熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

シエスタ(午睡)はイノベーションを生む?

2007年05月21日 | イノベーションと経営
   日中に適度な仮眠を取れば、1日に2度朝が来るようなもので、2度ピークに達せられる、とトム・ケリーは言う。
   彼のデザイン会社IDEOでは、イノベーションを生むためにブレイン・ストーミングを頻繁に行っているのだが、どうやら、朝こそはエネルギーと創造性がピークに達している刻限らしいので、昼寝をして、朝を二度迎えればもっと効果的であろうと言うのである。
   それでは、時代錯誤で馬鹿馬鹿しいと言って排除されつつあるラテン系の国々のシエスタ(午睡)制度は、創造性を育む為にも、人間の企業活動に適合しているということなのであろうか。
   
   余談だが、1974年、もう30年以上も前になるが、ブラジルのサンパウロに赴任して驚いた。
   シエスタ制度があって、時間帯はどうだったか忘れてしまったが、昼には自宅に帰って食事をして少し昼寝をして、午後遅くなってから再び会社に出て仕事をするのである。
   最初赴任した時には、ホテルを宿舎にしていたので、重い午餐をたっぷり取ってベッドに入ると正体もなく眠ってしまい、午後の仕事に戸惑ったのを覚えている。

   隣のパラグアイに出張した時は、朝7時頃から午後1時頃まで仕事をして、午後の4時頃からまた7時頃まで仕事を始めると言った調子であった。
   政府の役人などは、午前中で仕事が終わるので、午後から許認可をアドバイスする別会社を作って二足のわらじを履いていた。(この職権乱用とも言うべきシステムは、合法的な賄賂取得法だったのかも知れない。)

   ラテンアメリカでは、概ねこのシエスタがあったが、私の記憶では、その後、訪れたイタリアなどラテン・ヨーロッパにも、シエスタが残っていたし、現在は知らないが、私がヨーロッパに居た頃、15年ほど前にもスペインなどビジネスの時間帯はシエスタ制度そのものであった。
   ビジネス・ランチは2時頃から始まって、夕食などは9時以降でないとレストランは開いていなかったし、延々深夜まで続いた。
   フラメンコ・ショーの真打の踊りなどは深夜1時以降でないと見られなかったのである。

   本論に戻るが、科学的には、短時間の深い昼寝が、活力を取り戻すパワーアップに効果的であることを示していると言われている。
   昼間の仮眠は、情報過多を緩和するので、極めて大きな回復効果があり、脳が様々な仕事を学習する能力を高めて、記憶を強固にするというハーバードの調査もあると言う。
   もっとも、前述のシエスタのような寝過ぎはどうかと言う研究報告はないので問題外かも知れない。

   昼寝実践の達人が居た。
   エジソンは、夜の5時間ほどの睡眠に昼寝を加えて、発明を連発したのである。
   マーガレット・サッチャーも、ジョン・F・ケネディも、この昼寝パワーアップの実践者だったと言う。
   
   偏見や先入観を捨てさえすれば、昼寝が野心的で創造的な人間の強力なツールであることは容易に想像することが出来る。
   こと創造的な仕事に関しては、人を適切な心理状態に置くのに短時間の昼寝が役に立つことは確かで、イノベーションを生むための安上がりな手法であるとトム・ケリーは言うのである。
   今では、リクライニング・チェアーが何台も置かれた「仮眠室」が社内に儲けられた会社が結構あると言うのだから面白い。
   
   
   
コメント
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