熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ITソフト経営に傾斜したヒューレット・パッカード

2007年05月30日 | 経営・ビジネス
   「ヒューレット・パッカードは、ソフトウエアに経営の焦点を合わせる。ソフトウエアが、総ての中心となる。」と「HP WOPLD Tokyo 2007」の基調講演で、HPアメリカ本社CTO&CSOのS.V.ロビソン副社長が言い切った。
   パソコン販売高でデルを抜いてトップに立ち、総売上高でもIBMを凌駕して名実ともにIT企業トップに躍り出たヒューレット・パッカードが、パソコンやサーバー、プリンターなどのハードウエア・ベンダーからビジネスモデルを転換し、ITソフトの雄を目指して大きく経営の舵を切ったのである。

   パソコンで受注生産して販売する革命的な直販方式を編み出したデルが、ウォルマートと販売提携してビジネス・モデルを変えるのだと報道されていたが、HPの追い上げもその一因であろうか。
   フィオリーナ前CEOが、創業者一族と血で血を洗う壮絶な株主投票権の争奪戦争で勝ち取ったコンパックの買収劇も、つい先ほどのことだと思っていたら、新体制に移ってから、こつこつと経営のソフト化を進めていたのである。

   今日では、R&Dの70%は、ソフトウエアの開発に注ぎ込み、最近のM&Aの大半はソフトウエア事業拡充の為の企業買収であり、PC組み込みのソフトや付属ソフトの他に業域拡大のための自社独自のソフトを開発し、さらにソフト分野の強化を図るのだと言う。
   実際にも、売上でも数年前にハードとソフトが逆転しており、大変だった模様だが、コーポレート・カルチュアの転換や経営の軌道修正に成功している模様である。

   ヒューレット・パッカードは、優秀なメーカーではあったが、如何せん製造業、特に、IT等ハイテク関連の企業は、技術の急激な革新的変化に煽られて業績の浮沈が激しく、景気の波に洗われて来た。
   アメリカの場合は、どんどんアウトソーシングが進展して行き、製造技術等重要なノウハウが空洞化して行き、ハツカネズミの水車のように走り続けてイノベーションを追求しても必ず成功すると言う保証はない。
   あの瀕死の状態であった超名門企業IBMも、ガースナーCEOが、ハードからソフトへ経営モデルを大きく転換させて「巨象を踊らせて」今日のIBMの基礎を築いた。
   100年前から唯一大企業として生き残っているGEも、ウエルチの経営改革を経て既に製造業ではなくなりソフト・オリエンテッドな企業に変身してしまっている。(もっとも、エジソンが、喜んでいるかどうかは分からない。)
   アメリカの場合には、ハイテクソフトの成功会社は驚異的な業績を上げて企業価値も高いが、ハイテク製造業は、外国企業の追い上げを受けて経営が悪化することが多くリスクは極めて高いので、私自身は、ヒューレット・パッカードの経営のソフトウエアへのシフトは、むしろ遅かったくらいだと思っている。

   ロビソン副社長は、ITを取り巻く大きな環境変化(BIG SHIFTS)について語った。
   並存していたコンシューマーITと企業ITが融合。
   ITは個々の生産性アップの手法だったがコミュニケーションとコラボレーションの手段。
   ハードとソフトが峻別していたが今日では境界が不明瞭に。
   かっての大きな挑戦はデバイスとネットワーク接続だったが、ユーザーとサービスとの直結が今日の挑戦課題。
   ITはビジネスのサポートであったが、今では、ビジネスの動力源。
   しかし、99%のCEOはITの必要性は認識しているが、実際にITを経営に直結して効果を上げているのは50%を切っていると言う。

   最後に、HPは、かってはハードウエア・ベンダーであったが、現在、HPは、ソフトウエアに関して真剣(serious)だと付け加えて講演を終わった。
   
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