114 E・A・ポーに
ギリシアはどこにあるか。地理学的には地中海にある。しかし、文学的にはギリシアという国にとらわれない。「地理」を超越したところにギリシアを出現させる。
ポーのことばのなかにもギリシアはある。ひとは「ことば」を通して、見たこともない土地と人を知り、交わり、生きることができる。ギリシアを生きるのである。
ポーのギリシアは、ボードレールによって発見される。フランス人が、アメリカ人の書いたギリシアを通して新しいギリシアを知る。誰も書いたことがない。既知なのに、未知のギリシアだ。未知なのに、ギリシアだとわかってしまう。そして、ボードレールは、
高橋もボードレールにならって碑銘を書く。これが、その詩。
そのことばのなかに「孤独」が紛れ込んでいる。
ポーはアメリカで孤独だった。その孤独をボードレールがつなぎとめる。そのつながりのなかへ高橋も入っていく。
三人は、それでは「孤独」ではなくなるのか。
そうとは言えない。「孤独」のままである。「孤独」であることが、ことばをつなぐ力になっている。
ここに文学の不思議がある。
「ギリシア」は孤独か。多くの人がギリシアにあこがれ、ギリシアから影響を受け、ギリシアを書く。ギリシアは孤独ではない。しかし、そのギリシアを書く人は、「孤独」であるがゆえに、他の「孤独」とつながりあう。そして、その「つながり」のなかに「ギリシア」をつくりだす。
ギリシアはどこにあるか。地理学的には地中海にある。しかし、文学的にはギリシアという国にとらわれない。「地理」を超越したところにギリシアを出現させる。
一度もヘラスの地を踏むことなく
地中海の紺青を遠望したことすらなく
あなたはヘレネとニカイアの小舟をうたった
ポーのことばのなかにもギリシアはある。ひとは「ことば」を通して、見たこともない土地と人を知り、交わり、生きることができる。ギリシアを生きるのである。
ポーのギリシアは、ボードレールによって発見される。フランス人が、アメリカ人の書いたギリシアを通して新しいギリシアを知る。誰も書いたことがない。既知なのに、未知のギリシアだ。未知なのに、ギリシアだとわかってしまう。そして、ボードレールは、
あなたのために フランス語の壮麗な墓を建てた
その顰みに準って 私も日本語の簡潔な碑銘を
新大陸の孤独なヘレニスト あなたにふさわしく
高橋もボードレールにならって碑銘を書く。これが、その詩。
そのことばのなかに「孤独」が紛れ込んでいる。
ポーはアメリカで孤独だった。その孤独をボードレールがつなぎとめる。そのつながりのなかへ高橋も入っていく。
三人は、それでは「孤独」ではなくなるのか。
そうとは言えない。「孤独」のままである。「孤独」であることが、ことばをつなぐ力になっている。
ここに文学の不思議がある。
「ギリシア」は孤独か。多くの人がギリシアにあこがれ、ギリシアから影響を受け、ギリシアを書く。ギリシアは孤独ではない。しかし、そのギリシアを書く人は、「孤独」であるがゆえに、他の「孤独」とつながりあう。そして、その「つながり」のなかに「ギリシア」をつくりだす。
つい昨日のこと 私のギリシア | |
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