熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

中国産業のコストアップが米国市場を直撃

2008年03月28日 | 政治・経済・社会
   中国での生産コストの上昇がアメリカ市場に異変を来たしている、そんな、記事を、ワシントン・ポストで読んだ。
   ”Rising Costs in China Seep Into U.S. Market ー Importers Pay More or Cancel Orders”と言う記事で、日本の場合と似通っているが、米国はドル安の影響をもろに受けていて、日本にはそれほど円・元交換レートの影響がない点、多少ニュアンスが違っている。

   ドル安、中国国内のインフレ、労働賃金の上昇、新労働法の制定、輸出補助金の停止、原材料費の高騰、品質安全強化、悪天候等々が重なって、中国製品のアメリカへの輸入価格が、どんどん上がってしまって、アメリカは大変だと言うのである。
   この煽りを受けて中国からの輸入品の価格が、アメリカでは、徐々に上がっていて、2007年度の指数は2.4%のアップであったが、専門家は、消費者物価が5~10%上がるであろうと見ている。

   中国に進出したアメリカの製造業も、中国から生産コストの安いカンボジアなどの他のアジア諸国に生産基地を移し始めた。
   また、中国の低価格で商品を調達して小売市場を押さえていたウォルマートなどのメガストアも、利点を享受出来なくなってきた。
   中国の生産者とアメリカの輸入業者の間で、激しい価格競争が行われているが、中国側かアメリカ側か両当事者がコストアップを吸収できなければ、当然、アメリカの消費者が、そのつけを払わざるを得ない。
   これまでは、原油価格の高騰が物価を押し上げてきたが、今や、中国などの新興国からの輸入品がその原因となり始めた。

   ウォルマート、ターゲット、Toys R Us等に商品を卸している中国の玩具会社が、最近、輸出価格を50%引き上げた。顧客のほぼ半数は、その価格を受け入れたが、残りの半数は契約を解除したので、売上が半減したが、大きくするつもりもないのでどうにかそのまま事業は継続している。
   メイ社主によると、ドル安が12%、政府輸出補助金の減が2%、労賃アップが20%、原材料費のコスト増が10%で、価格を上げざるを得ず、それでも、同業の半分は倒産してしまったと言う。

   このような中国製品の輸出価格の高騰は、多くの商品で起こっており、少なくとも、ドル安の12%分は、価格アップで回収しないと利益が出なくなる。
   更に、輸出業者にとって問題なのは、輸入業者が商品を受け取ってからでないと支払わないので、輸出完了までの2~3ヶ月の間に、どんどんドルが安くなって利益を減らすことである。元高とドル安のダブルパンチである。

   結局、日本の場合もそうだが、中国での生産コスト安を売り物にして利益を弾き出していたユニクロ効果が、中国でのコスト上昇で、徐々に消えつつあると言うことで、ビジネス・モデルを変えざるを得なくなって来たと言うことである。
   よく考えてみれば、このようなユニクロ効果が有効に機能したのは、ほんの10年程度であり、今後、グローバル経済をターゲットに業務を展開する場合には、相当長期的なしっかりした展望とビジョンを持って経営戦略を打たない限り成功は難しいと言うことであろう。
   例えば、コスト増の中国から他のアジア諸国へ生産工場を移しても、短期的には良いかも知れないが、近い将来同じような問題に遭遇することになる筈である。

   ところで、面白いのは、この記事を、ウソか本当か分からないが、中国社会科学アカデミーのMei Xinyu国際貿易調査員の
   「中国製品のコスト増は、理論的には、消費者価格には大きなインパクトはない。
   本当の問題は、アメリカの輸入業者や卸売業者の巨大なマークアップである。
   商品の販売価格は、中国での生産コストの何十倍、いや、何百倍もしているので、中国製品の輸出価格が二倍になったからと言って、大勢に影響がない。
   中国のコスト増は、生産者や消費者ではなく、アメリカの輸入業者や卸売業者が吸収すべきで、世界貿易の利得の配分と言う意味からもこれがフェアである。」
   と言うコメントで、何の注釈も加えずに締め括っていることである。
   確かに、日本の場合でも、輸入品の原価が非常に安いにも拘らず、販売価格が異常に高くなっているケースが多いのにビックリすることがある。
   
(追記)悪質なピンク・サイトからのコメントが頻繁に入って困っていますので、勝手ながら、コメントとトラックバックは、保留にさせて頂き、これらを排除してから掲載させて頂いております。
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