「嵯峨信之全詩集/時刻表(1975)」を読む(3-37)(2017年06月06日)
73 *(妻の死を嘆くな)
「時刻」は「時刻表」の時刻。タイムスケジュール。いつとは決まっていない。いつやってくるのか、わからない。やってこないと思っていると、突然やってくる。驚き(衝撃)が強すぎて、何が起きたかわからない。
いや、何が起きたかはわかる。
わかるけれど、受け止められない。
それを「聞きとれない」と言いなおしている。
自分の発することばだから「意味」はわかる。しかし「わからない/聞きとれない」ということでしか、その瞬間を生きることができない。
「時刻表」という詩集のタイトルの意味が、この詩を読むことでわかる。感情には「時刻表」がない。
74 旅の小さな仏たち
「合掌」の形を描写している。描写することで、嵯峨自身が「小さな仏」になる。詩は「その群れにまじつてたち去つて行くおまえに」とつづくのだから、妻の描写と読むべきなのかもしれないが、私は妻の冥福を祈る嵯峨と読む。
祈ることで、妻と一体になる嵯峨。離れていても一体。一体になるために、ことばが重なる。ことばを肉体で反復するとき、一体であることが「事実」になる。
73 *(妻の死を嘆くな)
と 自分にいいきかせるのだが
時刻を宿していないその言葉はぼくには少しも聞きとれない
「時刻」は「時刻表」の時刻。タイムスケジュール。いつとは決まっていない。いつやってくるのか、わからない。やってこないと思っていると、突然やってくる。驚き(衝撃)が強すぎて、何が起きたかわからない。
いや、何が起きたかはわかる。
わかるけれど、受け止められない。
それを「聞きとれない」と言いなおしている。
自分の発することばだから「意味」はわかる。しかし「わからない/聞きとれない」ということでしか、その瞬間を生きることができない。
「時刻表」という詩集のタイトルの意味が、この詩を読むことでわかる。感情には「時刻表」がない。
74 旅の小さな仏たち
何も数えなくてもいい
指は五本ずつある
二つの手を合わせて同じものが十本
それを折りまげずに真つすぐにして 向い合わせて
指の腹と腹 掌と掌とをぴつたりくつつけて両手を閉じる
「合掌」の形を描写している。描写することで、嵯峨自身が「小さな仏」になる。詩は「その群れにまじつてたち去つて行くおまえに」とつづくのだから、妻の描写と読むべきなのかもしれないが、私は妻の冥福を祈る嵯峨と読む。
祈ることで、妻と一体になる嵯峨。離れていても一体。一体になるために、ことばが重なる。ことばを肉体で反復するとき、一体であることが「事実」になる。
嵯峨信之全詩集 | |
クリエーター情報なし | |
思潮社 |