イノベーションによって、古い製品や企業が新しいものに取って代わられるのを、歴史上において、いくらでも見聞きしているし、普通の場合には、後戻りは効かない。
しかし、蒸気機関の発明が即座に帆船を駆逐するようなことはなかった。蒸気機関の出現そのものが帆船の改良を開始させる引き金となって帆船の競争力が持続して、帆船と蒸気汽船との並存時代が続いたのである。
このように、以前には挑戦がなく安閑とあぐらをかいていた旧企業が、深刻な脅威に晒されると、革新的な新しい参入者に負けじとばかり工夫改良を加えて応戦するケースについて、ジョー・ティッド等は「イノベーションの経営学」の中で、「帆船効果」と呼んでいる。
この理論は、J・M・アッターバックが、「イノベーション・ダイナミックス」で展開した理論で、ガス灯会社が電球の発明によって生まれた電灯会社と競争するために、ガスの供給や配送、ガス灯システムの改良等で持続的イノベーションを追及して生産性のアップにこれ努めた例など、多くのイノベーションの発生・転換期のケースを引きながら説明している。
ヴァルスバッハのマントルによるガス灯照明の効率の著しい改善をアッターバックは例証しているが、確立した地位に守られた、豊富な資金を持った既存の業者が、「既存技術のイノベーション」で逆襲してくる。このような新旧入り乱れてのイノベーション競争が、新技術の参入の時期には繰り広げられるのである。
ところが敵も然る者、エジソンは、消費者向け商品については、慣れ親しんでいる外観をそのまま使って、古いシステムを新しいシステムに変換して質を上げて競争することが有効だと知っていたので、既存のガス灯用の溝を使って電線を引き、ガス灯用の燭台に電灯を取り付けて売り出したのである。
その後、ネオンや蛍光灯が生まれて電飾世界は益々豊かになって来ているが、あの暖色系統でほのぼのとした味のある白熱電灯の人気も依然高いし、LEDの発明、特に、中村修二氏の青色ダイオードの発明によって驚異的な展開を見せている。
ところで、新技術が旧技術を駆逐するケースで、真空管からトランジスターへの転換が良く例に引かれるが、真空管工場に膨大な設備投資をして市場を抑えていた電機会社にとっては、おいそれと、技術的にも不安定なトランジスターに転換出来ずにイノベーションに乗れずに苦杯を舐めた。
ソニーの今日あるのは、正にこのトランジスター・イノベーションに命運を賭けた賜物であろうが、典型的な破壊的イノベーション成功のケースであり、その後、ソニーは代表的なイノベーターとしての道を走り続けた。
ところで、今でも最高のサウンドを出せるのは真空管プレーヤーであるようで、旧技術と言えども、持続的イノベーションを続けて行けば、何処までも質の向上は望めると言うことであろうか。
因みに、最近、レコード・プレーやにも人気が出ているようで、無味乾燥なと言わないまでも少し人工的でピュアー過ぎるデジタル音楽を、久しぶりに摩擦音の雑音が入るアナログ音楽に切り替えてみようかと思っている。
アメリカで集めたりした懐かしいレコードが、沢山押入れの中で眠っている。
しかし、蒸気機関の発明が即座に帆船を駆逐するようなことはなかった。蒸気機関の出現そのものが帆船の改良を開始させる引き金となって帆船の競争力が持続して、帆船と蒸気汽船との並存時代が続いたのである。
このように、以前には挑戦がなく安閑とあぐらをかいていた旧企業が、深刻な脅威に晒されると、革新的な新しい参入者に負けじとばかり工夫改良を加えて応戦するケースについて、ジョー・ティッド等は「イノベーションの経営学」の中で、「帆船効果」と呼んでいる。
この理論は、J・M・アッターバックが、「イノベーション・ダイナミックス」で展開した理論で、ガス灯会社が電球の発明によって生まれた電灯会社と競争するために、ガスの供給や配送、ガス灯システムの改良等で持続的イノベーションを追及して生産性のアップにこれ努めた例など、多くのイノベーションの発生・転換期のケースを引きながら説明している。
ヴァルスバッハのマントルによるガス灯照明の効率の著しい改善をアッターバックは例証しているが、確立した地位に守られた、豊富な資金を持った既存の業者が、「既存技術のイノベーション」で逆襲してくる。このような新旧入り乱れてのイノベーション競争が、新技術の参入の時期には繰り広げられるのである。
ところが敵も然る者、エジソンは、消費者向け商品については、慣れ親しんでいる外観をそのまま使って、古いシステムを新しいシステムに変換して質を上げて競争することが有効だと知っていたので、既存のガス灯用の溝を使って電線を引き、ガス灯用の燭台に電灯を取り付けて売り出したのである。
その後、ネオンや蛍光灯が生まれて電飾世界は益々豊かになって来ているが、あの暖色系統でほのぼのとした味のある白熱電灯の人気も依然高いし、LEDの発明、特に、中村修二氏の青色ダイオードの発明によって驚異的な展開を見せている。
ところで、新技術が旧技術を駆逐するケースで、真空管からトランジスターへの転換が良く例に引かれるが、真空管工場に膨大な設備投資をして市場を抑えていた電機会社にとっては、おいそれと、技術的にも不安定なトランジスターに転換出来ずにイノベーションに乗れずに苦杯を舐めた。
ソニーの今日あるのは、正にこのトランジスター・イノベーションに命運を賭けた賜物であろうが、典型的な破壊的イノベーション成功のケースであり、その後、ソニーは代表的なイノベーターとしての道を走り続けた。
ところで、今でも最高のサウンドを出せるのは真空管プレーヤーであるようで、旧技術と言えども、持続的イノベーションを続けて行けば、何処までも質の向上は望めると言うことであろうか。
因みに、最近、レコード・プレーやにも人気が出ているようで、無味乾燥なと言わないまでも少し人工的でピュアー過ぎるデジタル音楽を、久しぶりに摩擦音の雑音が入るアナログ音楽に切り替えてみようかと思っている。
アメリカで集めたりした懐かしいレコードが、沢山押入れの中で眠っている。