熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

不安を煽る「呼び鈴効果」

2007年05月23日 | 経営・ビジネス
   門扉や玄関の呼び鈴を押した後、インターフォンから応答があるかドアが開くまでに、何となく居心地が悪く不安になることがある。
   自分はドアの外にいるので、一切中は見えないし時には音もしない。
   不安になって、もう一度呼び鈴を押そうかどうか迷ったりする。
   問題は、待つことが苦痛なのではなく、どうなるかが分からない状態で待たされていることなのである。
   この状態を、トム・ケリーは「呼び鈴効果」と呼んでいる。

   先日のこのブログで、エレベーター待ちのイライラ解消法について、エレベーター・ホールの待ち客の気を散らすことによって緩和する方法について書いたが、普通何らかの形で待たされて耐えられる時間は3分だと言われている。
   しかし、我々の実生活においては、この様なケースは頻繁に起こっているが、結果がどうなるか、その後の推移がどうなるのか全く分からない宙ぶらりんの状態で放置されると不安とイライラが益々増幅されてくる。

   この状態にあるお客様の不安を解消して、カスタマー・サティスファクションを増進させることが、極めて有効な事業戦略となることは言うまでもない。
   エレベーター待ちの客が比較的待ち時間に耐えられるのは、今何階にエレベーターが止まっていて上がるのか下がるのか分かるからであるが、最近では、宅配便についてもコード番号をパソコンで叩けば即座に現在品物が何処にあるのか何時着くのかが分かるようになっていて便利である。

   私の経験では、色々あるが、一つは、病院の待ち時間が長すぎることだが、これは命がかかっているから仕方がないと諦めても、これも真剣に考えてみれば「呼び鈴効果」を押さえる方法はいくらでもあるので病院の怠慢である。
   だが、一番「呼び鈴効果」で不満があるのは、電話による企業のカスタマー・サービスセンターの対応である。
   一頃、電話を何回架けても通話中で架からなかったことが多かったが、最近では多少良くなったものの、ダイヤル指示が長くて繋がっても延々と待たされる。
   先日も、光電話網のダウンで問題があった翌々日くらいに、落雷での停電でインターネットが不通になったのでNTTに電話を架けたが、「込み合っておりますが、順番にお繋ぎしますので、そのまましばらくお待ちください。」とのレコーダーの指示に従って20分間待ったが、途中で一方的に電話が切られてしまった。
   結局、その後何回も試みて深夜1時頃に電話が繋がって、懇切丁寧な係り嬢の手助けで事なきを得たのであるが、もう少し、どうにかならないものであろうかと思う。
   もっとも、他の民間会社のカスタマーサービスは、週日の勤務時間中だけと言う顧客を全く馬鹿にした制約があるが、NTTは24時間サービスであり比較的丁寧に対応してくれているのでこれはこれで見上げたもだと思っている。

   「呼び鈴効果」以上に最悪なのは、インターネットで商売をしている会社の対応で、ヤフーにしてもアマゾンにしても、eプラスにしてもぴあにしても、あるいは他のポータル会社やIT関連サービス会社にしても、電話では一切受け答えしてくれないし、大体、ホームページを探しても住所や電話番号さえも書いていない所が結構多い。
   とにかく、某会社の係員が、電話は、五月蝿いので一切排除するのだと公言していたのを聞いたことがあるが、クレームすることが出来ず困った時はどうするのか、メール対応では中々埒があかない。e-commarceの重大な盲点であり、商道徳の欠如である。
   
   別なところで、トム・ケリーは、次のように書いている。
   ”世界中の一流ホテルが、どれほどハイテク化されようと、人が人との対話を求める限り、フロント・デスクから人の姿が消えることはあるまい。
   それ故に、カスタマー・サービスを向上させる本当の鍵は、最先端の技術的な情報を使って充分に教育された人材を育成し、その人により良いカスタマー・サービスを届けさせることであろう。”

   E.V.ヒッペルMIT教授が「民主化するイノベーションの時代」で、メーカー主導からユーザー主導のイノベーション、即ち、イノベーションにはユーザーの智恵や改良が大きく組み込まれるようになったことを論述しているが、その意味では、案外、カスタマー・サービスが最も重要な問題意識を持った顧客との接点、最前線であり宝の山であることを気付かない会社が多いと言うことであろう。
   カスタマー・サティスファクションが、企業へのロイヤリティを高め利益向上への重要な戦術だとするならば、尚更そうである。
   
   
コメント
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