熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

情報価値の供創による国際競争力強化に向けて・・・情報大航海プロジェクト

2008年03月17日 | 政治・経済・社会
   日経が、経済産業省が推進している「情報大航海プロジェクト・コンソーシャム」の後援で、「情報価値の供創による国際競争力強化に向けて」と言うタイトルでシンポジウムを開いた。
   情報大航海プロジェクトは、現在のパソコンによるホームページの中だけのテキスト中心の情報検索ではない、個人の生活、ビジネスなどのあらゆる局面で、必要な時に必要な情報を解析できる情報基盤(プラットフォーム)を実現することによって、将来の情報経済社会におけるイノベーション創出環境を確立し、日本産業の国際協力の向上を目指す目的で立ち上げられたもので、既に、産官学がチームを編成して、サービス及び基礎の基盤技術の開発を行っている。
   
   ITを通じてイノベーション創出環境を作り出して日本産業の国際競争力を強化しようと言う国策プロジェクトで、色々な側面から技術の開発を行おうとしているが、最も力を入れているのは、グーグルの向こうを張った和製検索・分析エンジンの創設のような気がする。
   その所為かどうかは知らないが、中国で70%のシェアを占める世界第3位の検索エンジンであるBaidu.comのロビン・リー総裁&CEOを講師に呼んで「IT新潮流とビジネスの創出」と言うタイトルで講演を依頼していた。

   前半は、経産省の吉崎正弘審議官や本プロジェクト推進の中核である喜連川優東大教授などの講演やプロジェクト推進者達のプロジェクト報告などがあったが、私にとって面白かったのは、後半の「日本のIT産業の国際競争力強化への道」と言うタイトルのパネルディスカッションで、特に、住信基礎研究所伊藤洋一主席研究院やファーストサーチ&トランスファーの徳末哲一社長などの見解であった。
   冒頭、経産省八尋俊英情報処理新興課長が日本のIT行政の課題等についての説明に使った表・各国の一人当たりGDP(日本20位)に言及して、何故日本がこれ程までに落ちぶれたのか、伊藤氏が、日本のITの問題点を指摘した。

   日本のITには、ウリモノがない。
   ITや金融主体に高度成長をしている国は、アメリカを除いて総て小国で、日本のマーケットが中途半端に大きい所に問題があると指摘した。
   これは、他の小国では、必然的に海外志向、すなわち、グローバル展開を図らなければ成長発展が有り得ないのに比べて、日本にはそこそこ生きて行ける豊かな国内市場があると言う意味であろう。
   しかし、実際には、寡占的な過当競争で、例えば、携帯電話など、世界が一歩づつ前進しているのに、2歩前進しているのが日本で、井戸の中の競争で無意味だと言う。

   これと関連して、日本企業は仲間を作ることが下手で、技術さえ良ければ売れると言う認識では、デファクト・スタンダード世界標準を取れない。
   ビデオのβとVHS、ブルーレイとHD DVDなどの戦いがその典型で、仲間作りに失敗した陣営が駆逐されている。
   また、グローバル展開についても、地方の格差拡大を見れば良く分かり、アジアとの連携を深めている九州が伸び、北海道が落ちるのは必然だと言う。
   京都オリジンの優良企業が活性化しているのも、売上の大半が海外と言うグローバル展開で、東京を相手にする必要が全くないと言うところに秘密があると言うことでもあろう。
   
   IT展開の遅れについては、役員がパソコンを使えなくてシステムが有効に機能しないので、IT投資はコストとして消えて行くケースが多い。
   それに、分散型が全く分からなくてIBMのメインフレームの認識しかない経営感覚で経営しているトップが多く、IT関連業務を若い者にまかせっきりだが、根本的にフレームワーク転換をしない限り救いがないと言う。

   もの造り日本にとって唯一の救いは、最近のハードはソフト組み込み比率が高くなってきたので、日本企業もソフトの開発を無視できなくなった事だと言うのだが、悲しい話である。

   伊藤氏の指摘は、世界の経済社会環境が、知識情報化産業社会に移行し、特に、1990年代から21世紀にかけて、IT革命とグローバリゼーションによって大きくパラダイム・シフトしたにも拘らず、日本企業は勿論、日本の国自体も、その潮流にキャッチアップ出来ずに取り残されてしまったと言うことだが、本当に、日本国民にこの認識があるのかどうか。
   そこそこ豊かで安定した生活が出来ていて不自由がなければ、目くじらを立ててパラダイム・シフトなどと難しいことを言って苦労して変えることもなかろうと言う意識。
   口では大変だと騒ぐが、体制維持派が大半で、殆ど改革の意思がないと言うのが現状でなければ、世界経済のみならず世界中が危機的状態にあるにも拘らず、今のような福田内閣の統治能力の欠如と民主党のカウンターベイリング・パワーが働かないと言った政局を傍観して手を拱いている筈がない思う。
コメント
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