△イ・ミョンバク新大統領
(ハンギョレ新聞)
2月25日、ハンナラ党のイ・ミョンバク氏が韓国第17代大統領に
就任した。
どこの国の政治であれ基本的に「進歩」派陣営を応援している
「ヲタク」としては、今回、韓国で保守派の大統領が誕生したことに
特に大きな感慨があるわけではない。
そういう「ヲタク」が興味深く目を通したのが、紙面には25日付けで
掲載された京郷新聞の社説だった。
大手新聞社などの庇護にもかかわらず、すでに就任前から大幅な
支持率低下に見舞われているという新大統領の「現状と課題」が、
かなり正確に、そして辛らつに指摘されている。
辛口の忠告を盛った祝辞と言ったところか。
「ヲタク」も「ヲタク」なりに、新大統領就任を祝う意味で、その社説を
今日の翻訳練習の課題に取り上げてみた。
ところで、ブログ記事の表題と京郷新聞の記事に使われている
「1% 프렌들리/1%フレンドリー」という言葉は、イ・ミョンバク政権が
標榜する「비즈니스 프렌들리/ビジネス・フレンドリー」(親企業)や
「프레스 프렌들리/プレス・フレンドリー」(親メディア)という外来語
表現をもじった一種の新造語で、「親1%」、「1%に優しい」くらいを
意味する。
では、その「1%」とは何なのか?
その答えは、直接、社説の中から読み取っていただくことにする。
なお、例によって一度の投稿で済ませるため原文の引用は省いた。
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■[사설] 이명박 정부, ‘1% 프렌들리’에서 벗어나라
[社説] イ・ミョンバク政府、「1%フレンドリー」を脱せよ
(京郷新聞 2月24日)
いわゆる87年憲法の成立に伴い大統領直接選挙制が復活して
以来、韓国民は、自らの手で直接選出した4人の大統領と
それぞれの大統領が率いた4つの政府を経験してきた。今日は、
87年以来5人目となるイ・ミョンバク大統領が就任式を迎えると
同時に、イ・ミョンバク政府が発足する意義深い日だ。ハンナラ党の
党内予備選と大統領選挙で、多くの困難と逆境を乗り越え、つい
には大韓民国最高の統治者となったイ・ミョンバク第17代大統領の
就任を心から祝うとともに、新大統領の5年間の在任期間に韓国が
大きく発展することを祈りたい。
振り返ってみれば、イ大統領の誕生は、国民の大きな期待を一身に
集め発足したノ・ムヒョン前政権に対する国民の失望と幻滅の所産で
あったと言える。青天の霹靂の如く韓国を襲った通貨危機により
国家破産の危機を経験した韓国民は、生活の質が少しでも向上する
ことを願いながら、「反則と特権の撤廃」を叫んだノ政府を選択した。
しかし、国民を待ち受けていたものは不動産価格の高騰であり、
中産階級や庶民、自営業者の没落であり、さらには非正規雇用の
拡大であった。こうした非情とも言える現実に対する不満が「政権
審判論」として台頭し、疾風怒濤と化した国民の不満はイ大統領が
抱える数え切れないほど多くの疑惑やモラル上の問題を覆い隠して
くれた。
イ大統領就任とイ政権発足の意義は、そうした国民の不満を
いかに解消して行くかにあると言える。しかし、大統領選当選以来、
今日までの2ヶ月と1週間の間にイ大統領が見せてきた姿は、
国民の期待からはほど遠いものだった。次期政権準備委員会の
活動期間中、イ次期政権は、ノ・ムヒョン政権と同じくらい、あるいは
それ以上の幻滅と失望を国民に抱かせた。大学総長出身の
イ・ギョンスク準備委委員長は、「オレンジ」と発音して何の支障も
ない言葉を、あえて「オーリンジ」と改めるべきだとの自説を国民に
押し付け、「国民的なお笑いタレント」の座に収まった。また、軍事
独裁時代を思い起こさせるような「マスコミ関係者の思想分析」など、
マスコミ監視活動を堂々と再開しようとし国民から猛反発をくらった。
さらに最近では、イ大統領自らが、放火で焼失した南大門の復元の
ために「国民募金」を提案しては国民の反発を買った。全斗煥政権
時代、「北傀(北朝鮮)の金剛山ダムに対抗するため『平和のダム』を
建設する」と言って大々的に繰り広げられた「国民募金」に、多くの
国民が現在もなお苦々しい記憶を持ち続けていることを彼は
知らなかったのだ。
しかし、こうした事例の数々はイ・ミョンバク政府の組閣人事や
大統領府首席人事に比べれば、それこそ「愛嬌」のレベルだった。
イ大統領は、自分の母校であるコリョ(高麗)大や自分の出身地で
あるヨンナム(嶺南=慶尚道)、さらには自分が長老を務める
ソウル市江南区のソマン教会など、極めて私的な人脈に偏した
人事を強行し、「コソヨン」(コリョ大、ソマン教会、ヨンナム)なる
流行語まで生み出した。特に組閣では、全国津々浦々に多くの
土地や住宅を所有し、法律で農民以外の所有が制限されている
農地まで財テクの手段として購入し所有しているようなカンナム
(江南=ソウルの高級住宅街)の不動産プジャ(富豪)たちを多数
入閣させ、「カンプジャ」内閣なる流行語まで生まれた。
問題はそれだけではない。ノ・ムヒョン政権時代、論文の重複掲載
問題でキム・ビョンジュン教育相(副総理兼任)を辞任に追い込み、
「論文盗作行為の当事者は公職のみならず教職からも永久追放
されねばならない」と気炎を上げたのがハンナラ党だったはずだ。
しかし、イ大統領は、キム元教育相よりはるかに悪質な論文盗作を
行っていた大学教授らを保健福祉省長官や大統領府社会政策
首席秘書官に任命した。また、イ大統領は、就任以前、自らの
古巣とも言える財閥企業に対しては「いつでも電話をかけてほしい」
と極めて深い親近感を表明した反面、韓国労総とともに韓国の
労働界をリードしている民主労総に対しては、委員長が警察捜査に
非協力的だったとの理由で予定されていた懇談会まで一方的に
取り消した。
我々がイ大統領のこうした姿から感じ取るものは、韓国社会の
最上位に位置する極少数の階層にだけ優しい、いわゆる「1%
フレンドリー」な政治姿勢だ。もちろん、イ大統領が財閥企業の
CEO出身で、数百億ウォン(数十億円)の不動産を所有する
大富豪であることは、すでに全国民の知るところだ。しかし、今後、
彼が代弁しなければならないのは、単に財閥や不動産富豪たちの
声だけではない。いつ解雇されるかわからない不安定な立場に
戦々恐々としている非正規職労働者や、江南の土地購入はおろか
1年分前払いの家賃が払えず一部屋の住居さえ借りることができず
にいる多くの庶民、そして、88万ウォン(約11万円)の月給を得る
ため必死に働く「88万ウォン世代」の若者たち・・・。新大統領が
代弁すべき声は社会のあちこちから上がっている。我々は
イ大統領が大統領当選以来、今日まで見せてきた姿は、明らかに
国民の期待を裏切るものだったと考えている。今日、晴れて第17代
大統領に正式に就任したイ大統領が、今後、いかに国民の負託に
応えようとするのか、大いに注目したい。
(終わり)
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