詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ウクライナとロシア、どう読むか

2022-03-01 12:04:32 |  自民党改憲草案再読

 2022年03月01日の読売新聞(西部版・14版、ただし記事はネットから転写)が4面に「中露北の挑発 政府警戒/ミサイル・軍事演習 ウクライナ混乱乗じ」という見出しで日本周辺の様子を書いている。
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①北朝鮮が27日に日本海に弾道ミサイルを発射した。
②中国軍は、22日に東シナ海で新型揚陸艇で上陸訓練実施を公表した。(略)露軍が(ウクライナ)侵攻を始めた24日は戦闘機を台湾の防空識別圏に進入させた。
③ロシアは、(略)1月には千島列島や、ロシアが不法占拠する北方領土などでの射撃訓練を実施。2月12日には、露艦隊が米国攻撃型原潜の「ロシア領海侵入」を発見したと発表したが、米側は否定した。
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 これだけを読むと、たしかに「ウクライナの混乱に乗じ」、中国、ロシア、北朝鮮が極東で何らかの軍事行動を起こしそうな気配が感じられるが、こういうことはウクライナ問題以前からつづいている。ロシアの行動は、1月のものである。
 なぜ、こんな「まとめ作文」を、いま、読売新聞は書いているのか。
 最後の方を読むと、わかる。
 「米、タイ両軍主催で(3月)18日からタイなどで行われているアジア最大規模の多国間軍事演習「コブラ・ゴールド」には、日本の自衛隊など約3500人が参加。台湾有事などを念頭に水陸両用の装甲車を使った実戦訓練も実施する。米軍の存在感を維持するのが狙いだ。」と書いたあとに、こうつづけている。
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現時点で米国がウクライナ防衛のための軍事介入を見送っているため、自民党からは「台湾有事の際に米軍は行動するのか」(中堅)と懸念する声も出ている。台湾への武器供与などを定める米国の「台湾関係法」は防衛義務は規定していないためだ。安倍元首相は27日のテレビ番組で「米国は台湾に曖昧戦略を取っている。米国は曖昧さを捨て去るべきだ」と述べ、台湾防衛を明確にすべきだとの認識を示した。
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 「台湾防衛」は聞こえはいいが、はっきり言って「内政干渉」だろう。「台湾有事」といいなおし、日本が中国からの攻撃にさらされているとあおるのは、おかしいだろう。台湾は中国の一部であるというのが、日本の公式見解のはずだ。
 安倍の狙いは「台湾防衛」ではなく、「中国攻撃(中国との戦争)」であることは明白である。「台湾防衛」を「台湾有事=日本の有事」と言い直し、中国侵攻を考えていることは明らかである。安倍は、ただただ戦争がしたい。そのだけの人間である。そして、これはあとで書くことと関係するが、戦争をする、アメリカから軍備を買うということをつづけるかぎり、安倍はアメリカの軍需産業から大事にされる(見返りに経済援助がある、金儲けができる)ということだ。
 このことに関連するが、外電面に、上海コミュニケ採択50年にあたり、中国の王外相がビデオ演説した記事がある。
 王は、こう語っている。
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 王氏は、近年の米中対立について、「コミュニケが確立した原則、精神が適切に守られていないためだ」と主張し、「米国は政治約束を守り、『台湾で中国を抑える』たくらみや中国内政に干渉するいかなる言行もやめるべきだ」と求めた。(略)
 米国はコミュニケで、台湾について、「台湾海峡の両岸のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であると主張していることを認識する」と言及したが、中国政府が主張する「一つの中国」原則を受け入れてはいない。
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 アメリカは、台湾が中国の一部であるという主張を認識しているが、原則として「一つの中国」を認めていない。
 安倍は、このアメリカの姿勢に従っている。そして、それを利用しようとしている。台湾は「一つの中国」に含まれない。台湾は「中国」ではなく、むしろ、アメリカ、日本の「同盟国」である、という認識である。そして、そこから「同盟国の自由と権利を守れ」という主張し、その主張を戦争へとつなげていくのである。「台湾の自由と権利を守るための戦争」という「名目」を利用したいのである。
 安倍はすでに首相をやめてしまった人間である。その安倍の主張を、まるで「結論」のように展開する読売新聞は、やはり安倍の考えのように日本は「台湾の自由と権利を守る」ために、アメリカと協力して中国と戦争すべきだと考えているのだろう。

