詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

安倍の手口(「天皇生前退位特例法」をめぐって)

2017-06-14 09:27:30 | 自民党憲法改正草案を読む
安倍の手口(「天皇生前退位特例法」をめぐって)
               自民党憲法改正草案を読む/番外85(情報の読み方)

 読売新聞2017年06月14日朝刊(西部版・14版)1面に皇太子の記者会見が載っている。デンマーク訪問を前に記者会見した。「天皇陛下の退位を実現する特例法の成立後、初めての会見だった」と読売新聞は「定義」している。会見のなかで、

象徴の務め「全身全霊で」

 退位と決意を語った。(見出しに、そう書いてある。記事でもそう書いてある。)
 私は疑り深い人間である。だから、ここからこんなことを考えた。
 昨年8月8日、天皇はビデオメッセージを発表した。「象徴天皇」について語ってものである。しかし、その「象徴」の部分は問題にされず、「生前退位」だけが問題になった。「生前退位」について天皇はビデオのなかで直接語っていない。直接語ったのは、あくまで「象徴天皇」についてであった。
 「生前退位特例法」では「象徴」のことが書かれてはいるが、焦点はもっぱら別なところに向けられている。いつ退位するか。いつ元号を変更するか。「皇太子」が不在になるが、どうするか。秋篠宮の身分をどうするか云々。
 で、見出しに取っている「象徴天皇」と「全身全霊で(つとめる)」という発言なのだが、これは皇太子が「自発的」に語ったわけではない。
 最初にデンマーク訪問について質問がある。(以下は読売新聞15面から)そこでは

(1)「雅子さまが同行を見送られた理由と現在の体調、今後の外国訪問の見通し」
(2)生前退位特例法成立後、「両陛下が果たされてきた国際親善をどう受け継ぎますか」
(3)「天皇陛下が全身全霊で取り組まれてきた象徴天皇の役割を引き継ぐことを、どのように受け止めますか」

 という具合に質問がされ、皇太子はそれに答えて、「全身全霊で取り組んで参りたいと思います」と言った。
 天皇は「象徴天皇」としてのつとめを果たすとき、ほとんど皇后と一緒に行動している。被災地法も、大戦の激戦地慰霊などは二人で行っている。
 同じことが、皇太子が天皇になったとき、可能か。できない。皇太子は「今後の外国訪問の見通しを、現時点でお話しするのは難しいと思います」と答えている。
 そういう状況で「象徴天皇」のつとめは果たせるか、という問題が出てくる。
 安倍(あるいは、安倍が設置した「有識者会議」)は、この問題に触れないようにしていた。「象徴天皇の務め」には触れないように、「生前退位特例法」をつくってきた。そして、実際にそれが成立してしまうと、今度は「象徴天皇の務め」を問題にする。天皇と皇后の行動について質問する。昨年夏の参院選では「憲法改正」は「アベノミクス」ばかりいいながら、終わったとたんに「憲法改正」と言い始めたのと同じ構造である。ほんとうにやりたいことは言わない。状況が有利になってから言うというのが安倍の手口である。(質問しているのは「記者」だが、きっと安倍の意向を受けて、あるいは安倍の意向を忖度して、誘導するように質問している。)
 天皇の「象徴としての務め」が天皇単独ではなく、皇后と二人で行われるものなら(二人の方が「家族」につながる)、皇太子単独の行動では不完全なのではないか。夫婦で行動できる秋篠宮の方が「象徴天皇」にふさわしいのではないのか。天皇を交代させるためにはどうすればいいか。「生前退位特例法」は「定年制」を盛り込まなかったが、「定年制」を盛り込めば、何年間は皇太子が天皇でありつづける。つまり、「夫婦で象徴天皇の務めを果たす」を理由に、皇太子を天皇の地位からひきずり下ろすということができない。しかし「定年制(年齢制限)」がないなら、いつでも秋篠宮に交代させることができる。いままで国民がなじんできた「象徴天皇」を維持するために、という理由で。
 これでは、皇太子が健康なのに、秋篠宮を天皇にするのは問題があるのではないかという指摘、批判がかならず出てくるだろう。そこで、安倍は悠仁さまを利用するのである。悠仁天皇を誕生させることで、皇太子と秋篠宮の「対立」を乗り越えてしまう。悠仁天皇が年齢的に「若い」、それゆえに「不安定」ということになれば、皇太子でも秋篠宮でもいいが、どちらかを「天皇」に残しておいたまま、悠仁さまを「摂政」にしてしまう。「摂政」の方が、天皇よりも支配しやすいだろう。「助言」という形で積極的に権力が口出ししやすい。
 安倍は、そういうことを狙っていると、私は「生前退位」が籾井NHKがスクープしたときから感じている。今回の「記者」の誘導質問からも、それを感じる。
 会見では、最後に「戦没者慰霊という形での外国訪問もなさっていきたいとお考えでしょうか」という「関連質問」がおこなわれている。これに対して皇太子は「今の私の立場で申し上げることは差し控えたいと思います。ただ、陛下が心からのお気持ちを示されながら慰霊をなさっているお姿は、大変感慨深く拝見しました」と答えている。
 私には、皇太子が天皇になったときは「海外慰霊」はさせないぞ、という予告質問のように聴こえた。「戦争犯罪」を今の天皇の時代で「封印」する、という安倍の意図が露骨に出た質問である。
 安倍はいまの天皇の「印象」(存在感)を早く消し去りたい。国民を支配する独裁者になり、独裁を強力にするために戦争を引き起こしたいと考えている。戦争になれば、国民の自由は激しく抑圧される。いまの天皇の「存在感」を薄れさせる、消し去るために、いまの天皇の「天皇誕生日」はなくしてしまう。これは「生前退位特例法」で決まっている。昭和天皇の誕生日を「みどりの日」として残したのとは大きな違いがある。もちろん「天皇誕生日」を永遠に残しつづけることは不合理だが、国民生活にたいした影響をあたえない「元号」をいつかえるかの方は成立する前に大騒ぎしながら、休日がなくなることについては触れていない。
 安倍がどんなふうに「情報操作」をしているか、どこまでもどこまでも、疑いの目で見ていかないといけない。最近の例では、憲法改正に「自衛隊の追加」「教育の無償化」の2点をアピールしながら、実際に自民党に指示するときは、こっそり「緊急事態条項」を付け加えていた。(このことは、すでに書いた。)こういうことをするのが安倍なのである。
 皇太子の記者会見、記者の質問となると安倍の意向は入りようがないようにみえるかもしれないが、私はそうは考えない。皇太子の記者会見に出席できるような記者ほど、安倍の意向を忖度するし、安倍の意向の従って動くだろうと勘繰る。


#安倍を許さない #憲法改正 #加計学園 #天皇生前退位
 
詩人が読み解く自民党憲法案の大事なポイント 日本国憲法/自民党憲法改正案 全文掲載
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