詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

安倍の手口(憲法改正をめぐって)

2017-06-07 09:21:13 | 自民党憲法改正草案を読む
安倍の手口(憲法改正をめぐって)
               自民党憲法改正草案を読む/番外82(情報の読み方)

 読売新聞2017年06月07日朝刊(西部版・14版)の1面に、びっくり仰天する「大ニュース」が載っている。

 自民改憲案 4項目軸/自衛隊根拠や合区解消/年内めど

 安倍が05月03日の読売新聞の「首相インタビュー」で語っていたのは「20年施行目標」と「9条に自衛隊明記」「教育無償化」。項目としては2項目である。これが、突然、増えている。

 検討項目は、首相から指示のあった①憲法9条1、2項を維持して自衛隊の根拠を追加②大学などの高等教育を含む教育無償化③緊急事態条項--の3項目に加え、党内の要望を踏まえて参院選の合区解消に取り組むことにした。

 4項目目の「合区解消」は党内の要望から出てきたもので、それを検討するのはいいのだが、

③緊急事態条項

 これは、何だ。
 抜き打ち的に追加されている。
 「自民党憲法改正草案」(2012年)の「目玉」項目である。「改憲草案」が話題になるたびに国会でも取り上げられてきた項目である。これが、こっそりと追加されている。
 読売新聞は、これを見出しに取っていない。
 気づかなかったのか、気づかせないようにしているのか。

 自民党が「何項目」検討しようが、それは自民党の自由だが、この「こっそり」「抜き打ち的」な追加は、国民の目をごまかすものである。
 加計学園の問題につながる。最初は存在しなかった「広域的に」「1校のみ」をこっそり追加することで、基準にあう大学が加計学園のみになった。議論をすすめておいて、最終段階でそっと結論を「誘導」する。議論をはじめているので、もう、引き返せない。「結論」が「追加項目」によって決まってしまう。「広域的に」「1校のみ」という条件を追加したのは、審議している委員ではないだろう。政権だろう。

 今回の場合、「改憲のテーマ」が「第9条と自衛隊の関係」「教育無償化」であるように語り続けている。「改憲テーマ」が国民のあいだに広がると、そのあとでこっそりと「緊急事態条項」を付け加える。
 05月03日のインタビューでは語られていない「緊急事態条項」。これこそが、安倍が「20年施行」を目標にしている一番のテーマである。これを追加するように「指示」した。国民(読売新聞)には語らず、こっそりと自民党に指示した。
 国民向けに語ることと、自民党内に指示することが違っている。国民が納得しそうなことだけを国民に語り、激しい議論が起きそうなことは語らない。秘密裏にすすめる。これが安倍の手口である。
 もし05月03日のインタビューで、安倍が「緊急事態条項」を語っていたら(読売新聞がそれについて書いていたら)、その後の国会でのテーマは「緊急事態条項」に集中していただろう。国会で話題にならないように、安倍は語らなかったのだ。テーマを隠していたのだ。
 「共謀罪」も「緊急事態条項」と関連づけて、さらに厳しく追及されているはずである。「共謀罪」が成立するというメドをつけておいて、それから「緊急時第条項」を出してきたのである。
 「共謀罪」は何とか強行採決できそうだ。「憲法改正」の議論も「教育無償化」を掲げることで、国民の納得を得やすい形でスタートさせることができた。
 そうやっておいて、「緊急事態条項」を追加する。いちばんの「結論」へと「議論」を誘導する。きっと自民党では「首相の指示があった。だから、緊急事態条項を憲法改正に追加する」ということになるだろう。そして、そのとき「追加」が安倍の指示だけによるものではなく、議員の要望を汲んだものでもあることを「証明」するために「合区解消」も、あえて追加するのである。

 ニュースの「続報」というのは、なかなか読まないものである。

 自民改憲案 4項目軸/自衛隊根拠や合区解消/年内めど

 この見出しでは、あれ、安倍は「2項目」を掲げていなかったか。どうして4項目なのだろうという疑問がかすかに頭をかすめるだけである。「自衛隊根拠」は安倍の2項目にあったが、「合区解消」はなかった。追加されたのは「合区解消」と似通った、憲法の本質とは違う何か(軽い?何か)なのだろうという印象を持ってしまう。
 こういうことこそ、「印象操作」というのである。
 いちばん大事な部分、いちばん問題になる部分は隠してしまう。ひっそりと議論をすすめてしまう。「結論」を出してしまう。

 この安倍の手口を、しっかりと認識すべきだと思う。
詩人が読み解く自民党憲法案の大事なポイント 日本国憲法/自民党憲法改正案 全文掲載
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#安倍をゆるさない #憲法改正 #緊急事態条項
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「嵯峨信之全詩集/時刻表(1975)」を読む(3-38)

2017-06-07 09:00:00 | 『嵯峨信之全詩集』を読む
「嵯峨信之全詩集/時刻表(1975)」を読む(3-38)(2017年06月07日)

75 *(遠いひかりになつているおまえの母)

ぼくはぼくの手に墓を建てる
おまえの体温がいつまでものこつているこの掌の上に

 「手」が「掌」に変わる。「手」が「掌」に収斂していく。「収斂する」は「結晶する」かもしれない。「のこつている」は収斂することで見つけ出した「結晶」である。
 嵯峨は「墓を建てる」と書いているのだが、何かをつくるというよりは、見つけ出すという感じがする。妻の「体温」を見つけ出す。「のこつている」は見つけ出すであり、見つけ出すは「おぼえている」である。「掌」がおぼえているものを、見つけ出す。

76 *(イマージュから出てきて)

ぼくを通りぬけて遠い街角をまがつてゆく殿さま行列
それを見ている蛙もいるだろう

 「殿さま」から「とのさま蛙」へと動いていく。このナンセンスを嵯峨は、「意味」へと変えてしまう。

いつものように大地に両手をついて
その全身をこゆるぎもさせずにじつと支えて

 ここに「抒情(悲しみ)」があるのだが、ナンセンスはナンセンスのままの方が、悲しみを深くするかもしれない。

 「考えかた(方)」の「方」というのは、一種のパターンだが、そのパターンは私の知らないものである。私の肉体はそういうパターンを経験してきていない。だから、ついていけない。
 最初から「ついていけない」のなら気にならないが、書き出しはぐいと引き込まれる。私の「肉体」が体験してきたもの、「肉体」がどこかでおぼえているものを刺戟するのだが、ことばが進むにつれて、そのことばといっしょに動く「肉体」とはどういうものなのか、つかみどころがなくなる。つかめなくなる。
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