詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

4 (火から火を渡るような生涯だつた)(嵯峨信之を読む)

2018-06-04 10:49:45 | 嵯峨信之/動詞
4 (火から火を渡るような生涯だつた)

火から火を渡るような生涯だつた
かれはついに気が狂つた

 もし彼が気が狂わなかったら、どうなっていただろうか。彼を見ている「私」の方が狂ったかもしれない。
 悲惨と同時に安堵を感じてしまう。
 
 「火から火を渡る」とは、どういう状況だろうか。「火」から過激なものを連想するが、具体的な状況がわからない。「火」自体が「現実」ではなく「イメージ」だからだろう。
 そして、この「イメージ」を生きるということが「狂う」ことの引き金なのかもしない。「現実」を超えるもの、「現実」を逸脱するものが「イメージ」ということになる。

鳥籠の中に
かれは一羽の文鳥を残した
小さなとまり木をいそがしく行きかいながら文鳥は今日も生きている

 文鳥にとって「とまり木」は現実か、とまり木を行き交いながら、文鳥は「森」を思っているか。
 こう連想するのは、私であって、文鳥ではない。
 このとき、文鳥そのものが「現実」ではなく「イメージ」である。
 閉じこめられ、狭い世界を森と勘違いして生きている鳥。イメージの中心(意味)は、そして、鳥ではなく「鳥籠」になる。

コメント
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