詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

Estoy Loco por España(番外篇348)Obra, Joaquín Llorens

2023-05-01 20:40:35 | estoy loco por espana

Obra, Joaquín Llorens

 Un hombre mira fijamente la puesta de sol. En un promontorio, en medio de una llanura, o en la calle principal de una gran ciudad sin coches que pasen. O en un lugar que nadie conoce, en el corazón de una persona. Cuando imaginé "allí", nació este poema.

 Las palabras "estoy allí" me atormentaban, sustituyendo constantemente al hecho de "no estoy allí". El hecho de no estar allí despierta el deseo de estar allí y me hace mentir. Estoy ahí. Siempre quiero escribir "estoy allí". Allí" es donde estás tú. Cuando cambio de sujeto, mi mentira se convierte en angustia y tristeza. Cuando escribo "estás allí", "mi conciencia está allí, pero en realidad no estoy allí, estoy aquí". Pero, ¿significa algo el sujeto? Al menos, no significa nada para mí. Lo importante no es el sujeto "tú" o "yo". Tampoco el verbo "estar" o "no estar". Lo que importa es "allí". El "allí" puede existir en cualquier momento. ¿Dónde está "ahí"? Lo recuerdo. No puedo olvidar. Pero no quieres hablar de "allí". Estás tratando de decir que no había "allí". Eso ya lo sé. Porque "tú" es una metáfora de "yo".

  一人の男が、落ちていく夕陽を見つめている。岬の上か、平原の真ん中か、車の通らない大都会の大通りか。あるいは、だれも知らない場所、人のこころの中か。「そこ」を想像したとき、こんな詩が生まれた。

 「私はそこにいる」ということばは、「私はそこにいない」という事実と常に入れ代わりながら私を苦しめた。「私はそこにいない」という事実は「私はそこにいたい」という欲望をめざめさせ、私に嘘をつかせるのだ。「私はそこにいる」と。私はいつも「そこにいる」と書きたい。「そこ」とは君のいる場所だ。主語を入れ替えるとき、私の嘘は、苦悩し、悲しみに変わる。「君はそこにいる」とき、「私の意識はそこにあるが、現実の私はそこにはいなくて、ここにいる」。しかし、主語は何か意味を持つだろうか。少なくとも、私には何の意味もない。重要なのは主語「君」「私」ではない。「いる」「いない」という動詞でもない。重要なのは「そこ」なのだ。いつでも、「そこ」は存在してしまう。「そこ」は、どこか。私は覚えている。忘れることができない。しかし、君は「そこ」について語ろうとはしない。「そこ」はなかった、と言おうとしている。私は、それを知っている。なぜなら、「君」とは「私」の比喩だからである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

杉本真維子『皆神山』

2023-05-01 16:58:00 | 詩集

 

杉本真維子『皆神山』(思潮社、2023年04月19日発行)

 「現代詩手帖」に連載されているとき同じ詩なのかどうか、雑誌が手元にないので確認できないが、詩集で読むととてもおもしろい。雑誌に連載されているときは、たぶん、他人のことばが邪魔するのだと思う。杉本真維子のことばは、他者から独立して、いや、孤立しているときの方が、はっきりと響いてくる。
 巻頭の「しじみ」という作品。

しじみ、と思ったら、
自分の目が映っていた、
具のないみそしるを一口のんで、
両目を啜る、あじは、おれの刑期にふさわしく、
ざりり、と音までしやがった、
という
それから、波立たぬ椀ひとつ、
箸置にもどす一膳、
さっぱりとなにもない、
壁越しに、小便の音だけがしみている

 「ざりり、と音までしやがった、」がてともいい。「具のないみそしる」なのだから、もちろん「しじみ」は入っていないし、当然、そこには「砂」もない。しかし、そのない砂をかむ。そのとき「ざりり」。この音は、完璧な孤独(沈黙)でしか聞こえない音だろう。そして、聞く人がいなくても、それを言わずにはいられない孤独がここにある。「しやがった」という口語の力が強い。声に出さずにはいられない、悲痛さがある。
 「という」と静かな音を挟んで「波立たぬ」という、これもまた、とても静かな音。「波立たぬ椀」にあるのは「視覚」だが、「ざりり」のあとでは「無音の波」の音が聞こえる。「箸置にもどす」の「もどす」の膨らみのある音もいい。
 音はさらに「小便の音」へとつながっていくが、これも、悲しくていい。

 このあと、「目」から「桜」、「小便」から「排泄」、さらに「便器」へと一連の世界は広げられていくのだが、一連目だけでも完璧な詩だと思う。
 で、思うのだが。
 この詩集、「現代詩手帖」に連載した詩だけで一冊にした方がよくはなかったか。ページが少なくなるが、その方が「孤立感」が出る。
 さらに私の好みを言えば、何度か登場する「わたし」は、ことばの上では、不在の方がいいと思う。
 とくに、私は「桜坂」の

わたしは、
あたらしい障子の影で、

 の「わたし」に非常に疑問を感じた。「ぼけ」の「わたしに未来はないと」の「わたし」にもつまずいたが、そこでつまずいたからこそ、「桜坂」で決定的に、邪魔だなあと感じたのかもしれない。
 「現代詩手帖」に連載されていたときは、この「わたし」が、ある種の「防音壁」のようになっていたのかもしれないが、詩集になったら、そこにある「わたし」という雑音が気になって仕方がない。

 

**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする