(秋 落ち葉の)
秋
落ち葉の
葉脈を辿って
迷う
世界は
きりのない
言葉を秘めて
無言
理は偽るが
美は
真のみ
闇に守られて
眠る
夜
*
「闇」は「偽る」ことはない、ということか。見えるのは、自分の内部にあるものだけ。でも、「美」や「真」だけ見つめていては退屈。だから「眠る」のか。夢で「迷う」のは「言葉」か「無言」か。
*
(昨日は嘘)
昨日は
嘘
明日は
嘘
今の
今
私は私
無数の
因
一個の
果
熟してまた
未知の
種子
*
「また」がいいなあ。「種子」に帰る、の「帰る」という動詞が隠されたまま予告されている。「未知」にだけ、「嘘」は含まれていない。「明日」にはすでに「明日」という「知(嘘)」が含まれている。
*
(本にひしめく)
本に
ひしめく
語たち
語は
語を喚び
語は
語と通じ
意味を
孕み
時に歌う
文字を
忘れ
電子の
声で
*
「文字を/忘れ」を読んだ瞬間、声は?と思ったら、その「声」が出てきた。でも「電子」の「声」。あっ、電子に「声」があるのか。私は知らなかった。「通じ」「孕む」という動詞に「ことばの肉体」を感じた。