詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

安倍の戦略、韓国の戦略

2017-09-23 09:42:41 | 自民党憲法改正草案を読む
安倍の戦略、韓国の戦略
            自民党憲法改正草案を読む/番外117(情報の読み方)


 読売新聞(2017年09月22日、西部版・14版)3面。北朝鮮への対応が分かれている。
 見出しだけ抜き出すと、

米、北孤立化へ強硬/経済閉鎖/情勢緊迫化 ためらわず

 北朝鮮のミサイル開発によって国際情勢が緊迫化している。このため経済封鎖することをアメリカはためらわない。経済的に孤立化させることで、北朝鮮の動きを封じようというのである。
 いまは「強硬」姿勢だが、これが「強行」手段へと変化していくのは、ほとんど時間の問題のようにも見える。

 もう一本の記事には

日米韓連携 隙間風も/韓国の人道支援めぐり

 という見出し。韓国が8000万ドルの陣頭支援を打ち出した。国際機関を通じて乳幼児らへの医薬品の資金提供である。これに対して、安倍は不満をもっている。

首相は「いまは対話の局面ではない。圧力を損ないかねない行動は裂けるべきだ」と文氏(大統領)に慎重な対応を求めた。関係者によると、トランプ氏(大統領)は発言こそ控えたが、韓国人の人道支援決定に不満げな様子だった。

 この記事の中で(見出しの中で)私が注目したのは「孤立化」ということばである。「孤立」したときの、人間の行動は、どうなるかわからない。
 韓国はそのことがわかっているから、「人道的支援」で「孤立化」を防ごうとしている。どこかで「つながり」を残しておこうとしている。これは賢明な方法であると思う。
 交渉で危険を回避するというのが政治である。どうやって交渉パイプ(人的パイプ)を残しておくかは重要な問題である。
 安倍の頭はもう完全に「戦争モード」である。北朝鮮を壊滅させれば日本は安全になると思っている。いまがチャンスだと思っている。トランプをけしかけて、北朝鮮を壊滅させようとしている。いったん戦争が始まれば、たとえ金正恩が倒れたとしても、問題はどんどん拡大する。
 アメリカが先制攻撃をして、北朝鮮の核基地を「壊滅」させたと仮定しよう。もう、北朝鮮の「核の脅威」は消えたと仮定しよう。
 では、そのあと何が続いて起こるのか。
 すぐに「民主主義的な政権」が誕生し、北朝鮮は日本にとって(アメリカにとって)理想的な国家になるのか。
 そんなことはない。北朝鮮国内が混乱する。多くの「難民」が生まれる。彼らは北朝鮮であたらしい国家を自立することに力を注ぐというよりも、北朝鮮脱出をはかるだろう。韓国へ移動する。そして日本へも押し寄せるだろう。
 そうした人を受け入れる用意があるのか。
 安倍は、絶対に受け入れない。「敵国」の人間である、という理由で拒否するだろう。「難民」にだけ「人道的立場」で接するということは考えられない。
 日本国内においても、安倍とは考え方の違う人間を「こんな人たち」と呼ぶのが安倍である。
 「難民」を「孤立化」させてしまうだろう。それは「難民」がどんどん増えることに拍車をかける。
 目先のことだけではなく、政治家なのだから、「将来」のことを考えて世界をリードしなければならない。

 で。

 ここから少し話は「国際情勢」から離れるのだが。
 朝鮮人学校への「教育費無償化」の打ち切り。これは、日本国内でおきた「人道支援」の打ち切りであり、差別である。ひとは誰でも同じように教育を受ける権利を持っている。
 朝鮮人学校では、必ずしも日本にとって都合のいい教育だけが行われているわけではない。北朝鮮の政権を支持する教育も行われている、ということが「無償化」打ち切りのひとつの要素のように語られているが。
 うーむ。
 ここから安倍の打ち出している「教育無償化」の問題を考えると、どうなるか。
 たとえば日本の大学、日本人の教授が教え、日本人の学生しかないゼミ。そこで、安倍政権の問題点を究明するということが研究されたとするとどうなるのか。さらには、北朝鮮と連携して武力革命をおこすということを研究したとしたら、どうなるのか。それが実際の行動を伴わず、単に「理論」として研究したとしても、「無償化」は維持されるだろうか。打ち切られるだろう。
 これは、安倍にとって都合の悪いものを含む教育には経済的支援をしない、ということである。
 教育の自由を否定し、政権に都合のいい人間だけを育てる、ということである。
 
