監督 セオドア・メルフィ 出演 タラジ・P・ヘンソン、オクタビア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー
まだ人種差別がきびしかったケネディの時代、NASAで活躍した3人のアフリカ系女性の描いている。「実話」らしい。原題は「Hidden Figures(隠れた人物、隠された人物?)」というから、アメリカでも知られていない話なのだろう。
で。
ストーリーはおもしろいが、映画としては、どうか。主役の3人の女性が、あまりにも「しっかり」している。立派すぎて、共感する、という感じになれない。
白人の高校に入学する(受講する?)ことになる女性が、判事を説得するシーンなど、エンジニア(技術者)というよりも、弁護士やなにかのよう。「文学者」というか、「ことば」の人という感じ。もちろん、きちんと伏線で「口達者」なところは描かれているのだが。
困難の中で、苦悩し、ゆらぐというシーンがなくて、少し味気ない。
クライマックスは、ロケットの打ち上げ寸前の「トラブル」かなあ。コンピューターの計算が、きのうと、きょうとで違う。どうする? 宇宙飛行士が「タラジ・P ・ヘンソンの計算なら信じる」と言い、いったん首になったタラジ・P・ヘンソンが呼び戻され、検算しなおす。その「あの女性の計算なら信じる」という人間に対する信頼、それにこたえようとする熱意かなあ。タラジ・P・ヘンソンの、このときの演技派「地味」なのだけれど、引き込まれたなあ。
女性エンジニアを目指す女性に対し、ユダヤ人の技術者が語りかけるところもよかった。彼女に説得される判事もよかった。タラジ・P・ヘンソンに地位(?)を奪われる上司も、かっこよくないところが、おもしろかった。人間は、やはり「揺れる」方がおもしろい。
それと比較してはいけないのかもしれないが。
ケビン・コスナーは、揺れない。宇宙計画の責任者だけあって、信念がしっかりしているといえばそれまでなのだが、揺らがないところがおもしろくないねえ。あ、腹が出てきたなあ、年取ったなあ、というどうでもいいことを見てしまうのだった。アラ探しといえばアラ探し。そういうところに目が行くのは、映画として退屈ということだね。
「映画的」なクライマックスになるはずの、帰還のシーンも、なんだか平凡。NASAのスタッフが、祈るように無線の応答を待っているなんてなあ。そこへゆくと、「アポロ13」はおもしろかった。計算をするのに、計算尺まで出したり、宇宙船の周囲に何がつかえるか、日常にあるもの(そして宇宙船でつかっているもの)を総点検するところなんか、宇宙がぐいと「生活」に近づいてきたからね。
ということで。(どういうことで?)
「意味」はわかりますが、「肉体」は動かされないという映画でした。
(ユナイテッドシネマ・キャナルシティ13、2017年09月30日)
*
「映画館に行こう」にご参加下さい。
映画館で見た映画(いま映画館で見ることのできる映画)に限定したレビューのサイトです。
https://www.facebook.com/groups/1512173462358822/
まだ人種差別がきびしかったケネディの時代、NASAで活躍した3人のアフリカ系女性の描いている。「実話」らしい。原題は「Hidden Figures(隠れた人物、隠された人物?)」というから、アメリカでも知られていない話なのだろう。
で。
ストーリーはおもしろいが、映画としては、どうか。主役の3人の女性が、あまりにも「しっかり」している。立派すぎて、共感する、という感じになれない。
白人の高校に入学する(受講する?)ことになる女性が、判事を説得するシーンなど、エンジニア(技術者)というよりも、弁護士やなにかのよう。「文学者」というか、「ことば」の人という感じ。もちろん、きちんと伏線で「口達者」なところは描かれているのだが。
困難の中で、苦悩し、ゆらぐというシーンがなくて、少し味気ない。
クライマックスは、ロケットの打ち上げ寸前の「トラブル」かなあ。コンピューターの計算が、きのうと、きょうとで違う。どうする? 宇宙飛行士が「タラジ・P ・ヘンソンの計算なら信じる」と言い、いったん首になったタラジ・P・ヘンソンが呼び戻され、検算しなおす。その「あの女性の計算なら信じる」という人間に対する信頼、それにこたえようとする熱意かなあ。タラジ・P・ヘンソンの、このときの演技派「地味」なのだけれど、引き込まれたなあ。
女性エンジニアを目指す女性に対し、ユダヤ人の技術者が語りかけるところもよかった。彼女に説得される判事もよかった。タラジ・P・ヘンソンに地位(?)を奪われる上司も、かっこよくないところが、おもしろかった。人間は、やはり「揺れる」方がおもしろい。
それと比較してはいけないのかもしれないが。
ケビン・コスナーは、揺れない。宇宙計画の責任者だけあって、信念がしっかりしているといえばそれまでなのだが、揺らがないところがおもしろくないねえ。あ、腹が出てきたなあ、年取ったなあ、というどうでもいいことを見てしまうのだった。アラ探しといえばアラ探し。そういうところに目が行くのは、映画として退屈ということだね。
「映画的」なクライマックスになるはずの、帰還のシーンも、なんだか平凡。NASAのスタッフが、祈るように無線の応答を待っているなんてなあ。そこへゆくと、「アポロ13」はおもしろかった。計算をするのに、計算尺まで出したり、宇宙船の周囲に何がつかえるか、日常にあるもの(そして宇宙船でつかっているもの)を総点検するところなんか、宇宙がぐいと「生活」に近づいてきたからね。
ということで。(どういうことで?)
「意味」はわかりますが、「肉体」は動かされないという映画でした。
(ユナイテッドシネマ・キャナルシティ13、2017年09月30日)
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