詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高柳誠『フランチェスカのスカート』(20)

2021-07-29 09:51:46 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

高柳誠『フランチェスカのスカート』(20)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「二重性」。指で星をなぞっていくと、

  動物のかたちが夜空にとつぜん広がって、それぞれの物語をかたり
  始める。

 「とつぜん」は学校文法的には「かたちが広がる」の「広がる」にかかるのだが、私は「物語をかたり始める」の「かたる」にかかっていると読む。高柳のことばは、先へ先へと進む。その推進力のようなものが「とつぜん」であり、それは「文法」を飛び越えて先へ進む。
 「二重星」と「にじゅうぼし」と読むのだろうか。「にじゅうせい」と読むと「二重性」になり、それは「とつぜん」の動きを説明しているようにも見える。「ひろがる」と「かたる」の二重のことばを突き動かす力をもっている。

                 死んだら、あの二重星のそばに昇
  っていけるのだろうか。それなら死ぬのもこわくないのだが、なに
  もわからなくなって広い空ではぐれてしまったら、そう思うと…、
  こわい。

 「二重」の反対のことばは「単独」というよりも「はぐれる」だろう。ことばは「二重」の意味を持つことで、緊密な世界をつくりあげる。ことばにしかたどりつけない世界をつくりあげる。しかし、二重を失うと、どうなるのか。
 「こわい」と、高柳は、めずらしく「心情」を語っている。
 この作品は、そこがとても印象的だ。

 


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オリンピックは中止すべきだ(7)

2021-07-29 09:08:30 | 考える日記

 いったい、いつまでつづけるつもりなんだろう、と思ったのが7月29日の読売新聞(西部版)。
 コロナ感染が急拡大し、全国で最多の9582人。1万人目前である。緊急事態宣言も首都圏3県を追加することを検討している。それなのに、紙面のトップはオリンピックの報道。おかしくないか。


 読売新聞の報道によれば、

 新型コロナウイルスの感染者は28日、国内で新たに9582人確認され、過去最多となった。東京都の新規感染者は3177人で、2日続けて最多を更新し、初めて3000人を超えた。埼玉、千葉、神奈川の3県でも過去最多となり、政府は東京都と沖縄県に発令中の緊急事態宣言の対象を3県に拡大する方向で検討に入った。(略)
 神奈川県では1051人の感染が判明した。神奈川で1000人を上回るのは初めて。埼玉県では870人、千葉県では577人の感染が確認された。

 さらに、見ていけば。
 大阪798人、福岡405人、沖縄347人。東京からの移動が目立つ石川が過去最多の119人。全国で感染が拡大している。
 五輪関係では、「海外からの報道関係者2人を含め、16人」が感染している。
 こんな状況で、五輪報道を「いつもどおり」につづけていていいのか。

 クルーズ船の感染が問題になったとき、私は、きっとコロナ感染対策の検証が始まれば、日本のクルーズ船対策が問題として取り上げられると書いた。たまたま感染が「予想以上に少なかった」。そのため世界に新型コロナは、それほど問題ではないという印象を与えたと思う。中国のように即座に病院を建設し、感染者を隔離するという方法をとっていたらコロナに対する世界の印象は変わっていたはずである。
 五輪についても同じである。菅が「安心安全」と世界に宣伝したことが、世界の緊張感を緩めさせてしまったということはないか。実際に、大会開催を強行したことが、世界の緊張を緩めさせたということはないか。五輪、日本での感染拡大と世界の感染拡大は無関係というかもしれないが、「間接的」に影響を与えていると思う。緊急事態宣言の出ている東京でオリンピックが開かれているのなら、出歩いたってかまわない、と多くの人が思うだろう。危険は少ないと思うだろう。
 菅のやっていることは、「未必の故意」というとおおげさすぎるかもしれないが、私は「未必の故意」だと思う。コロナ感染が拡大することはわかっていた。少なくとも「危険だ」ということは指摘されていた。それを無視して大会を強行開催した。「無観客」で「人流」を抑制しながらの大会なのに、体会関係者のなかからの感染もつづいている。

 その感染者だが。
 体会関係者の感染者数。きのうの「16人」と同じ「16人」だったところは、日本で言えば長野県である。長野の人口は約200万人。それと比較すると、五輪関係者の感染状況がどれくらい激しいものかわかる。私は「体会関係者」が何人いるのか知らないが、選手を含めて10万人と仮定し、それを長野にあてはめると320人になる。長野で320人感染したと報道されれば、大騒ぎになるだろう。7月1日以降に表されている陽性者169人は、長野にあてはめると3380人。長野の発生以来の累計が5189人だから、その強烈さがわかるだろう。
 東京にあてはめたら、どうなるか。東京の人口を1000万人と仮定して、それを「五輪関係者の感染」にあてはめると、きのうの感染者は1600人。これは神奈川県を超す。累計では、16900人。1か月足らずのあいだに、である。
 これは大変な数字だろう。オリンピック関係者のあいだでは、もう「パンデミック」どころの騒ぎではないのである。

 数字が絡む問題は、なんでもそうだが、数字が大きくなると、私なんかは「実感」がなくなる。国の予算などいうのは、いったい「いくら」なのか見当がつかない。
 そういうときは、私は、自分の理解できる範囲(知っている範囲)に数字を反映させて考える。算数をつかって、比例で分かりやすくしてみる。
 全国の感染者が1万人に達しようというとき、五輪関係者の感染者が16人。これは、どうしたって、「少なく」見える。しかし、これを日本の人口に比例させるとどうなるか。計算してみるといい。日本の人口120000000人、体会関係者10万人と仮定して、きのうの16人をあてはめるとどうなるか。ぜひ、やってみてほしい。

 世界に目を向けてみれば。
 アメリカでは1日5万人が感染している。感染防止対策を強化するために、室内ではマスク着用が再び求められている。五輪とは関係ない遠く離れた場所だが、五輪は世界中で放送されている。五輪報道を見れば、だれだって「安心安全」と錯覚する。
 菅の政策は「安心安全」という誤解を世界中にまきちらしていることがわかる。
 五輪は、もう十分やったじゃないか。菅の望んでいた「金メダルラッシュ」も実現したじゃないか。さっさと打ち切り、コロナ対策に全力を注ぐべきだろう。五輪を中断、中止すれば、コロナの危険性を世界にアピールできる。それは危険性を知らせる強烈なメッセージになるはずである。

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