谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(14)
(これを)
これを
好み
それを
嫌う
ヒトは選ぶ
物を事を
人を
自分を
唯一の
太陽に灼かれ
己れに迷い
無数の
因果の網に
かかって
*
「ヒト」と「人」、「自分」と「己れ」はどう違うか。「因果」ということばに誘われて因数分解(?)をしてみたくなる。(ヒト×己れ)÷(人×自分)=0のとき、詩を顕現させる感情と肉体の値を求めよ。
*
(誰もが私なのに)
誰もが
私
なのに君が
いる
私の
言葉を
人々とともに
生きて
君の
言葉に
私はいるか?
意味とともに
無意味を
喜んで
*
自分と他者の問題は難しい。私は「君」は「私の必然」と考える。「必然問題」が「君」だ。「君」をどれだけ語れるかという問いが「絶対的無」として「私」に帰ってくる。「誰も」では「絶望的虚無」が残る。
*
(本を閉じる)
本を閉じる
緑が
目に沁みる
風が吹いて
揺れる葉が
今ここを
告げるから
人がすることを
今日も
する
必要は
不要
自足する
宇宙
*
「する」。それは「自足」と、どう関係しているか。「必要は/不要」を「不要は/必要」と言い換えるとき、「不要」は「無意味」に変わり、「無意味は/意味」ということばのなかで「自足/する」だろう。