読売新聞2022年03月23日の朝刊(14版・西部版)に、関東、東北で電力需要が逼迫している、というニュース。「電力逼迫 停電は回避/東電管内 使用率一時100%超/きょうも節電要請」という見出し。
でも、なぜ?
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今回の需給逼迫は、16日に福島県沖で起きた地震により、一部の火力発電所が停止したことが大きい。22日の気温低下で暖房などの電力需要が膨らみ、対応できなくなった。
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これだけでは、理由がわかりにくい。2面に解説が載っている。東電の説明によると、
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16日の福島沖地震では、計13基の火力が停止した。その後は7基が再稼働したものの、6基は動かないままだ。設備の被害が主因とされる。(略)現状で失われている供給力は計約450万キロ・ワットと、東京電力と東北電力管内の需要の1割弱を占める。
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かなりわかりにくい。火力発電所が6基稼働していない。そのために450万キロ・ワットの電力不足が起きる可能性があった。6基で発電している量は、450万キロ・ワットで、それは全体の使用料の1割。
では、全体は?
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東電は先週時点で、22日の最大需要を4100万キロ・ワットと見込んだ。(略)それが、前日までの天気予報で東京都を中心に想定以上の寒さになることが判明。東京電力管内の需要は4500万キロ・ワットにまで膨れあがった。
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4500万キロ・ワットの電力需要が見込まれるのに4100万キロ・ワットの供給力しかない。不足の400万キロ・ワットは、稼働していない火力発電所(6基)が担っていたことになる。しかし、記事の最初の方には6基で450万キロ・ワットと書いてある。50万キロ・ワットは、何処へ消えた? 稼働していたら50万キロ・ワットの余裕があったはずだと言うこと?
どうも、書いている「事実」に疑わしいところがある。不足すると書かれている450万キロ・ワットは、予想される需要4500万キロ・ワットの1割であって、実際の発電量ではないのかもしれない。
では、実際の6基の発電総量は? わからない。何かが隠されている。
4100万キロ・ワット+400万キロ・ワット=4500万キロ・ワット。これではぎりぎりだね。それで50万キロ・ワットの上乗せ(余裕)が必要ということで、最初の「450万キロ・ワット」という数字が導き出されているのかなあ。しかし、その不足分はどうした?
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22日に西から東へ実質的に融通できたのは約60万キロ・ワットにすぎず、不足分の解消には至らなかった。
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じゃあ、実際、どれだけ足りない?
4500万キロ・ワット-(4100万キロ・ワット+60万キロ・ワット)=340万キロ・ワット
でも、「節電」のおかげで、停電にまではいたらなかった。
なんともわかりにくい。
私なりに整理しなおすと、22日の電力総需要量は4500万キロ・ワット。しかし、東電には4100万キロ・ワットの発電能力しかない。他の電力会社から融通してもらえるのは60万キロ・ワット。340万キロ・ワット足りない。節電してもらうしかない。そして節電してもらって「停電」を回避できたということになるが。
途中に出てきた「450万キロ・ワット」「400万キロ・ワット」と火力発電6基との関係が、どうもおかしい。数学的、というより、算数的に、説明になっていない。私の足し算、引き算能力では、数字の「意味」がわからない。だいたい、「16日の福島沖地震では、計13基の火力が停止した。その後は7基が再稼働したものの、6基は動かないままだ」という記事からは、東電の火力発電所の「総基数」がわからない。まさか7基で4100万キロ・ワットを発電しているわけではないだろう。さらに何基あるかわからないが、そのすべてが100%の出力(?)で発電しているわけでもないだろう。残りのすべてが100%稼働しても、なおかつ400万キロ・ワット不足するのか。
隠されている数字が多すぎて、「事実」がわからない。
でも、その「わかりにくい事実」のあとに、とても「わかりやすい」文章がある。その「わかりやすい」文章を導き出すために、ややこしい文章(事実関係が不明な、数字の羅列)があったのだ。
この読売新聞の記事は、何が書きたかったの。
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原子力発電の再稼働を先送りしてきたツケも大きい。国内で稼働する原発は現在、西日本に集中している。東日本大震災の影響を大きく受けた東京電力や東北電力は再稼働しておらず、主要な電源を火力に頼っている。災害が需給の逼迫をもたらしやすい構造にある。
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原発の再稼働が必要だ、というための「論拠」として書かれた記事なのだ。「作文」なのだ。
その証拠に、23日の社説「電力逼迫警報/供給体制の強化が不十分だ」の最後には、こう書いてある。
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供給増には、出力が安定した原子力発電所の活用が有効だ。政府は安全性が確認できた原発の再稼働を後押ししてもらいたい。
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私には、これは、どうみたって原発にこだわる自民党の政策の後押しにしか見えない。「電力需要逼迫」は事実なのか。原発再稼働を誘導するための「演出」ではないか、とさえ妄想するのである。
なぜ、そんな妄想をするか。
安倍は、ロシア・ウクライナ問題に関連して「核共有構想/核シェア構想」を持ち出した。それは単にアメリカの核を借りるということで終わるのではなく、きっと自前の核にもつながる。日本でつくって、アメリカに提供する、ということも含まれるかもしれない。核兵器をつくるには、原料確保のために原発が必要なのだ。
プーチンは「核使用」をちらつかせたが、安倍あたりは、それに対して恐怖心をもつというよりも、「対抗手段として日本も核を持つべきだ」という主張を展開できるチャンスと受け止めて、はしゃいでいないか。そのはしゃぎに便乗し、原発の必要性を訴えるために「電力需要逼迫」を騒いでいるのではないのか。
そういうことと、関係がないようで、関係が深そうなのが、経済面に載っている「円安」の記事。6年ぶりに120円台。
輸入に頼る日本は、これから「物価高」に苦しむことになる。輸出産業は、円安で輸入が拡大するだろうが(トヨタはそれを見越して春闘の賃上げに応じたのかもしれない)、庶民は値上げラッシュに苦しむ。電気代、ガス代も、原料が輸入頼みだから、どんどん上がる。これも「原発再稼働」に利用されるだろう。
ロシア・ウクライナ問題も、大地震も、自民党と大企業は、「自己利益」のために利用しようとしているようにしか見えない。
だいたいねえ。
11年前の東日本大震災で、いったん地震が起きればどういうことになるのか、電力会社は想定できたはず。原発に頼らない発電体制を確立しないことには、電力不足になるのはわかっていたはず。その対策を、まさか「火力発電」だけでまかなえると考えるはずがないだろう。地震のときは火力発電だって被害を受けるのだから。
11年間、何もせず、原発再稼働を頼みに経営してきた。いま、再び、原発をアピールする好機だ、と思っているのだろう。原発が稼働中だったらどうなったか、などと考えないのだろう。
ウクライナ問題では、ロシアが原発を攻撃したと騒いでいるが、日本が原発を攻撃されたらどうなるかは考えないのだろう。原発を動かして金儲けができればいい。原発を稼働させて核の原料を確保すれば、自民党が会社を支えてくれる、としか考えないのだろう。
私は「懐疑派」というよりも「邪推派/妄想派」の人間だから、どうしてもそんなことを考える。