詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高柳誠『フランチェスカのスカート』(19)

2021-07-28 10:28:37 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

高柳誠『フランチェスカのスカート』(19)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「薬局」。この作品にも珍しく固有名詞が出てくる。「アガーテ」。少女ではなくアガーテと固有名詞にしたのはなぜだろう。「マックス」が「ぼく」の「鏡」(あるいは双子)であるように、アガーテは「フランチェスカ」の鏡だろう。もちろん、アガーテとフランチェスカは似ていない。似ていないからこそ、フランチェスカのなかにもアガーテが隠れていると読みたい。
 アガーテがフランチェスカを内部に閉じ込めているのか、フランチェスカの内部にアガーテが生きているのか、それは、このあとの詩の中でわかるだろう。

         ときによって大きく色を変える瞳をもつアガーテの
  世界は、どのようにその内部に広がっているのだろう。自分の感情
  のままに変化するのだろうか。あるいは、アガーテ固有のものなど
  なく、その時々の世界の本質をただそのままに映し出しているに過
  ぎないのだろうか。

 これはまた、「ぼく」にも「マックス」にも「フランチェスカ」にも言えることかもしれない。
 本質は個人(固有名詞)のなかにあるのか、それともそれは単に世界の本質を映し出した鏡なのか。「内部」と「世界(外部)」をつなぐものは「瞳」であり、「ことば」であるだろう。

 

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オリンピックは中止すべきだ(6)

2021-07-28 09:41:09 | 考える日記

 7月28日の読売新聞(西部版)によれば、

 東京都で27日、新型コロナウイルスの感染者が新たに2848人確認された。1日当たりの感染者は、「第3波」のピークだった今年1月7日(2520人)を上回り、過去最多となった。

 一覧表によれば、神奈川758人、埼玉593人、千葉405人、大阪741人、私の住んでいる福岡では236人。どこも急増している。
 オリンピック関係でも、

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は25日、ボートのオランダ選手と自転車のドイツ選手の2人を含め、新たに10人が新型コロナウイルス検査で陽性と判定されたと発表した。

 感染が止まらない。
 これに関連して、菅は、こう言っている。

五輪中止の選択肢については、「人流は減少しているので、そうした心配はない」と強調した。

 「人流は減少している」とは、どういうデータに基づく発言なのか。新聞では、聖火台のまわりに見物人が集まっているとか、開会式のとき周辺に反対派を含め多くの人が集まったと報じていた。それは、全部、嘘なのか。
 そうではなくて、「人流は減少している」が嘘なのだろう。「安心安全」が嘘であると同じである。
 コロナウィルスには「足」がない。人が媒介しない限り、人から人への感染は起きない。全世界の人が40日間(約6週間)誰とも接触しなければ、ウィルスは生滅するだろう。人流が感染を拡大させている。
 菅は「不要不急の外出は避けていただき、五輪、パラリンピックはテレビで観戦してほしい」と言っているが、まるで笑い話である。五輪はほとんどがテレビしか観戦でいない。実際に観戦できるのは、公道をつかっておこなわれる競技くらいである。自転車レースとかトライアスロンとか。札幌で行われるマラソンとか。「観戦」ができないから、せめて「雰囲気」にふれようとして聖火を見に行くのではないのか。
 一方で、五輪五輪と騒ぎ立て、一方で国民に家にこもっていろ、というのは無理だろう。五輪は中止する、だからみんな外出を控えて、と呼び掛けないことにはだれが家に閉じこもっているだろう。休業の店舗にも支援金を出さなければ、飲食店はやっていけないだろう。
 だいたい、スポーツの楽しみは単に見るだけではない。選手の活躍を見て、自分もやってみたい、という気持ちになる。スポーツは個人で(ひとりだけでできる)スポーツもあるが、たいていはだれかといっしょにやる。相手がいる。他人と同時に肉体を動かすのがスポーツである。つまり、スポーツをするとき、そこにはどうしたって「人流」がある。スポーツへの関心を煽り立てておいて、「人流」を抑制するということは不可能である。政策として矛盾している。
 スポーツに関心があるわけでもない私がそう思うくらいだから、スポーツ好きな人は選手の活躍を見れば、体を動かしたくなるだろう。子どもたちは、とくにそう思うかもしれない。
 五輪はまだ半分以上残っている。早く中止し、感染拡大防止策を一日でも早く強化すべきだろう。

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