沖縄知事選の報道(その2)
自民党憲法改正草案を読む/番外234(情報の読み方)
10月01日に書いたことに、一部、私の勘違いがあった。朝日新聞の最終版の見出しは、
辺野古反対 玉城氏当選/沖縄知事選
政権支援の佐喜真氏破る/「オール沖縄」翁長氏後継
政権へ不信 工事に影響も
ではなくて、
辺野古反対 玉城氏当選/沖縄知事選
政権支援の佐喜真氏に大勝/「オール沖縄」翁長氏後継
政権へ不信 工事に影響も
だった。コンビニで売っていたものは、途中版ということになる。
朝日新聞は「大勝」と見出しに取っている。毎日新聞は「過去最多得票」と見出しに取っていた。(読売新聞は、見出しに取っていなかった。)
ただ、「大勝」も「過去最多得票」も、私の印象ではあまり目立たなかった。「おっ」という驚きを読者に引き起こすところまではいかなかったと思う。
見出しの二番手に「過去最多 39万票」と明確に示すべきだったと思う。
なぜ、こういうことを言うか。
たとえば衆院選、参院選で自民党が「大勝」「過去最多議席」を獲得したときは、新聞やテレビはどう報じるだろうか。「過去最多」とか「2/3確保」とか見出しに取るだろう。選挙は「勝敗」がいちばん大事だが、同時に「数字」が重要なのだ。「数字」のなかに「有権者」の「意思」がある。
だからこそ、朝日新聞は10月02日の朝刊(西部版・14版)の30ページで、次のような見出しの記事を展開している。
過去最多得票 新知事への思い
「県民の心に翁長氏」「基地の危険残すな」
玉城の得票沖縄知事選で過去最多だったということは、「大事件」なのだ。自民党が「単独過半数」の議席を獲得した、「2/3を獲得」というのに匹敵する。権力が暴力をふるって辺野古に基地を造っていることに対して、沖縄県民の怒りが明確に示されたのだ。今まで以上の人が、そういうことに対して「反対」と意思表示をした。その「意思表示」の「数」がどういうものであるか、それを新聞、テレビはもっと「正確」に伝える必要がある。「数字」の「意味」を分析して報道する責任がある。
玉城が大勝(完勝)することは、各報道機関とも「事前調査(世論調査)」でわかっていたと思う。「出口調査」は事前の世論調査を裏付けるというよりも、それを上回るものだったのだろう。だからこそ、朝日新聞は午後8時には「当選確実」と報道した。
ところがNHKは、それよりはるかに時間が経ってから報道した。私の記憶では9時半過ぎだが、正確にはわからない。もっと遅かったかもしれない。
なぜNHKは、「速報」しなかったか。「速報」が与える「衝撃力」をおさえたかったのだ。安倍に配慮したのだ。あるいは、安倍側から何らかの圧力があったのかもしれない。
これまでの衆院選、参院選では開票が始まると同時に、NHKは「自民〇議席、過半数超す」というような報道をしていた。どの選挙区も得票が「確定」していないのに、自民党の圧勝を伝える。これはたいへんな衝撃である。選挙区ごとに見ていけば「僅差」で勝ったところもあるかもしれないが、そういうことは「見えなくなる」。自民党が完全に支持されているという印象だけが全面に出てくる。
この「確定得票」が出る前の「大勝」報道は、報道を見ている国民にも、野党にも衝撃である。野党の誰かが「まだ確定得票が出ていない。この段階で、コメントはできない」と言ったとすると、その人は「世論の状況」も把握せずに選挙をしていたことになる。負けて当然と言われるだろう。世論をに働きかける工夫をせずに、世論がどういうものであるかを知らずに選挙してきた、政治能力がないと判断されるだろう。
NHKが即座に「自民〇議席、過半数超す」というような報道をするのは、ある意味では、敗北した野党に対して「敗戦の弁」を用意する準備をさせないためである。もっともらしい論理を語らせないためである。
ここから逆に沖縄知事選を見つめればどうなるか。
開票と同時にNHKが、「玉城圧勝、得票は過去最高の勢い」と報道すればどうなっただろうか。朝日新聞は、最初からそれを匂わせるネット報道をしていた。「いままで自民党の票が多かった郡部でも、玉城の票が上回っている」と伝えていた。郡部で玉城の票が上回れば、大票田の都市部でも玉城票が上回る。「大勝」は確定得票が出る前から、予測がつく。
そういうことをNHKが朝日新聞と同じように速報していたら、衝撃は拡大するだろう。
結果を聞いて、安倍は「しょうがないね」と言ったと報じられているが、この「実感」まるだしのことばが「衝撃」をあらわしている。まともな分析、評価ができないのだ。
沖縄知事選で、玉城が勝った、佐喜真が負けた、ということは誰でもが言える。それは「単純な事実」だ。
大事なのは、それをどう「報道するか」である。
そこにどんな意味があるか。意味を裏付ける「証拠(事実)」は何か。それを、どう表現していくかが報道の仕事だ。
朝日新聞は「過去最多得票」を大きな見出しで取り、01日には伝えきれなかったことを報道している。他の報道機関はどうか。
私はテレビを年に数回しか見ないのでわからないが、NHKは、どう報道したか。
報道される内容と同時に、報道の仕方そのものも「ニュース」として見なければならないのが現代の社会である。
NHKに関して言えば、衆院選、参院選の報道では、第一党の自民党の紹介は長い時間をかけて報道している。しかし、野党には時間をかけない。「議席数に合わせて時間を配分している」とNHKは言うかもしれない。しかし、新聞などとは、その「配分の仕方」があまりにも違う。この「格差報道」も「ニュース」なのである。それを操ってるのはだれなのか、隠されたままである。