 反対意見の人間もいる、ということを大前提にしないといけない。
 人間はそれぞれ個別の存在であり、個を否定してはいけない。個人を孤立させずに、連携しなければならないという視点をいつももたないといけない。

 朝鮮人学校への教育無償化の打ち切りに対する在校生らの抗議、法廷闘争は日本では報じられているが、北朝鮮ではどうだろう。日本で報じられている以上に「大問題」としてとらえられているかもしれない。安倍政権は朝鮮人学校で学ぶ子供たちの権利を奪っている、激しく糾弾されているかもしれない。そんな差別的な政策をする安倍は許せない、という思いが渦巻いているかもしれない。人種差別は、世界への冒涜であるといわれているかもしれない。だから日本を攻撃してもかまわないと考える人がいるかもしれない。なんといっても、こどもは未来への宝、それを傷つけることは許されないと考える人がいても不思議ではない。
 差別は見えにくい。差別している人には、差別が特に見えにくい。もし、ある人が嫌いだとする。その場合は、差別するという行為が、もっと見えにくくなる。「当然」のこととして実行されたりする。
 身近な、「武器」をつかわない「弾圧」というものがある。そういうものを見つめ、何ができるかを探していかなければならない。できることを拡大していかないといけない。

 朝鮮学校への教育支援をつづける。そうすると、そこから育った生徒は、日本に対して感謝の気持ちをもつかもしれない。(もちろん、持たない人間もいるかもしれない。)もし誰かが感謝の気持ちを持つとしたら、そのひとは日本と北朝鮮との「人的パイプ」になりうる。小さなパイプ、細いパイプかもしれない。しかし、どこかで力を発揮するかもしれない。
 「人道」の力は強い。
 ひとが最終的にひかれるのは、「人柄」である。ひととひとが、無防備になってふれあうときの「あたたかさ」である。
 どんなときでも「人道支援」はとざしてはならない。人を「孤立」させてはならない。
 韓国の戦略は、私には正しいと思える。
 隣国の状況、その国民の状況は、私たち日本人以上に詳しいだろう。分断されていても、家族がいる。親族がいる。何らかの交流があり、日本からはわからないことがわかっているはずだ。
 遠いアメリカの「恐怖」をあおり、戦争をけしかけるのではなく、まず近くにいるひとの声を聞き、何が起きているか、何が必要なのか、それを探ることが大切だろう。
 韓国の声をもっと真剣に聞かないといけない。
 「日米韓に隙間風」ではなく、大きな亀裂が入っていると私は感じる。そして、その亀裂は安倍によって生み出されている。安倍がトランプをあおることで亀裂が生まれ、その亀裂は、韓国を「孤立」させることになるかもしれない。
 韓国は日本によって占領され、支配された時代がある。そしてアメリカの戦略によって(アメリカだけではないが)、南北に分断された歴史を持つ。北朝鮮を「壊滅」させることは、同胞を壊滅させることである。そんなことに、韓国の国民が簡単に「同意」するはずがない。
 もう一度書いておく。
 韓国こそが、この問題の鍵である。韓国の声をもっと真剣に聞く必要がある。韓国には、日本やアメリかが持たない「血のつながり(民族)」のパイプがある。それを生かす必要がある。そこに、きっと「糸口」がある。


 
#安倍を許さない #憲法改正 #天皇生前退位
 
詩人が読み解く自民党憲法案の大事なポイント 日本国憲法/自民党憲法改正案 全文掲載
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