなくても血の滲むような努力をしているが、政府の規制や過保護政策で温存されている内需型産業の生産性が問題なのである。
   このような生産性の低い内需型産業では、多くの有能な人材が滞留しているにも拘わらず、いくら努力してもROEなど利益指標がゼロ近辺で、無駄な業務に骨身を削っていて人的資源の浪費は、限りない。

   野口悠紀雄教授が言っているように、徹底的な資本開国を行って日本産業を競争に曝し、(もっとも十分にセイフティネットを張ってではあるが)、日本の経済社会構造を改革して、知的サービスで生産性を上げることが涵養であろう。
   今の産業構造を温存して、いくら資本進化や全要素生産性のアップ策を講じても、そして、「要素価格均等化定理」でどんどん競争力の落ちて行く製造業での高い生産性のアップを図っても、国際競争力はどんどん下降線を辿って行く。
   コンピューターや機械が代替してくれる仕事、外国にアウトソーシング出来る仕事からはどんどん撤退して、中国や他国に出来ないようなハイテクや高度な製造業や知的サービスに、産業構造を急速に変えて行くことである。
   官民こぞって、このために制度を整え、準備しなければならない。

   イノベーション論に至っては、下手な学者の論文。何時も言うが、資格をとっても碌な職にもつけず生活に困窮している理工科学系のドクターが今の日本に充満している現実をどう見るのか、この優れた叡智を活用することが最優先であろう。
   年金問題で、社会保険庁の職員がしゃかりきだと言うが、それでは、今までの実務は何もしていなかったのか。役人の仕事はこんなものなのであろうか。
   それなら、他の公務員を減らして、これらの理工科学系のドクターを集めて、戦略的基礎研究等次世代のイノベーションを追求する方がはるかに国家百年の計に役に立つ。

   外資導入だが、ブルドック問題で安心しているようでは駄目で、ハゲタカであろうとなんであろうと受けて立つ覚悟がなければ、EUがロシアや中国のM&Aを心配して対策を考えているように、BRIC’Sが、金に飽かせて、日本企業のM&Aを仕掛けてくるのは時間の問題であるから、今後の試練はもっと厳しい。
   日本は外資アレルギーが強いが、イギリスのようにウインブルドン現象を気にしないようにならないと、下降線を辿った国は立ち直れないのかも知れない。もっとも、イギリスのように成熟した大国が、金融一本やりで成長を続けて産業なり国家が持つのかどうか、どこかで不均衡が起こって揺り戻しが来る様な気がしている。
   何れにしろ、このままでは、知的サービス部門では世界の後塵を拝して、益々取り残されて行くので、早急に日本経済社会の高度化を策する必要があろう。

   
   
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