谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(2)
(気配が)
気配が
ある
姿なく
いる気配
夢ではない
すぐ傍らに
いる
歓びが
思い出す
悲しみ
時を
まとった
懐かしいひとの
気配
*
「まとう」が「まとった」と「連体形」でつかわれている。「思い出す」も「連体形」である。何かとつながっている、ふれている感じが「気配」だろうか。「歓び」「悲しみ」は入れ換えることもできる。
谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(2)
(気配が)
気配が
ある
姿なく
いる気配
夢ではない
すぐ傍らに
いる
歓びが
思い出す
悲しみ
時を
まとった
懐かしいひとの
気配
*
「まとう」が「まとった」と「連体形」でつかわれている。「思い出す」も「連体形」である。何かとつながっている、ふれている感じが「気配」だろうか。「歓び」「悲しみ」は入れ換えることもできる。
Miguel Caturla Martinez「Viaje de amor a Lisboa」
フェイスブックで知り合ったMiguel Caturla Martinezから詩集「Viaje de amor a Lisboa」が届いた。200ページを超す詩集だが、そのなかから一篇。
ROSABEL
Rosa bella carmesi,
luz de luna y jazmin,
amapolas,
sol y nieve,
primavera de un mes de abril
Ojos grandes como alcobas
que enmudencen con el mar,
rimas lentas en las olas;
lentas gotas de perfume de azahar.
Tu dulzura es armonía,
tu calor es flor de miel;
tu piel divina estampa
de nostalgia de un querer.
Mi almas es la estancia
que te espera merecer;
mi pluma solo el arma
para acercarme a tu ser.
詩の翻訳は難しい。しかし、スペイン語をスペイン語のまま理解できるほどスペイン語を知らないので、日本語にしてみる。
ロサベル
美しい深紅のバラ
月影とジャスミン
ポピー
太陽と雪
春のはじめの四月
大きな目はまるで寝室のよう
海に抱かれ、
波にあわせてゆっくりと韻を踏む
オレンジの花の香りの滴がゆっくりとしたたる
あなたの甘さは調和
あなたの暖かさは蜂蜜の花
あなたの肌に記された神聖な刻印
郷愁という名の愛
私の魂はあなたから遠くにいる
あなたに値することを願いながら
私のたったひとつの武器は詩
あなたの存在に近づくために
「ROSABEL」は「rosa(バラ)」と「bella(美しい)」を組み合わせたことばだろうか。「バラのように美しい(美しく)」という願いがこもった名前と思って読んだ。
最後の連の「mi pluma」が難しい。私の持っている辞書には「羽、ペン、文筆家」というような訳が並んでいる。昔、ペンといえば羽ペン、それをつかうのは文筆家ということだろうか。だから「ことば」と訳せばいいのかもしれない。あなたは、遠い。あなたに近づくために「ことば」を捧げる。それはあなたに向かって飛んでゆく私の心。
私は「ことば」といったん書いて、それから「詩」と書き直した。「詩」の方が「こころ(感情/気持ち)」というニュアンスを込められると思ったからだ。
ミゲールが詩人だからである。あなたに捧げるのが詩だからである。詩は、翼を持ったことばだからである。