詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

23 二つの歌(嵯峨信之を読む)

2018-06-29 12:07:26 | 嵯峨信之/動詞
23 二つの歌

誰が通つた跡だろう
火で燃えつきて
空だけが白く残つていて

 「愛とどこの川にながしても」と始まるこの作品には「ながす/ながれる」「通る」「すぎる」「行く」という動詞が繰り返される。その結果「つく」(ながれつく/燃えつく)ということにもなる。ふたつの「つく」は意味は違うが。
 この連には、そうした動きの別な姿が書かれている。
 「残る」という動詞が出てくる。「跡」という名詞と一緒に出てくる。「跡」が「残る」。
 それは必ずしも動詞が直接的に動いた場にだけ「残る」のではない。
 誰かが通った跡は地上に、火の燃えた跡として残るだけではない。その名残のようなものが空にも反映している。この「跡が残る」は「跡がつく」ともいえる。「跡がついている」。
 ある動きの反映が、別のものにも「残る」。ときには「残す」という働きかけもあるだろう。それが愛というものだ。





*

評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』を発行しました。190ページ。
谷川俊太郎の『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2000円(送料、別途250円)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。


「詩はどこにあるか」4月の詩の批評を一冊にまとめました。186ページ
詩はどこにあるか4月号注文


オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。



以下の本もオンデマンドで発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977




問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com


嵯峨信之全詩集
クリエーター情報なし
思潮社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする