熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

死に追い詰められたシルバーバックのマウンテン・ゴリラ

2008年03月21日 | 地球温暖化・環境問題
   英国の高級紙「インディペンデント」の電子版を読んでいて、ショッキングな写真(口絵)を見つけた。
   殺害された巨大なリーダー・ゴリラが、タンカに縛り付けられて住民達に運ばれて行く怪獣映画の一シーンのような写真である。
   手の腕だけでも、大人一人分の大きさがあろうかと思える巨大なマウンテン・ゴリラがアフリカにいて、それらが、人間の金儲けの為に何頭も殺されているのである。何とも悲しくて慙愧に耐えない。
   何故、絶滅寸前のゴリラが殺されるのか。ゴリラの生息地である森林を伐採して木炭を製造する為に、守護神であるべき筈のコンゴのヴィルンガ公立公園のディレクターHonore Mashagiroが、部下に命令して殺させたと言うのである。

   コンゴ、ウガンダ、ルワンダ3国の国境にあるヴィルンガの死火山の火口の傾斜地に、ユネスコが管理し捕獲を禁止されている700匹のマウンテン・ゴリラの内半数が生息しているが、この地で、国立公園の管理役人が率先してゴリラを殺害していることが発覚し、当事者が逮捕されたと言うのだから、コンゴ政府も見過ごすわけにも行かず、世界のワイルドライフや環境保護団体が顔を曇らせている。

   原住民の密猟者なら貴重な肉を目的とするのだが、そのまま殺害されて放置されており、第一に、一般人が殆ど近づけないところであり、正に公園の管理人たちの仕業であり、Mashagiroは、違法な炭焼オファーでも容疑を受けている。
   違法な木炭業者が、ゴリラの生息地である木材を切り倒して工業用燃料として年間30億円($30M)を儲けているようだが、昨年、コンゴ政府が、この取締りを強化したので、環境保護団体は、これが更に事態を悪化させたと考えている。
   Mashagiroは、ゴリラ殺害があった直後に、コンゴ自然保護協会の上級官吏官から、このヴィルンガのディレクターに任命され、カフズ・ビーガ国立公園のゴリラ頭数担当官の任についており、有名な環境保護者が、彼は稀に見る逸材の一人でで逮捕にはショックを受けていると言っているのだから、いい加減なものである。

   この問題は、環境問題のみならず、色々な貴重な問題点を提起している。
   絶滅品種の生物保護と言う問題にしても、これらの殆どの原因は、先進国の自分たち勝手なエゴによる成長志向の経済社会発展に起因している。
   貴重な動植物の最後の楽園は、後進国の原野や森林・山林など未開発の地域に追いやられてしまっているが、グローバル経済に巻き込まれた貧しい住民にとっては、否応なく、生きて行くためには、この経済法則に従って自分たちの身近な自然を犠牲にする以外に方策はない。
   僅か30億円の資金を稼ぐ為に、貴重な自然が破壊され、絶滅寸前の自分たちの仲間である霊長類のゴリラが殺害されるのなどは、恐らく、原住民の価値感と先進国の保護団体の考え方には雲泥の差がある筈である。
   この50年の間に、成長成長で、貴重な自然環境のみならず、取り返しのつかない貴重な遺産・財産を数限りなく失ってきた日本の歴史を振り返ってみれば、そのことが良く分かる。

   地球温暖化等にかんする環境問題は、バイオエタノールへの転換で食料価格を高騰させる等で貧しい後進国の生活を益々窮地に立たせており、石油や原材料など天然資源の価格高騰が、持たざる国を直撃し、更に、ドル安による世界経済秩序の大転換などの大変動が、後進国経済の存続自体を脅かし続けている。
   恐らく、マウンテン・ゴリラを追い詰めてヴィルンガで生産された木炭は、グローバル市場へと言うのではなく、アフリカの小さな工場でのエネルギー資源として使われるのであろう。
   環境問題にしても、世界経済社会の発展の問題にしても、グローバル・システムに否応なく取り込まれて翻弄され続けている、このようなアフリカなどの後進国での深刻な問題を無視・軽視してはならないと思っている。

   
コメント
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