 でも、その戦争で何が起きる? なぜ、戦争をしなければならない? なぜ、共存しようとしない? なぜアメリカはロシアや中国と共存しようとはしないのか。
 理由は簡単だ。アメリカは、アメリカ以外の国が金儲けをするのが許せないのだ。
 ロシア、ウクライナの問題にもどって考えてみればわかる。ロシア、ウクライナ問題で、いま影響が出ているのはロシアの天然ガスの供給だろう。ロシアからのガス供給がとまれば、ヨーロッパの多くの国は困る。日本が、天然ガスの融通をするのも、そのためである。
 これは、裏を返せば、ロシアは天然ガスを輸出することで利益を上げている。それがアメリカには許せない、ということなのだ。政治体制が違う国が経済的利益を上げる(金儲けをする)ということが、アメリカの政権に影響を与えているアメリカ人には許せないのだ。さらに、その経済関係を強めることで、ロシアがヨーロッパ諸国と関係を深め、さらに経済関係を拡大する(金儲けをする)ということが、アメリカの一部の金持ちには赦しがたいことなのだ。私は、アメリカ人の金持ちのことを知らないから、名前を特定できないが、そういうひとがアメリカの政治を支配している。中国についても同じように考えているだろう。経済力をつけ、いろいろな商品を世界に輸出し、金儲けをしている。中国、ロシアが金儲けをするということは、それだけアメリカの金儲けの機会が減る(金が儲からない)ということである。これを、なんとかしたい。
 さらに。アメリカは、世界各国を舞台に(つまり、アメリカ本土を舞台にしてではなく)戦争を展開し続けている。そして敗北しつづけているが、戦争がある限り軍需産業は儲かる。さらに日本のような、アメリカ以外の国に武器を輸出すればいっそう金儲けができる。
 NATOに対してもおなじ。NATOはアメリカ抜きの軍事同盟ではない。アメリカが含まれている。よくわからないまま推測で書くのだが、そのNATOの「武器」は、NATO各国の「自前」のものだけではなく、どうしたってアメリカから買うものもあるだろう。高度な軍備になればなるほどアメリカから調達したものになるだろう。軍の行動には「一体感」が必要である。その一体感は「軍備」の一体感につながるはずである。ウクライナがNATOに加盟すれば(加盟させることができれば)、アメリカの軍需産業は潤うのである。もし、ウクライナがロシアの支配下に入ってしまえば、武器はロシア産のものになる。ロシアの軍需産業が儲かる。これは、アメリカにしては、まったくおもしろくない。そういうことだろうと、私は想像している。
 世界は、アメリカの金儲け資本主義のために、破壊されるのだ。「共存」の道が閉ざされようとしているのだ。
 北朝鮮がやっていることも、このアメリカの金儲け資本主義と関係していると思う。アメリカからの援助がない。世界のリーダーを自任している(?)アメリカが、政治体制が違うという理由で北朝鮮を排除しようとしている。排除されたくない。北朝鮮は存在している、ということをアピールするために、軍備を増強させている。この軍備増強を排除するには、北朝鮮を上回る軍備をみせつけても効果がない。これは、これまでの歴史が証明している。北朝鮮がアメリカの軍事力に恐れをなして、軍備を増強しても意味がない、だから軍備を縮小するという動きは一度として取っていない。
 日本からは状況がわかりにくいが、アメリカのアメリカ以外の国が金儲けをするのは許せないという姿勢は、中南米に眼を向けても確認できるだろう。キューバやベネズエラに対するアメリカの経済制裁(経済対策とは言えないだろう)がキューバ国民やベネズエラ国民を苦しめている。

 「戦争」があると、どうしても武力対立、武力支配と、その支配から逃れる難民の問題だけが注視されてしまうが、武力戦争の背後にある「経済戦争」(強欲戦争)にも目を向けないといけない。
 私は年金生活者だが、年金生活者になってわかることは、金は儲けるものではなく、金はいかにつかわないかということが重要になってくる。何に金を使わないか、という問題で言いなおせば、軍備に金を使わない工夫をつづければ、人間の生活はもっと豊かになる。「利潤の再配分」という視点から、世界(経済)を見直さない限り、戦争は必ず起きる。もし、ロシアがウクライナから撤退し、かわりにNATOが支配するという形で戦争が終われば、それは次には、ロシアの内部への「侵攻」(ロシアからの隣接地域の独立)という形に発展するだろうし、台湾問題(台湾有事)にも。直結するだろう。中国が台湾に侵攻する前に、台湾を守るという名目がアメリカが台湾に基地をつくるという形で戦争がはじまるだろう。台湾に設置するのは武器の行使ではないから戦争ではないとアメリカは言うだろう。日本も、それに同調するだろう。しかし、中国から見れば、それはアメリカ軍の台湾侵攻だろう。
 いま必要なのは、国境(領土)だとか愛国心ではなく、国境という概念を捨てること、愛国心を捨てることだろうと思う。金の力で人間を支配しようとする制度とどう向き合い、人間同士が連携する方法を探すことだと思う。

 

 

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